日経ビジネスの特集記事 58
殻を破れ!Panasonic 成長なき40年からの脱却 2023.01.23 1/3
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
CONTENTS
PART 1 電機の巨艦をむしばむ病 思考停止どう打破 トップ楠見の頭の中
PART 2 マイナーチェンジ地獄の原因 安売りよ、さらば 家電の悪循環断つ
PART 3 EVの大波に乗る マスクの速さに学べ 電池100年目の脱皮
PART 4 グループが変化する起爆剤に 米ブルーヨンダー 始まった異文化融合
PART 5 道しるべか呪縛か 経営の神様、幸之助と終わらぬ対話
編集長インタビュー 楠見雄規社長兼グループCEO 手を打たねばいずれ滅ぶ
第1回は、PART 1 電機の巨艦をむしばむ病 思考停止どう打破 トップ楠見の頭の中 と PART 2 マイナーチェンジ地獄の原因 安売りよ、さらば 家電の悪循環断つ を取り上げます。
【電機業界の雄、パナソニックホールディングス。営業利益は1984年度の5757億円を超えないまま、40年近くがたつ。成長できずにあえいできたが、今変化を起こそうとしている。停滞の殻を破ろうとする巨艦の現状と展望を探る】
というのが今週号のテーマです。
パナソニックは現在、EV向け電池の供給に全力で取り組んでいます。供給先は主にテスラです。EV用電池は競合が多く、世界シェア1位はCATL、2位はLG化学、3位はパナソニック、4位はBYD、5位はSKイノベーション等となっています(EV電池・車載電池業界の世界市場シェアの分析 2023.01.27)。
近い将来の話になりますが、トヨタは全固体電池を2027年までに実用化させると宣言していますし、テスラも独自で開発を進めています。
さらに、今はまだ小さな会社ですが、米国の QuantumScape (QS) という会社はすでに全固体電池を開発済みで、2025年に実用化するそうです。
もちろん、パナソニックはEV用電池だけにビジネスを特化しているわけではありません。家電メーカーであり、電子機器・部品や車載機器メーカーでもあり、さらにソフトウェアから住宅設備まで幅広いビジネスを展開しています。
それでも、EV用電池メーカーとしても世界市場で勝ち残ることは重要なテーマとなっています。
PART 1 電機の巨艦をむしばむ病 思考停止どう打破 トップ楠見の頭の中
パナソニックは、旧社名松下電器産業の頃から白物家電に強みを持っていましたが、中国のハイアールなどの台頭があり、苦戦を強いられています。
例えば、過去冷蔵庫の激烈な大型化競争がありましたが、日本国内では人口減や「お一人様」が増加したことで、大型冷蔵庫の需要は減少しました。
社会変化に素早く対応することが生き残るために不可欠です。もちろん、採算が合わないという結論が出た場合には事業から撤退することも選択肢の一つに入れなくてはなりません。
大型冷蔵庫のケース
陥りやすい状況が記されています。
プロジェクトの打ち合わせの席上で、2021年6月に56歳で社長に就いた楠見社長が声に出しました。
ある種の大企業病に陥っていたパナソニックを再生させるために、手始めに活を入れたとも取れる言葉です。マンネリズムからの脱却を狙ったのかもしれません。
もちろん、それだけで大組織が変わるはずはありません。
時には「大手術」は避けられないこともあります。事業からの撤退や売却です。
パナソニックの現状
競合との比較
過去、ソニーと比較されることが多かったパナソニックでしたが、時価総額で大きく水を開けられました。
「問題」が置き去りにされてきた原因
トヨタとの考える力の差
この体験から教訓を得た楠見社長はパナソニックを大改革しなければ、パナソニックは消滅してしまうと実感したのだろうと想像します。
上の図表を見ると、中村邦夫社長と大坪文雄社長の在任期間は6年でしたが、津賀一宏社長は9年でした。楠見雄規社長は何年務めるでしょうか。
停滞した海外売上高比率
停滞した原因(1)
停滞した原因(2)
つまり、内向きだったと言えます。「内向き・下向き・後ろ向き」という言葉があります。この言葉は大前研一氏が述べた言葉と理解していますが、ビジネスにおいても、個人レベルにおいても「消極的」ということをよく表現しています。
その正反対は「外向き・上向き・前向き」になります。これは表面的な形を表しているのではなく、内面から現れる考え方・生き方を表しています。「積極的」ということをよく表現しています。
