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【ASMLとは何か?(2)】

🔷 ハイテク業界でオランダのASMLの存在感が増しています。

ASML

ASMLは「2020年(令和2年)現在、世界唯一の極端紫外線リソグラフィ(EUVL)装置メーカー」(Wikipediaから 「」内は以下同様)です。

🌟 ASML


ASMLとは何か?(1)

前回、ASMLとは何か?(1)

の最後に、「なぜオランダの1企業にアメリカは官民で支援したのでしょうか?」と問題提起しました。

この問題に触れる前にアメリカとオランダの関係について歴史を遡って見ていく必要があります。


アメリカとオランダの関係

①     オランダによるアメリカ大陸の植民地化

「オランダは何度か交易のための遠征を行った後で、1615年にアメリカ大陸では初の開拓地を設立した」

🌟 オランダによるアメリカ大陸の植民地化(Wikipediaから)


②     ABCD包囲網

1930年代後半(昭和10年頃)から、日本に対して行なわれた石油などの輸出規制・禁止の総体。「ABCD」とは、貿易制限を行っていたアメリカ合衆国America)、イギリスBritain)、中国China)、オランダDutch)と、各国の頭文字を並べたものである」

現在のオランダの正式国名はthe Netherlands です。

🌟 ABCD包囲網(Wikipediaから)


③     オランダ系アメリカ人は約440万人

「ご存じのとおりアメリカは(先住民を除けば)移民の国ですが、オランダ人はこの新しい土地に移住してきた最初の民族のうちのひとつでした。ニューヨークが昔、ニュー・アムステルダムという名前で、1667年までオランダの植民地だったのをご存知の方もいらっしゃるでしょう。現在のアメリカはどうでしょうか? 2014年の統計によると、オランダ系アメリカ人は約440万人います(※1)。オランダ本国の人口がおよそ1700万人であることを考えると、かなりの数だといえます

🌟 ミシガンのオランダ文化

🔶 「アメリカ在住の日本人は2017年10月時点で42万6206人」ということですからオランダ人は日本人より1桁多く在米していて、全体の人口比は日本:オランダ≒7:1ですからいかにオランダ系アメリカ人が多いかがわかります。

データは十分とは言えませんが、ここまでの説明でアメリカとオランダの関係が深いことがある程度分かります。


半導体をめぐる日米の対立

🔶 日米貿易摩擦の一つである半導体をめぐる日米の対立が過去において繰り広げられてきたこともASMLが躍進した背景にあると私は見ています。

元日立製作所専務の牧本次生氏が語る日経ビジネス(2020年10月23日)のインタビュー記事にご注目ください。ASMLについて言及しています。

「牧本氏は、最先端半導体の製造技術で中国に追いつかれないよう米国が神経をとがらせていることに注目する。微細化に欠かせない露光装置を手掛けるオランダの装置メーカー、ASMLの機器や技術が中国に渡らないよう、米国は19年からオランダ政府に働きかけてきた

米国の半導体関係者を刺激したのも日本の先端半導体開発プロジェクトだった

「富士通や日立製作所、三菱電機などが参加した官民連携計画で、コンピューターの中核となる超LSIを開発することが目標だった。シリコンウエハーに回路パターンを転写する露光装置など半導体製造技術の発展で大きく貢献し、その後の半導体材料や製造装置などの川上産業の強化につながった。その結果、『国防の観点から米国が日本の半導体産業に大きな警戒心を持つようになった』と牧本氏は分析する」

🔶 日本の半導体に関する技術力の発展に米国が危惧するようになった経緯がわかりますね。


そして、「『日本の半導体メーカーが不当に廉価販売している』。85年6月、米国半導体工業会(SIA)が日本製半導体をダンピング違反として米通商代表部(USTR)に提訴した」ことにより、「86年9月に締結したのが日米半導体協定だった。(1)日本市場における外国製半導体のシェア拡大、(2)公正販売価格による日本製半導体の価格固定――。協定で定められたこの2つの取り決めが『日本の半導体産業が弱体化する1つの引き金になった』と牧本氏は振り返る」


🔶 日本の政治家や官僚は国内に対しては強い態度で接しますが、外圧には弱いという内弁慶は何十年経っても変わりません。

「『DRAMは需要がある分だけつくれ』。報復関税に衝撃を受けた日本側は、通商産業省(現経済産業省)が半導体メーカーに指示を出した。各社は減産を余儀なくされ、その結果、外国製半導体の日本市場でのシェアが拡大していった」

「日本の半導体メーカーの衰退には3つの遅れが関係している。パソコン市場の急激な拡大に乗り遅れ、総合電機メーカーの1事業だったために設備投資の意思決定も遅れた。ファウンドリー*(半導体受託製造)や設計専業などの水平分業への対応も遅れた」

(*ファウンドリーとして世界一の企業は台湾のTSMCです:藤巻)

🔶 しかしながら、牧本氏は日本の半導体が衰退した本質的な原因は別のところにあったと述べています。


日本の半導体が衰退した本質的な原因

「『一国の盛衰は半導体にあり』。牧本氏は結局、この認識があるかないかが日本と米国の違いだったと振り返る」

🔶 最後に、ASMLの概要についてお伝えします。

Bloombergは2021年9月29日16:12 JSTに次のように伝えています。

「オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングは、今後数年の売上高見通しを引き上げた。半導体メーカー各社が先端半導体を製造できる装置の発注を急いでいることが背景だ。

ASMLは投資家向けに29日発表した資料で、2025年の年間売上高は約240億-300億ユーロ(約3兆1200億-3兆9000億円)になるとの予想を示した。これまでは150億-240億ユーロと見込んでいた」


🔶 この記事を読んで、EUVマスクブランクス欠陥検査装置メーカーのレーザーテック(6920)にとっても今後追い風になることが予想されます。

次回に続きます。


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