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【スロー・リーディング(遅読)とスピード・リーディング(速読)】 Vol.1

第1回 スロー・リーディング(遅読)とは何か?


あなたは本を読むのが速いですか?
それとも遅いですか?

私は遅いです!
別に、じっくり読もうとしているから遅いのではなく、少し読んで、筆者は何を言いたいのかを考え、その都度立ち止まるからです。

さらに、1冊の本を集中して一気に読むということをしていません、と言いますか、出来ません。

必ず、同時並行的に10数冊の本を読んでいます。
しかも、できるだけジャンルの異なる本を選んで読んでいます。

ちなみに、2014年12月19日現在読んでいる
本のタイトルは、下記のとおりです。

『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』
 橘玲 幻冬舎 2010年9月30日 第1刷発行

『アメリカは日本経済の復活を知っている』
 浜田宏一 講談社 2013年1月8日 第1刷発行
 
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
 東野圭吾 角川書店 2012年3月30日 初版発行

『民の見えざる手』
 大前研一 小学館 2010年7月29日 初版第1刷発行

『できそこないの男たち』
 福岡伸一 光文社 2008年10月20日 初版第1刷発行

『音楽の聴き方』
 岡田暁生 中央公論社 2009年6月25日 初版

『現代語訳 学問のすすめ』
 福沢諭吉 齋藤孝=訳 2009年2月10日 第1刷発行

『脳研究の最前線 ㊤』
 理化学研究所 脳科学総合研究センター 講談社
 2007年10月20日 第1刷発行
 
『ものづくり道』
 西堀榮三郎 ワック 2004年7月10日 初版発行

『マキアヴェッリ語録』
 塩野七生 新潮社 1992年11月25日 発行

『大学の理系教科書は1ページ25万円で売れる!?』
 新川智英 経済界 2010年3月10日 初版第1刷発行

『三島由紀夫』
 ジェニフェール・ルシュール 鈴木雅生 訳 祥伝社
 2012年11月10日 初版第1刷発行

『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』
 戸部良一ほか全6名 中央公論新社
 1991年8月10日 初版発行



なぜ、こんなに多くの本(13冊)を同時並行的に
読んでいるのか、疑問に思われたことでしょう。

その理由は、単に1冊の本を継続して読めないだけです。

言い訳になりますが、読んでいるうちに、突然、
化学反応を起こし、ひらめくことがあります。
気取って言えば、セレンディピティ*に近いものです。

(* 何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を指す言葉である。
何かを発見したという「現象」ではなく、何かを発見する「能力」を指す。
平たく言えば、ふとした偶然をきっかけにひらめきを得、幸運をつかみ取る能力のことである。
セレンディピティ Wikipedia から)

これだけジャンルがバラバラでも、異口同音に書かれていること、つまり、表現は異なるけれども言っている内容が同じことを、発見することがしばしばあります。

そうした「楽しさ」を味わうこともできます。

スロー・リーディング(遅読)は、今まで、ほとんど扱われてきませんでしたが、本を読む際に、とても大切なことを教えてくれる読書法ですので、3回に分けてお伝えします。


スロー・リーディング(遅読)とは何か?


私は速読が出来ません。
無理して速読しようとも思いません。
過去、フォトリーディングなど、速読のための方法が書かれた本を何冊も読んだことがあります。

ですが、結局、以前と変わりませんでした。

まあ仕方がない、と諦めました。
速く読むことが目的ではない、と自分を無理やり説得しました(苦笑)。

もちろん、本の「内容が面白く」、「読みやすい」文章や展開がすばやい場合には、自然に読む速度が加速するという感覚は味わっています。

ですが、それは本来の速読とは異なることでしょう。

負け惜しみかもしれませんが、仕事でどうしても資料を読んでおかないと、明日の会議についていけないという場合や、明日の1時限目の授業で、教師に指された時、答えられないと恥をかくと感じる場合には、「読まざるを得ません」。

そうした時間の制約に縛られた状況下では、「速読」するしかありません。

しかし、仕事や、学校の勉強を離れ、個人の時間を使って読書を楽しむ場合には、「速読」に拘ることは全くない、と考えています。

情報収集のためだけに読む読書と、じっくり文章を味わう読書がある、と考えるからです。

食事と読書を同レベルで考えることには、異論があるかもしれませんが、少しお時間をください。

早食いと、ゆったりと食事するのでは、大きな違いがあります。

時間に追われて、「飲み込む」ようにして食べて、果たして、料理を味わえるでしょうか?

一方、家族や、親しい友人、恋人と一緒にいる時に、ゆったりとした時間の経過の中で、食事を楽しむことができる、と考えたことはありませんか?

