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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 Vol.58

大人の流儀

 伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

 帯には「あなたのこころの奥にある勇気と覚悟に出会える。『本物の大人』になりたいあなたへ、」(『続・大人の流儀』)と書かれています。

 ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。



「星~被災地から見たこの国」から

伊集院 静の言葉 1 (172)

 孤立した子供たちにわずかの水しか与えられずいる大人、視察に来た内閣府副大臣がいねむりをしていた写真、命懸けの作業に携わって死んだ原発の作業員、その死を当然のごとく話す学者とキャスター、記者の他人事のごとき質問、支援に必要な金の算出に予算案の駆け引きを持ち出す与党議員、まだ孤立して飢えと寒さに震えている子供がいるのに厚化粧して被災地のレポートをする女子アナ。     

大人の流儀 2 伊集院 静                               



「星~被災地から見たこの国」から

伊集院 静の言葉 2 (173)

 地震発生から四日目、ようやく電気が通じてテレビを点けた時、東日本の、被災した人々が共通して思ったこと。それは、
「この人たちは私たちを見捨てているのか」
 という驚きと失望ではなかったのか。
 テレビのキャスターの一人が「あの波が押し寄せる光景はまるで映画を見ているようです、、、、、、、、、、、、、、」と口にした。これほどの人々を呑み込んだ津波を、まるで映画を見ているような、とは、ナンナノダ?
 君にとってこの惨事は劇場の椅子にふんぞり返って眺めるものなのか。言葉の間違いというより、人としての倫理の欠落、無人格以外のなにものでもなかろう。日本人はここまで落ち果てたか。そう憤る私自身も被災地の只中にいたというだけの立場であり、自宅から数キロ先に収容できぬ死体が無数、、に転がっているという報道にもなすすべもない無力な立場にいたのだ。  

大人の流儀 2 伊集院 静                               


「星~被災地から見たこの国」から

伊集院 静の言葉 3 (174)

 震災二日目の夜、自分にできることはなるたけ正確に、何が起きたのかを書き残すことなのではと、ローソクの灯りの下でラジオを通して刻々と入る被災状況を記しはじめた。あのいまわしい数時間、ラジオが「津波が来ます。高い所に一刻も早く避難して下さい。逃げて下さい。早く逃げて!」と叫ぶ声からはじまった被災地の姿を、家族と近所の人の生命を守らねばと右往左往しながら記録するしかやりようがなかった。
 あの夜、仰ぎ見た星のあざやかさは何だったのか。  

大人の流儀 2 伊集院 静                               


⭐ 出典元

『大人の流儀 2』(書籍の表紙は「続・大人の流儀」)
2011年12月12日第1刷発行
講談社



✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。

🔷 「テレビのキャスターの一人が『あの波が押し寄せる光景はまるで映画を見ているようです、、、、、、、、、、、、、、』と口にした。これほどの人々を呑み込んだ津波を、まるで映画を見ているような、とは、ナンナノダ?」


今ここで告白しますが、「まるで映画のワンシーンを見ているようだ」とブログに書いたことがあります。

それは、2001年9月11日に起きた米国同時多発テロ事件で、テロリストに乗っ取られた旅客機が世界貿易センタービルに突入した映像がテレビで放映されました。そのシーンについてです。

多数の尊い命が奪われたのにも拘わらず、ブログに投稿してしまったのです。

伊集院氏が東日本大震災の際に発生した津波の報道に対して、憤ったのは当然のことであり、私も時も場所も状況も異なるとは言え、同じことをしてしまったことに今更ながら悔いています。

迂闊に口にしたり、SNSなどに投稿することは厳に慎まなければならないと感じました。



🔶 東日本大震災から11年:被災地と復興の現状


⭐ 出典元: 公営財団法人ニッポンドットコム 東日本大震災から11年:被災地と復興の現状 2022.03.09



🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。


<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。

91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。

作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。



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⭐ 私のマガジン (2022.08.22現在)





















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