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メルマガ 大前研一 ニュースの視点 有益な情報を得て、発想に結びつける No.009 KON486(2013/10/04)~ KON489(2013/10/25)





メルマガ 大前研一 ニュースの視点 有益な情報を得て、発想に結びつける No.009 KON486(2013/10/04)~ KON489(2013/10/25)


はじめに

私は30年ほど前から大前研一氏の著作を読み始め、読み続けています。
大前氏の著作や動画等から非常に有益な情報を得るだけでなく、考え方・発想法などを学んでいます。

大前氏のメルマガ購読を10年ほど前に開始し、今日も続けています。
ただし、すべての記事にきちんと目を通したわけではありません。

そこで、メルマガ購読の登録を開始した当時に遡って、読み直すことにしました。

そうすることで書籍との関連性によってより深く理解できたり、10年にわたる大前氏の考え方の変遷を感じ取ることができると考えました。

大前氏が頭脳明晰であることは異論がないと思います。
他にも頭が良い人たちは数多いますが、その人たちと大前氏が異なる点があります。

それは、大前氏は自分の考え方や発言に間違いがあった場合には、すぐに認め、訂正することです。

他の頭が良いと言われる人たちは、プライドが高く、自分の間違いを認めたがらないだけではなく、訂正しようともしません。


🔶お知らせ

大前氏は私より年齢が一回り上です。大前氏は今年80歳になられました。
事情ははっきりしませんが、2023年6月29日に、BBT(ビジネス・ブレークスルー)の代表取締役を退任されました。

ビジネス・ブレークスルー大学の学長職に専念されるということです。社会人教育に対して情熱を注ぎ続ける姿に頭が下がります。
日本を再興するためには、社会人教育が不可欠であるという信念を持ち、今日でも社会人教育に励んでいます。
私は、他のところでも何度も書いていますが、30代の頃から大前氏に私淑しています。これからも変わりません。


KON486【東京エレクトロン・LIXIL・東レ~各企業のM&A戦略を考える】 ~大前研一ニュースの視点~ 2013/10/04 8:28

🔴メルマガ全文

┏━■ ~大前研一ニュースの視点~
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『東京エレクトロン・LIXIL・東レ~各企業のM&A戦略を考える』 ――――――――――――――――――――――――――――――――――


 東京エレクトロン 2014年後半の経営統合を発表
 LIXILグループ 独グローエ買収を発表
 東レ 米ゾルテックを買収

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 ▼ 半導体製造装置メーカーが、規模の経済で半導体メーカーに対抗する
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 半導体製造装置の国内首位で世界3位の東京エレクトロンと
 世界首位の米アプライドマテリアルズが、先月24日、2014年後半に
 経営統合すると発表しました。

 スマートフォンの普及で進む半導体の高機能化に対応するため、
 経営統合により開発費を分担。

 今後、次世代技術である450ミリウエハー向け製造装置の実用化や
 メモリーの大容量化に対応した技術開発を進める意向とのことです。

 東京エレクトロンもアプライドマテリアルズも、
 非常に高収益企業でしたが、ここ最近伸び悩んでいました。

 業界2位にいるオランダのASMLに脅威を感じた、3位と1位が
 手を組んだという形です。

 この経営統合でシェアは25.6%となり、ASMLの2倍になります。

 半導体製造装置メーカーは、巨大になりすぎた半導体メーカーから、
 厳しい仕打ちを受けています。

 半導体メーカーは、アップルやクアルコムから発注を受けると、
 半導体製造装置メーカーに厳しい条件を突きつけてきました。

 今回の経営統合は、規模経済によって半導体メーカーに
 対抗できるようになるため、というのが最も大きな目的でしょう。

 本社はオランダとのことですが、ここはほぼペーパーカンパニーに
 近いでしょう。

 実際のオペレーションは日本と米国でそれぞれ行うはずです。

 ただし、半導体メーカーとの交渉は一本化し、
 対抗する姿勢を示してくるものと思います。

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 ▼ LIXILは買収後のマネジメントを引き締めることが大切
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 LIXILグループは26日、日本政策投資銀行と共同で
 ドイツの住宅用機器大手グローエを買収すると正式発表しました。