たとえ、1人の場合でも、料理をじっくり味わって食べるということはあるでしょう。

読書でも同じことが言えるのではないか、と長い間考え続けてきました。

ある日、古書店で「その本」が目に止まりました。
その本をパラパラめくって拾い読みしてみたら、月並みな言葉ですが、目から鱗が落ちました。

同時に、自分の読書法は間違ってはいない、と自信を深めました。

その本とは、

『本の読み方 スロー・リーディングの実践』
平野啓一郎 PHP研究所 2006年9月1日
第1版第1刷

です。

PHP新書415


(現在ではこちらの文庫となっています。)

目次をご覧ください。

目次

序   本はどう読めばいいのか?

第1部 量から質への転換を
    スロー・リーディング 基礎編

第2部 魅力的な「誤読」のすすめ
    スロー・リーディング テクニック編

第3部 古今のテクストを読む
    スロー・リーディング 実践編



著者をご紹介しましょう。


平野啓一郎さんは、1975年生まれで、京都大学
在学中に雑誌「新潮」に投稿した『日蝕』(1998年)が、翌年、芥川賞を受賞しました。

平野さんがnoteで作品を投稿されていることはご存じでしょう。


平野さんは、ご自身の読書法について、「序」で、
次のように書いています。


実は私も、長年、「速読」に憧れていた1人だった。

仕事柄、読まねばならない本も多く、書斎の傍らに積み上げられたそれらを見る度に、「速く読めれば楽なんだけどなあ……」と考えることもしばしば
だった。実際のところ、私の本を読むペースはかなり遅い。

何度か意を決して、速読法なるものにチャレンジしたこともあるが、一度として成功したことはない。じっくり読まなければ、どうしても内容がアタマ
に入らないのだ。

『本の読み方 スロー・リーディングの実践』P.5 平野啓一郎 PHP新書           
                
                     

平野さんが書いていることは、私の場合とほとんど同じです(おこがましいですが)。

この文章を読んだ時、思わず笑みがこぼれました。

平野さんは作家仲間の中で、自分だけが遅読なのかと思い、作家仲間に聞いてみたそうです。

その結果が、次の文章です。


「オレだけがこんなに読むのが遅いのだろうか?」

――そう思い悩んだ(?)私は、ある日、恐る恐る、知り合いの作家たちにたずねてみたのだが、意外にも、「実は自分も読むのは遅い」と言う人が
ほとんど
だった。高橋源一郎さんなどは、今でも本を読むときには、きちんと机について、赤線を引きながら読むとのことである。

現代作家の中で、恐らくは最も勤勉な読書家である大江健三郎さんも、決して速読をすすめたりせず、むしろ「読みなおすこと(リリーディング)」を説いている。数年前に刊行された小説『憂い顔の童子』では、登場人物の口を借りて、ノースロップ・フライによるバルトの次のような一節の引用が記されている。

「ロラン・バルトは、すべての真面目な読者は『読みなおすこと(リリーディング)』だといっている。

これはかならずしも二度目に読むことを意味するのではない。そうではなくて、構造の全体を視野に入れて読むことだ。言葉の迷路をさまようことを、
方向を持った探求に転じるのだ」

『本の読み方 スロー・リーディングの実践』PP.5-6 平野啓一郎 PHP新書         


「速読コンプレックス」から開放されることである


さらに続けて、平野さんは、こう結論づけています。


読書を楽しむ秘訣は、何よりも、「速読コンプレックス」から開放されることである! 本を速く読まなければならない理由は何もない。

速く読もうと思えば、速く読めるような内容の薄い本へと自然と手が伸びがちである。

その反対に、ゆっくり読むことを心がけていれば、時間をかけるにふさわしい、手応えのある本を好むようになるだろう。

『本の読み方 スロー・リーディングの実践』P.7 平野啓一郎 PHP新書           


スピード・リーディング(速読)


速読の本としては、ポール・シーリイの

『あなたもいままでの10倍速く本が読める』

が有名ですね。


フォレスト出版




速読やフォトリーディングについて書かれた本には、必ずと言ってよいほど紹介される本です。


私も読みました。
ですが、私は速読ができませんでした。
私には速読力がなかったのでしょう。

「速読」や「フォトリーディング」に関する本は、多数あります。
ポール・シーリイの本以外にも、何冊か読みましたが、私には効果が認められませんでした。

ですが、あなたには絶大な効果が認められるかもしれません。



さて、話を戻しまして、「スロー・リーディングとは何か」について、平野さんが述べていることをご紹介しましょう。

スローリーディング


「スロー・リーディング」
とは、1冊の本にできるだけ時間をかけ、ゆっくりと読むことである。鑑賞の手間を惜しまず、その手間にこそ、読書の楽しみを見出す。そうした本の読み方だと、ひとまずは了解してもらいたい。