経営共創基盤グループ会長・冨山和彦氏の言葉
PART 2 マイナーチェンジ地獄の原因 安売りよ、さらば 家電の悪循環断つ
先にご紹介した8つの事業(売上高、営業利益率)
パナソニック=家電 3兆1656億円 3.4%
パナソニックインダストリー=電子機器・部品 1兆1314億円 7.4%
パナソニックオートモーティブシステムズ=車載機器 1兆671億円 0.1%
パナソニックコネクト=サプライチェーン 9249億円 5.6%
パナソニックエナジー=電池 7644億円 8.4%
パナソニックエンターテインメント&コミュニケーション=テレビ 2803億円
パナソニックハウジングソリューションズ=住宅設備 4533億円
パナソニックオペレーショナルエクセレンス=間接部門
(殻を破れ!Panasonic 成長なき40年からの脱却 2023.01.23 p. 012)
の中で、最も売上高の多い事業はパナソニック=家電です。この事業は旧松下電工の祖業です。
しかし、祖業の売上高はパナソニック全社の売上高に占める割合は低下していることは推察できます。事業の多角化と社会変化に伴う需要の増減、儲かる事業への経営資源のシフトが行われているからです。
下の図表をご覧ください。2023年7月12日現在の株価と業績推移等が開示されています。
この中で「今季の業績予想」のところに2022年3月期の売上高が示されています。7,388,791百万円(7兆3887億9100万円)です。
パナソニック=家電の全社に占める売上高比率は 42.8 %です(3兆1656億円 ÷ 7兆3888億円 × 100)。
まだ、大きな比率を占めているとは言え、40%をわずかに超えているだけです。問題は営業利益率が低いことです。
パナソニックインダストリー=電子機器・部品の営業利益率7.4%や、まだ売上高は多くありませんが、パナソニックエナジー=電池の8.4%と比較するとかなり見劣りします。
パナソニック=家電の営業利益率が低い原因は下記の話で理解できます。
営業利益率が低い原因
今までは小売店へ販売価格を下げて納入していたのです。家電量販店への販売対策として常態化していたのです。
こうした業界の常識を覆すことを行なったのです。
パナソニック側が決める「指定価格」
新製品だから値引きをしないということではありません。
パナソニックが価格を決める?
問題は、こうした販売契約は独占禁止法(独禁法)に抵触しないのかという点です。
独禁法への対応
指定価格でも売れるものは売れる
パナソニックが製品作りを変更した点は次のとおりです。
製品づくりは足し算から引き算へ
つまり、マイナーチェンジを繰り返したり、機能をどんどん付け加えることで原価を上昇させていたということでしょう。足し算から引き算への発想の転換で、開発のスピードも製品化のスピードも高まったということです。
課題は残る
一方で、小売店側は「指定価格」に対してどのように考えているのでしょうか。
機能と価格のバランスは難しいですね。基本機能に何を加え、何を取りやめるのかという判断に正解はないと考えています。
商品を市場に出し、消費者に評価してもらい、新たな製品化に生かすという地道な活動を繰り返すしかないでしょう。
ただし、極力マイナーチェンジを避け、画期的な新製品を出すということが望まれます。
家電業界は、ハイアールやダイソン、アイロボットなど手強いライバルが多く存在します。
「指定価格」をどこまで推し進めていけるかがポイントの一つと考えています。
次回は
PART 3 EVの大波に乗る マスクの速さに学べ 電池100年目の脱皮
PART 4 グループが変化する起爆剤に 米ブルーヨンダー 始まった異文化融合
をお伝えします。
🔷編集後記
パナソニックが生き残るため、そして勝ち残るために何が欠かせないのか?
この課題を解決するために楠見社長が抜擢されたのです。
一朝一夕に解決できるほど甘いものではないことは、釈迦に説法でしょう。
ライバルは、国内外にまた事業ごとに存在します。
協業することも必要でしょうし、一線を画した商品づくりも欠かせません。
2024年3月期決算予想で好ましい数値が出ていますが、この数値を必達することが大事だと思います。そのことで更に先に進むことができます。
楠見社長は58歳と若いので9年以上全力で事業に取り組んでほしいと思います。
クリエイターのページ
日経ビジネスの特集記事(バックナンバー)
日経ビジネスの特集記事
日経ビジネスのインタビュー(バックナンバー)