 負債の承継を含めた買収総額は約29億ユーロ(約3800億円)。

 欧米などの独禁当局の許可を得て2014年前半に買収を完了する予定です。

 先日、私はこのテーマをケース・スタディで扱った時、
 今後LIXILが狙うべきM&Aの対象は、欧州市場の水回りメーカー、
 北米の建材メーカーだと提案しました。

 LIXILはすでにアメリカンスタンダードを買収済みですから、
 まさに私の推薦はグローエでした。

 グローエといえば、超高級メーカーの代名詞のような存在です。

 超一流ホテル、超大金持ちの家は、水回りやキッチンが
 グローエになっています。

 グローエを使っているだけで、お金持ちだとわかるほどです。

 アメリカンスタンダードとは対照的なブランドになりますから、
 その意味でもLIXILにとっては非常に良い買収になると思います。

 LIXILがアメリカンスタンダードとグローエを
 どう使い分けていくのか、楽しみにしています。

 LIXILの藤森社長は、海外・国内でそれぞれ1兆円という規模を
 託されているそうですが、今回の買収で6000億円が
 見えてきましたから、あと4000億円です。

 GEの副社長としても敏腕を振るった藤森社長なら、
 おそらく実現させると思います。

 ただし、気をつけなくてはいけないのは、買収後の
 マネジメントとインテグレーションです。

 当然、GEのノウハウを持っているとは思いますが、
 それでもプライドの高い会社を買収した後、
 マネジメントしていくのは大変です。

 買収戦略で成長しているジョンソン・アンド・ジョンソンや
 ネスレ、そして藤森社長の古巣であるGEなどは、
 必ず「買収後の3ヶ月でやるべきこと」が決まっています。

 LIXILが同じようなことができれば、日本で例外的に
 成功した会社として名を残すことができるでしょう。

 LIXILと同様、こちらも期待したいのが東レです。

 東レは27日、炭素繊維大手の米ゾルテックを買収することで
 合意したと発表しました。

 買収額は600億円~700億円で世界首位の東レは高機能品を
 主力としており、廉価品でトップメーカーのゾルテックを
 傘下に収めることで、炭素繊維の新たな用途を開拓する考えです。

 東レは炭素繊維生産能力シェアで現在トップです。

 ゾルテックは業界シェア3位ですが、東レとは異なり廉価品の
 炭素繊維を扱っています。

 東レはゾルテックを買収することで、既存のハイエンド品と
 廉価品の両方を抑えシェアは30%に達します。

 LIXILと東レの動きは日本企業にとっては、頼もしい限りです。
 今後の両社に期待したいと思います。

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 この大前研一のメッセージは9月29日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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✅KON486のキーワード・キーセンテンス

1「オランダのASML」

ASMLは「2020年(令和2年)現在、世界唯一の極端紫外線リソグラフィ(EUVL)装置メーカー」(Wikipediaから)です。

半導体の製造のために不可欠な装置を作っています。

ASMLが急進した経緯を時系列で見てみましょう。

2012年 次世代露光技術の一つである極端紫外線の開発の加速化のため、世界半導体大手の3社インテル、サムスン、TSMCから約50億ドルの投資を受け入れる。ニコンと長いパートナー関係のインテルが6割の30億ドルを担う事になる。ニコンは同技術の普及が起こる可能性が低いと判断し、2010年代初頭に開発から撤退した」

2017年 ニコンがASMLを再び特許侵害で提訴

2019年 ニコンとの和解成立」 この沿革を時系列で眺めますと、<ニコンが極端紫外線の技術の普及が起こる可能性が低いと判断し2010年代初頭に開発から撤退した>ことが、その後のASMLの独走を許したことになります。 

ASMLの露光装置の世界シェアは世界一

🔶 ASMLの露光装置の世界シェアは81.2%(2019年 Wikipediaから)で世界一ですが、1996年には日本のニコンが約50%弱、キャノンが約25%のシェアを獲得していた(Wikipediaから)そうです。