スロー・リーディングをする読者を、私たちは、「スロー・リーダー」と呼ぶことにしよう。

1冊の本を、価値あるものにするかどうかは、読み方次第である。


『本の読み方 スロー・リーディングの実践』P.20 平野啓一郎 PHP新書          


書き手はみんな、自分の本をスロー・リーディングしてもらう前提で書いている


極めつけは、次の言葉です。作家として読者に期待していることを吐露しています。


書き手はみんな、自分の本をスロー・リーディングしてもらう前提で書いている
のである。

『本の読み方 スロー・リーディングの実践』P.20 平野啓一郎 PHP新書          
  


J-WAVEのPRIME FACTORに生出演

平野啓一郎さんと言えば、2014年12月13日(土)
22:00~23:59に放送された、J-WAVEのPRIME FACTORという番組に生出演しました。

ブログを書きながら、PC にインストールしたRadiko を通じて聴きました。

PRIME FACTORについては、今までに何度も書いていますが、ショーンKさんがナビゲーターをしているビジネス情報番組です。
出演者は多士済々で、楽しみにしている番組の一つです。

ぜひ、一度聴いてみてください。
J-WAVEは81.3 MHz です。

PRIME FACTORに出演した時に、平野さんがショーンKさんとの対談で述べたことの一部をTeraPad(テキストエディタ)で書き残したものです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

平野啓一郎さんがJ-WAVEに出演しました。

2014年12月13日(土)
ショーンKさんがナビゲーターをしている
PRIME FACTOR
に生出演しました。

22:00~23:59までの放送です。
23時頃から出演しました。
23:36頃終了

とても興味深い話で、面白かったです。

番組で語った内容の概要をお伝えします。
「分人」という言葉が特に印象に残りました。

今年を紐解くキーワードを3つ挙げていました。
2014年の人の心

「疲労」 「真相」 「生命力」

「疲労」

妄想の中に生きている。

みんな疲れているのではないか。
僕自身も疲れている!

キャッチコピー「ページをめくる手が止まらない」
ということを現場の書店で見て、何か違うのでは
ないか、と感じた。

文明自体が自己発展していく勢いに、人間が流されているような気がする。

「ホーキング博士が、人工知能の開発をやめた方がいい」
と発言した。コンピューターの発展に人間は疲れている。

自然とか文化のテンポは、文明のテンポとは異なる。

LOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability)
とは、明らかに異なる。

それぞれの時間感覚は異なるはずなのに、みんな同じ時間感覚を共有しようとしている。

振り回されている。例えば、メールの返信。
メールが発明される前までは、こんなに頻繁に返信することはなかった!

仕事をする上で、メールでやり取りしているので、
直接会ったことがない人もいる。


「真相」

佐村河内守 STAP細胞

ショーンKさんはこう指摘しました。

「視覚化とか自浄作用が働いた」。

そういうことはあると思う。

写メ

ヘイトスピーチ

表向きはこうだけれど、本当は違う。

いい悪いはあるが、程度がある。

そこまで言ってはいけないのではないかという、程度の感覚がひどいのではないか。

緩やかな規律が必要。

SNSで粗野な言葉をぶつけられることがある。


「生命力」

ボードレールは、 
「生命力が社会の中で移動している」
と述べている。

何かが滅びる後に、新しい生命が生まれる。

個人から分人へ

自分の中には複数の自分がいる

多様性があるはずなのに、認めない、認めたくない。

分人の構成比率の中で、何が大きいのか。
生命力が移動していく。

自分の中の生命力と、社会の生命力が移動している。

世の中の生命力と、分人の生命力が一致しない。
そこの間に歪みができ、ストレスを生む。

自分の分人と、他の人の分人との関係性がどう
なるか?

分人の比率が重要。

分人の生命力の進む方向をコントロールできる
ことが大切。

『生命力の行方――変わりゆく世界と分人主義 』
講談社

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平野さんが言う、「分人」というのは、「一個人の中には
いくつもの顔があり、場面や相手によって使い分けているが、“本当の自分”や“偽物の自分”という区別はなくどれも“本当の自分”とする考え方」*ということです。
つまり、自分の中に存在する多様性のことです。
そして、分人の構成比率を何で高めるか、が重要と指摘しています。

* 『bestseller's interview 第63回 平野 啓一郎さん』
新刊JP から

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2014年12月20日 補足

上記のお二人のやりとりがYouTubeにアップされて
いましたので、ご紹介します。

PRIME FACTOR【20141213】2014年 人の心、社会の空気



オリジナルウェブサイト
PRIME FACTOR【20141213】2014年 人の心、社会の空気

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平野さんの
『本の読み方 スロー・リーディングの実践』
は、私を窮状(?)から救い上げてくれる本でした(微笑)。


第2回は、「質の読書」「量の読書」ほかについてお伝えします。


お楽しみに!


この元記事は8年前にAmebaブログ『藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ』で書きました(2014-12-19 17:47:31)。「スローリーディング(遅読)」というカテゴリーに入っています。
その記事を再編集しました。

平野啓一郎さんが、noteに『マチネの終わりに』を全文掲載されていたことはご存じだと思います。


ぜひ、こちらもご覧ください。




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