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薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 1/3

【『日経ビジネス』の特集記事 】 #16

✅はじめに

⭐『日経ビジネス』の特集記事から、私が特に関心を持った個所重要と考えた個所を抜粋しました。
Ameba(アメブロ)に投稿していた記事は再編集し、加筆修正し、新たな情報を加味し、再投稿した記事は他の「バックナンバー」というマガジンにまとめています。

⭐原則として特集記事を3回に分けて投稿します。
「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」です。
プロフィールから)


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日経ビジネスの特集記事 #16

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 1/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

今冬は猛烈な寒波が襲来する可能性が高い、という予報が出ていると聞いたことがあります。

しかも、円安による燃料費が高騰し、電力料金が跳ね上がり、庶民生活を苦しめています。

岸田首相は原発再稼働を試みようとしていますね。しかし、原発再稼働には避けて通れない問題があります。

例えば、東日本大震災後の東電福島第一原発の事故による後遺症が癒えていない状況で、十分な検査をせずに原発再稼働をするには危険性が潜んでいます。

放射性物質のプルトニウムを安全に保管維持が出来るのかという問題もあります。プルトニウム239の半減期は24000年ということらしいです。

プルトニウムは、原子力発電の燃料であるウランに中性子が捕獲されてできる超ウラン元素の代表的な放射性物質です。その中でもプルトニウム239は多く生成し、半減期24000年でアルファ線を出してウラン235に変化します。またプルトニウム239は中性子の衝突により核分裂する性質もあります。

排出放射性物質影響調査について



上記の問題を抱えながら、当面のエネルギー問題をどう解決するのか?
この点に注視しながら、今回の日経ビジネスの特集記事を読んでみることにしましょう。

現場リポート編

きしむ街、人、制度
課題の現場を歩く


環境問題の切り札と期待された風力やバイオマスなどの再生可能エネルギーは、費用負担や環境への影響などで賛否が分かれ、街の分断を招いている。原子力も核ごみ処分問題が未解決で、その受け入れを巡って北海道の街が揺れる。

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CASE 1 新潟県 阿賀野市

新電力の相次ぐ値上げ、破綻
電気代2倍となった遊園地の悲哀


年1800万円が約2倍に

JR新潟駅から南東へ車で約50分の新潟県阿賀野市。山あいの美しい田園風景のなかを進むと、赤色の三角屋根が特徴的な西洋風の建物が見えてきた。1976年創業の老舗遊園地「サントピアワールド」である。
電気代は昨年度、約1820万円だったが、今年度は約3580万円。値上げ額の桁が1つ違うのではないかと目を疑った」。サントピアワールドの高橋修園長はこう嘆息する。

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電気代が約2倍になったことは、サントピアワールドの運営する側にとって大打撃だったでしょう。

しかも、手をこまぬいていたわけではありませんでした。

アトラクションの維持だけでも年間3000万円ほどかかる。高橋園長は、4年ほど前から少しでもコストを下げようと、新電力会社に切り替えた。大手電力会社よりも2~3割安くなった。ただ、新電力は大手よりも価格が安い半面、市場の影響を受けて電気代が高騰するリスクがある。

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阿賀野市
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電気代が約2倍となった遊園地「サントピアワールド」(新潟県阿賀野市)。
新型コロナウイルス禍の影響も受けており、遊具・施設の老朽化も目立つ
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遊具のサビが進行していますね。施設の補修費用もかかるので経営は厳しいでしょう。

企業努力はしています。チケットの値上げに踏み切りました。

7月から乗り放題チケットを一律400円値上げした。1割前後の引き上げとなる。これで電力によるコスト増をすべて吸収できるわけではないが、残りは節電など企業努力を続ける考えだ。

綱渡りの経営が続いても、施設の老朽化に伴う補修などの投資は削れない。

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逆風に負けずに頑張ってもらいたいですね!