ASMLの詳細については下記をご覧ください。
日本が半導体事業でなぜ敗れたのかについても書いています。


2「東レ」

東レはユニクロと組んで、高機能繊維を開発し、フリースをはじめ、ヒートテック、エアリズムといったブランドを世に出してきたことで知られていますが、大前研一さんが述べているように、炭素繊維でも有名です。

炭素繊維は軽くて丈夫なため、航空機の機体などに使われています。東レの技術力の高さが光っています。

東レの5つの事業

東レの公式ウェブサイトから (以下同様)





KON487【消費増税・堺市長選・政党支持率~日本の税金全体の設計を考える】 ~大前研一ニュースの視点~ 2013/10/11 8:28

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┏━■ ~大前研一ニュースの視点~
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『消費増税・堺市長選・政党支持率~日本の税金全体の設計を考え
   る』 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 消費増税 2014年4月の消費税率8%引き上げを決定
 堺市長選 竹山修身氏が再選
 政党支持率 共産党が2位浮上

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 ▼ 5兆円の無駄遣いをするための、消費増税。
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 政府は1日、2014年4月の消費税率8%への引き上げを決定しました。

 安倍首相は、増税に備えて企業向け減税に加え、
 5兆円規模の経済対策を策定すると表明しました。

 3%分の引き上げで消費税収は年8.1兆円増える見通しですが、
 初年度の14年度は約5兆円増にとどまる見込みとのことです。

 全くおかしな話です。
 これでは5兆円の無駄遣いをするために増税するのと同じです。

 消費増税は税制改善のためにやるべきことなのに、
 全くそうなっていません。

 増加する税収も5兆円程度では、景気の腰折れを招くでしょう。

 これは完全にペテンであり、お金をばらまいて票を買う、
 という自民党が戻ってきたとしか言えません。

 来年は8%、その次は10%までの引き上げという話でしたが、
 それはやめておこうという流れになっているようです。

 しかし国と地方の基礎的財政収支の推移を見れば、
 厳しい日本の財政は一目瞭然です。

 国際比較をすると、消費税率8%程度は決して高くなく、
 EUは15%程度を推奨しているという人もいます。

 しかし、日本は法人税も相続税も高く、
 一概に消費税率だけで比較しても意味はありません。

 法人税、所得税、相続税など、全てを考慮して
 税金全体の設計を見直すことが重要であり、
 今日本はそのタイミングが来ているのだと思います。

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 ▼ 堺抜きで大阪都を実現せよ。
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 堺市長選は29日投開票され、無所属で現職の竹山修身氏が、
 「大阪維新の会」公認の元堺市議、西林克敏氏を破って
 再選しました。

 予想通り、竹山氏の再選となり、大阪維新の会は
 惨敗した形になりました。

 これにより、橋下大阪市長が推進しようとしている
 「大阪都構想」に堺を含めることができなくなり、
 計画の頓挫が懸念されています。

 橋下市長は「潔く負け」を認めると言っていますが、
 負けを認めることよりも重要なのは、戦略を変更することです。

 堺が抜けようとも、あくまで「大阪都」を作ろうとするなら、
 松井大阪府知事、橋下大阪市長がいれば、
 「大阪都」を実現することができます。

 東京都でも23区に入らず、「市」になっている地域が
 いくつかありますが、同じように「大阪都」も「堺市」を
 残したままにすれば良いのです。

 もちろん、堺を含めて大阪都を実現するのが理想ですが、
 それが無理であってもこの際「大阪都」は
 実現させてしまうべきだと思います。

 大阪都が東京都と同じように力を持ってくれば、
 「堺市」も言うことを聞かざるを得ない状況になるでしょう。

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 ▼ 10年後に現れる本物の政治家に期待。
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 日経新聞によると、世論調査の政党支持率で、
 共産党が前月に比べて2ポイント増の6%と自民党の55%に次いで
 2位に浮上したとのことです。

 これは2001年2月以来の高支持率で、
 民主党は同2ポイント減の5%で、1997年9月と並ぶ結党以来最低を
 記録しています。

 共産党が2位とは言え、政党支持率の推移を見れば、
 自民党以外は「地を這うミミズ」と同じレベルです。

 ただし、今はこの世の春を謳歌している自民党も、
 民主党がそうであったように、
 いつまた落ちてしまうかも知れません。

 日本人は、ほんの少しの過失で一気に支持しなくなる傾向があります。

 それにしても、自民党は相変わらず「ばらまき」をしているだけで、
 実質的には何も有効な政策を実行していません。

 先に見た税制問題を見てもわかるように、もう少し国の
 抜本的な部分を変える必要があります。

 そういう意味で、私が期待しているのは「10年後」です。

 今の日本のバイオリズムだと、
 10年に1度「メサイア(救世主)」的な存在が登場します。

 かつての細川氏、小泉氏などです。

 今回、橋下氏にその役割を期待していましたが、
 どうやら無理そうです。

 私は、安倍政権は経済問題に対処できず、
 10年持たない可能性が高いと見ています。

 もし仮に10年後まで存続したとしても、その時には
 安倍首相の復古主義的な思想が表面化し、
 それが理由で崩壊すると思います。

 そのとき、10年後に「本物」の人物が出てきてくれることを
 私は期待しています。

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 この大前研一のメッセージは10月6日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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✅KON487のキーワード・キーセンテンス

「大阪維新の会」

大阪維新の会よりも前に、大前研一さんは平成維新の会を立ち上げました。

平成維新の会の発足の経緯は、大前さんの次の記事に詳細に述べられています。その一部をご紹介しましょう。

 『新・国富論』も『平成維新』も100万部以上売れて、大前研一の名前も企業社会以外の層に少しは広まった。しかし結果的には日本は何も変わらなかった。
(中略)
執筆活動だけでは限界がある。日本を変えるためにはもっと政治に直接働きかけるような活動をしなければならない、と思うようになった。
 政治家になるつもりはなかった。政治家に向いていないことは、自分自身が一番よくわかっている。マッキンゼーでクライアントにアドバイスする仕事を23年やってきた。マッキンゼーではコンサルタントがクライアントのCEOになるのは筋が悪いとされていた。
 だから自分は政策提言に徹することにした。受益者、生活者サイドに立った「政策提言型の市民集団」を組織し、党派に関係なく、我々の政策を実現してくれる政治家を後押ししていこうと決めたのだ。
 それが1992年に設立した「平成維新の会」である。立ち上げの全国大会にはのちに首相となる菅直人氏(当時は社会民主連合)も応援に駆け付けて大演説をぶってくれた。
 いろいろな方から応援していただいて、月1、2回の勉強会(政策ミーティング)には稲盛和夫(当時京セラ会長)さんや藤田田(当時、日本マクドナルド社長)さん、船橋洋一(当時、朝日新聞編集委員)さん、女優の岸恵子さんなどもいらしていた。
一番熱心だったのは稲盛さんで、「早く政党になれ」「政治家にならなければダメだ」とよく言われたものだ。しかし当時、「改革派」と呼ばれていた与野党の政治家の熱意と能力と意思を私は信用していた。政治家が歪むのは政策がないからだと考えていたから、平成維新の会で理念と政策を示して、改革派陣の応援に回ろうと思っていたのだ。

元祖「平成維新」(3)-「平成維新の会」発足 
PRESIDENT Online 2013/01/28 13:00
 


32年前の話です。私が36か37歳の時です。もう少し読んでみましょう。

 推薦にあたって立候補者たちには「(当選したら)平成維新の会が立案した83の法案を実現させる」という誓約書を書いてもらった。
(中略)
 短い選挙期間中に108人の応援をするために、自分でヘリコプターをチャーターして全国を回った。政党の党首並みに強行軍で心身をすり減らした。
 結果、82人が当選し、盛大な祝勝会を行った。この82人に新しい同志数人を加えて月一回の勉強会をするようになった。
(中略)
「党の事情が優先しますから、大前さん、その辺りは理解してください」
「選挙のときに支援はしてくれたけど、お金はいただかなかった」
「私を支持してくれたけど、同じ選挙区でこの人も支持したじゃないか」
 支援した議員の3分の2ぐらいはそうやって離れていった。残った議員で勉強会を続けたが、その後の政党の離散集合で誰がどこの党にいるのかわからないような状況になり、国会議員を後方支援する、という「平成維新」の運動は機能停止に陥った。
 83の法案も国会に提出されたのは2つだけだった。
(中略)
かろうじて議員立法に持ち込んだ2つの法案も廃案に終わった。
私は完全に頭にきて、もう自分でやるしかないと決意した。

元祖「平成維新」(3)-「平成維新の会」発足 
 PRESIDENT Online 2013/01/28 13:00
 


この「事件」を契機に1995年東京都知事選挙に出馬しました。ところが、選挙活動を一切しなかった青島幸雄氏が当選し、必死に活動した自分が落選したことにショックを受け、政界への進出を諦めました。

1995年の都知事選に関して、『大前研一 敗戦記』に詳細に書かれています。

1995年東京都知事選挙 Wikipedia



KON488【ヤフー・日産自動車・花王~顧客ターゲットを考える】 ~大前研一ニュースの視点~ 2013/10/18 8:29

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┏━■ ~大前研一ニュースの視点~
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『ヤフー・日産自動車・花王~顧客ターゲットを考える』 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 電子商取引大手 ネット通販株が急落
 日産自動車 「インフィニティ」を国内高級車ブランドに採用
 花王 カネボウ化粧品と研究・生産部門を統合

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 ▼ ヤフー孫会長が恐れているのは、楽天よりもアマゾン
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 8日の東京株式市場でヤフーや楽天など電子商取引大手の
 株価が急落しました。

 前日にヤフーがネット通販サイトの出店料を無料にすると
 発表したことを受け、価格競争が本格化し、事業の収益性が
 低下しかねないとの懸念が広がったものです。

 ヤフーは9日、同社の通販サイトへの出店希望数が1日で
 約2万6千件に上ったと発表しました。

 中小事業者や個人の申し込みが殺到しており、
 法人の出店ペースとしてはこれまでの数百倍規模とのことです。

 楽天によれば、法人に対する支援は大変でとても無料でできる
 ものではない、とのことです。

 現在は楽天の株価が急落していますが、ヤフーとしても
 この後が難しいところです。

 無料で集めておいて、ある程度時間が経過したら後から
 有料化を考えていると思いますが、大バッシングを受けるでしょう。

 あるいは、良い場所に出店するのは有料とするというのも、
 当然想定していると思います。

 ヤフーの孫会長としては、アマゾンを最も恐れているのでしょう。

 アマゾンはネット通販に新しい生態系を確立しています。

 出店料をとらないモデルも存在し、様々な切り口でビジネスが
 存在してます。

 世界最大の小売業を目指すアマゾン。

 今回のヤフーの出店料無料というのも、主にアマゾン対策が
 強いと思います。

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 ▼ 日産は国内マーケティングを今一度見直すべき
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 日産自動車は海外で展開してきた高級車ブランド
 「インフィニティ」を初めて国内向け車種に採用します。

 主力高級スポーツ車「スカイライン」の次期モデルを
 同ブランド車として今冬にも発売。

 現在、国内の高級車販売は好調が続いていますが
 需要を獲得しているのは主に欧州車。

 日産は国際的に知名度の高いインフィニティブランドを
 活用して独BMWなどに対抗していくとのことです。

 率直に言って、これは無理だと私は思います。

 トヨタが米国で成功したレクサスブランドを日本に持ち込むと
 言ったとき、私は同じように無理だと言いました。

 トヨタのレクセスは日本でも成功しているのでは?と感じる人も
 いるかもしれませんが、世界で48万台販売されているうち、
 たったの4万台に過ぎません。

 あれだけ日本国内の販売に力を入れておきながら、
 4万台では成功しているとは言えないでしょう。

 むしろ、トヨタがあれだけ力を入れれば、どんなブランドでも
 4万台くらいの数字には達すると思います。

 日産はインフィニティを国内で販売しなくても、
 スカイラインGTRがあります。

 スカイラインでポルシェやBMWと戦えるはずです。

 またスカイラインをなくして、インフィニティが成功するか?
 と考えると、スカイラインの購入者層を考えても厳しいでしょう。

 今、スカイラインを購入している人は、若い頃には買えなかった
 「あのスカイライン」を今なら買えるという中高齢の男性です。

 そこに青春を感じるのです。

 それがインフィニティになってしまったら、
 全く意味がありません。

 このターゲット層を逃してまで、インフィニティで
 カバーできるのか?私には疑問です。

 そもそもインフィニティは米国でもそれほど成功していません。

 日産はまともにマーケティングを考えているのか?
 と疑いたくなります。

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 ▼ 花王は、カネボウのマーケティング部門だけでも残したいはず
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 マーケティング的な観点を考慮した上で、
 全く別の決断を下したのが「花王」です。

 花王は8日、子会社のカネボウ化粧品と研究・生産部門を
 統合すると発表しました。

 カネボウの美白化粧品で肌がまだらに白くなる「白斑」被害が
 出た問題を受け、経営に深く踏み込む必要があると判断。

 本格参入から半世紀以上続く化粧品の名門「カネボウ」は
 事実上、花王に吸収されることになりました。

 本当はもっと別の道があったはずですが、
 これは致し方ないと思います。

 そもそも花王は化粧品の取り扱いがあったものの、
 石鹸、洗剤などのイメージが強い会社でした。

 そこで純粋な化粧品会社を求め、資生堂と伍する立場にあった
 カネボウを傘下に収めました。

 花王としては、カネボウのブランドは残したままにして
 おきたかったと思いますが、今回のような不祥事がおきて、
 致し方ない対応に迫られたということでしょう。

 生産、研究部門はもちろんのこと、品質保証や顧客対応も一体化し、
 さらには総務・人事も取り込むということです。

 ただし、現時点でもマーケティング部門だけは、いまだ花王に
 取り込む決定はされていません。

 かつては資生堂とも戦ってきたマーケティング部門ですし、
 花王のそれよりも一歩先んじているのは間違いありませんから、
 何とか残しておきたいという意向が強いのでしょう。

 カネボウの立場からすれば、取り返しの付かない痛恨のミスを
 犯したと言えます。

 まさに自滅ですが、この悔しさは一生拭うことはできないでしょう。

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 この大前研一のメッセージは10月13日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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✅KON488のキーワード・キーセンテンス

「スカイライン」

桜井眞一郎氏が設計した初期のスカイラインは「名車」として一世を風靡しました。

「ハコスカ」「スカイラインGTおよびGTR」「ケンメリ(ケンとメリーのスカイライン)」「ポールニューマンバージョン」などなど、当時の若者たちに熱狂的に支持されました。RとはRacing、つまりレース用のクルマという意味です。

4灯丸形テールランプはスカイラインの代名詞でもありました。
スカイラインGTは「羊を被った狼」とも呼ばれました。ボディは普通の大人しいクルマなのに、実は超高性能の凄いクルマだったからです。

スカイラインは第2回日本グランプリで一瞬ポルシェを抜いたのです。
これがスカイライン伝説の始まりでした。

1964年日本グランプリ(GP)での世紀の1周が日本のレースファンの心を刺激し、伝説を生みました。

スカイライン伝説の始まり


NISSAN GT-Rのエンジンを組み上げる「匠」たち


これらの動画を観ると、クルマの好きな人は血沸き肉躍ることでしょう。



KON489【パナソニック・三洋半導体・NEC~柱となる事業の軸を考える】 ~大前研一ニュースの視点~ 2013/10/25 8:28

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┏━■ ~大前研一ニュースの視点~
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『パナソニック・三洋半導体・NEC~柱となる事業の軸を考える』 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 パナソニック プラズマテレビ向けパネル生産停止へ
 三洋半導体 最大910人を削減
 NEC NECビッグローブを売却

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 ▼ パナソニックは、松下幸之助時代に逆戻りしている
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 日経新聞が報じたところによると、9日、パナソニックは
 2013年度末をめどにプラズマテレビ向けパネル生産を
 停止する方針を固めました。

 生産拠点の尼崎工場も売却する方針で同事業から完全撤退。

 プラズマテレビ事業は同社が13年3月期まで2年連続で7500億円を
 超える最終赤字を計上する要因の一つでした。

 最大の懸案に区切りがつくことで同社の構造改革が
 大きく前進する見込みとのことです。

 パナソニックは、いわゆる「プラズマテレビ VS 液晶テレビ
 の戦いに敗北しました。

 性能的には大きな差はなかったと思います。

 しかし、生産コスト、ディスプレイの巨大化への対応の面で
 液晶に軍配が上がりました。

 とはいえ、液晶テレビの勝者であったはずのシャープも、
 厳しい経営状況に追い込まれていますから、結果として言えば
 「ダブルノックアウト」状態といったところでしょう。

 問題は、パナソニックが今後の事業の軸を
 どこに定めていくのか?ということです。

 日本では白物家電や住宅関連が好調ですが、どちらも海外では
 ほとんど実績を作れていません。

 今パナソニックは再び「松下幸之助時代」に逆戻りした
 状況だと言えると思います。

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 ▼ パナソニック、三洋の苦しみを引き継いだだけか?
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 米半導体メーカーのオン・セミコンダクターは8日、
 子会社の三洋半導体で同社の全社員の半分近くに相当する
 最大910人を削減すると発表しました。

 埼玉県の工場を2014年6月までに閉鎖し、希望退職も募集します。

 事業体制を見直し、年間5000万ドル(約48億円)規模の
 コスト削減につなげるとのことです。

 今回46億円のコスト削減につなげるということですが、
 歴史を紐解くと、非常に悲しい物語があります。

 まず2004年に新潟中越地震で被災し、
 700億円の損失を計上しています。

 その後、分社化して三洋半導体の売却先を募集し、
 2007年にはアドバンテッジパートナーズが名乗りをあげるものの、
 実現には至らず。

 結局、パナソニックが買収し、1200人の人員削減と
 海外工場の集約(7箇所→4箇所)が行われました。

 そして、2011年になって米オン・セミコンダクターが360億円で
 買収しましたが、タイのアユタヤにある工場が洪水で
 閉鎖に追い込まれてしまいました。

 米オン・セミコンダクターとしても、
 本当に買収したことが良かったのか?

 単に三洋とパナソニックの苦しみを引き継いだだけ
 ではないのか?という気がしてしまいます。

 パナソニック、三洋と同じように、
 厳しい環境に追い込まれているのが、NECです。

 NECはインターネット接続子会社のNECビッグローブを
 売却する方針を固めたと報じられました。

 NECは7月にスマートフォン事業から撤退するなど、
 消費者向けの事業を縮小しています。

 経営資源を成長の柱に位置付ける社会インフラ事業に
 振り向ける方針とのことです。

 NECビッグローブは売上が700億円~800億円あるので、
 そこそこの金額で買収が成立すると思います。

 時代の流れを見ると、ブロードバンドサービスは、
 固定系サービスから移動系サービスに軸が移ってきています。

 固定系では、業界4位で個人を中心に302万人の会員がいる
 NECビッグローブ。

 おそらく、携帯系サービスを展開する企業が、顧客ごと
 買収する形になるのではないかと思います。

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 この記事は10月13日にBBT Chで放映された大前研一ライブの
 内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに再構成しております。
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✅KON489のキーワード・キーセンテンス

「プラズマテレビ VS 液晶テレビ」

パナソニックはプラズマテレビ事業で7500億円の赤字を出し、撤退したことがその後の全社の勢いを失った遠因となりました。

現在では、ソニーグループと時価総額で大きな差をつけられています。


ソニーグループの時価総額

ソニーグループの時価総額は18.09兆円(2024/01/12 現在)です。


パナソニックホールディングスの時価総額

パナソニックホールディングスの時価総額は3.58兆円(2024/01/12 現在)です。

時価総額比 
ソニーグループ         18.09兆円 
パナソニックホールディングス    3.58兆円

5倍以上の開きがあります。パナソニックホールディングスにも頑張って欲しいですね。

以前、パナソニックを扱った『日経ビジネス』の記事をnoteに投稿しました。



✒ 編集後記

「メルマガ 大前研一 ニュースの視点」を読み返してみると、当時のことが断片的に思い出されてきました。10年という歳月が流れましたが、ところどころ記憶に残っていた個所があり、またその後の経過を確認することができています。

11年前のメルマガですが、今読んでみても、学ぶことがたくさんあります。それは執筆当時の事情がどうであれ、大前研一氏の普遍性のある考え方や、ものの見方、発想力、構想力、具体的な例を挙げて説明する方法、自ら実践することなど、そうしたものをすべて含んだプレゼンテーション能力の高さに圧倒されます。

ただし、私は大前氏を私淑していますので、あなたから見ると「傾倒しすぎだよ」と言われそうですが……。

栄枯盛衰は世の常です。
それは、企業においても、個人においてもしかりです。
以前であれば、一流企業は安泰で、そこに勤務していれば定年まで安心して働けるという共通認識がありましたが、現在では「一瞬先は闇」です。

大前研一氏の先を見通す先見力や発想力、構想力、分析力、発信力、その他にも多数ありますが、私には何一つ追いつけるものはありません。

それでも、大前氏をグル(「指導者」「教師」「尊敬すべき人物」「師匠」)と仰ぎ、書籍や動画などを通じて、これからも間接的に指導を受けたいと思っています。

ソニーグループ(ソニー)とパナソニックホールディングス(パナソニック)の時価総額は乖離しています。技術力や製品力などを比較すると、時価総額が5倍以上もの差になっていることは説明できないし、理解できないと思います。

しかし、株式市場ではソニーが高く評価され、パナソニックはあまり評価されていないという厳しい現実があります。

パナソニックは終わったわけではありません。EV用バッテリーをテスラに供給しています。もちろん、テスラはEV用バッテリーだけでなく、急速充電器も製造し供給していますので、パナソニックにとっては諸刃の剣であるとも言えます。

それでも、現状では、パナソニックはその戦略を貫いていくことが最善と考えています。

プラズマテレビの失敗を糧に復活して欲しいですね。


(15,961文字)


✑ 大前研一氏の略歴

大前 研一(おおまえ けんいち、1943年2月21日 - )は、日本経営コンサルタント起業家マサチューセッツ工科大学博士マッキンゼー日本支社長を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授やスタンフォード大学経営大学院客員教授を歴任。
現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長、韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授、高麗大学名誉客員教授、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長等を務める。 (Wikipedia から)

大前研一氏の略歴補足

大前氏は日立製作所に勤務時、高速増殖炉もんじゅの設計を担当していましたが、原発の危険性を強く感じていたそうです。
MITで原子力工学の博士号を授与されています。原子力の専門家でもあり、世界的に著名な経営コンサルタントでもあります。

世界一の経営コンサルティングファームのマッキンゼーに転職。
マッキンゼー本社の常務、マッキンゼー・ジャパン代表を歴任。

都知事選に出馬しましたが、まったく選挙活動をしなかった青島幸男氏に敗れたことを機に、政治の世界で活躍することをキッパリ諦め、社会人のための教育機関を立ち上げました。BBT(ビジネス・ブレークスルー)を東京証券取引所に上場させました。

大前氏の書籍は、日本語と英語で出版されていて、米国の大学でテキストとして使われている書籍もあるそうです。


「大前研一 ニュースの視点」というメルマガに登録したのは10年前のことです。毎週金曜日に配信されています。
2013/03/03 0:28
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この度は、無料メールマガジン「大前研一《ニュースの視点》」に
ご登録いただきありがとうございました。


🟡メルマガについて

メルマガに登録して、最初のメルマガが配信されたのは2013年3月8日(金)のことでした。
大前研一 ニュースの視点の通し番号にKON・・・となっています。
KO は Kenichi Ohmae です。N はナンバーです。


さて、私に最初に配信されたメルマガのタイトルは下記のようになっていました。

KON456【北方領土問題と韓国の新大統領~長期的な時間の流れで考える】 ~大前研一ニュースの視点~

通算で456件目だったのです。そのため、1~455のメルマガを読むことはできません。

ところが、調べてみたところ、2006年3月24日(当時は#106)以降であれば読めることがわかりました。


いずれの日にか、バックナンバーも取り上げます。



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