CASE 2 徳島県 海陽町

待ったがかかった風力発電
「環境のため」両立せずジレンマ

日本にはこんなにきれいな水が水道水として利用できるところがあるのですね。驚きました。

神戸の水は美味しいとか、新潟などの米どころは水質が良いから美味しい米ができるという話はよく耳にしますね。

しかし、徳島県海陽町の水道水が具体的にどんな水なのかを聞くと、びっくりすると思います。少なくとも、私はとても驚きました。

ミネラルウオーターよりも、水道水がきれいな町。このキャッチフレーズに象徴されるように、海陽町は知る人ぞ知る自然の宝庫だ。かつて研究者がこの町の水道水の水質を調べたところ、市販されているミネラルウオーターより飲み水として優れた特質を確認できたという

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海陽町
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この海陽町で風力発電所の建設計画が中止にとなったそうです。
その理由は「建設による汚水流入を懸念」したためでした。

今回の風力発電所建設の舞台となったのは、この水源である海部川の上流地域だ。環境省から「平成の名水百選」に認定されており、林野庁などが選定した「日本の滝百選」に含まれる「轟(とどろき)の滝」もある。
(中略)
都市部では考えられないほど、水の透明度が高いのだ。ここに生息する希少種の鳥類、クマタカやヤイロチョウにとっても貴重な水資源。そこで風力発電所の建設によって汚水が流入したり、土砂崩れの危険が増したりしないかと、反対運動が盛り上がった。

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風力発電所の建設中止によって得た教訓3つ


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1 説明責任を果たさないことが多い
2 再生可能エネルギーという名称を使用することで、すべて許されると勘  違いする
3 地元議員や一部の企業にだけ利益をもたらすことに注視


風力発電計画が中止になったケースは徳島県海陽町だけではありません。

下の一覧表をご覧ください。


中止となる風力発電計画が相次いでいる
●主な最近の事例一覧
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この一覧表を見ると、2022年6月から9月まで毎月風力発電計画が中止になっています。

一口に風力発電と言っても陸上風力と洋上風力があります。
そのうち陸上風力の建設が中止になっています。
中止理由には、環境保護の観点と景観への配慮、さらに風量を十分に見込めないという決定的な点があります。

直近では、陸上風力の建設中止が各地で相次いでいる。オリックスが進めていた高知県での案件は景観への懸念があり、風量も十分には見込めないとして今年6月に断念した。

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CASE 3 福島県 飯舘村

被災地のエネルギー復興
バイオマス発電所、負担巡り紛糾

福島県飯舘村といえば、東日本大震災直後に発生した東京電力福島第1原子力発電所の事故で全国的に報道され、地元の人たちにとって不名誉なことが知られるようになった村の1つです。

飯舘村
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その飯舘村で「今夏からバイオマス発電所の建設が始まった」(薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.018)ということです。

バイオマス発電所には意義があります。

バイオマス発電所は「林業の活性化や住民の帰還に資する雇用の確保などを図り、復興に向けて地域の再生を加速化させる」(飯舘村産業振興課)という意義がある。24年に稼働予定で、出力は7500キロワット(kW)。想定する年間売電量は5300万キロワット時(kWh)程度で、一般家庭1万6000軒超の消費量を賄える計算だ。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.018


財源めぐり異論も

下記の囲み記事をご覧ください。総事業費は約100億円が見込まれているいるそうです。

問題は、財源をめぐり国民負担へと置き換わることです。

事業の主体は、東京電力ホールディングスを軸とした企業連合だ。同社と、その100%子会社で放射性物質の管理も担う東京パワーテクノロジー(東京・江東)、神鋼環境ソリューション(神戸市)、熊谷組の計4社が共同出資してバイオマス発電に向けた事業会社を20年に設立した。

 総事業費は約100億円が見込まれている。建設費のうち4分の3は、国が管理する福島再生加速化交付金と特別交付税で賄うことができる。まず21年12月には、34億円の交付金が出ることを国が通知した。今後は事業の進捗に応じて、追加の交付申請をしていく見通しだ。

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同村では放射性物質の付着によって、多くの樹木が木材として利用できなくなった。特に外気にさらされてきた樹皮(バーク)の利用が滞り、産業廃棄物の処理業者に持っていくしかなくなった。この産廃処理費用について東電は賠償してきた。
バイオマス発電所の稼働により、こうした賠償費用が実質的に国民の負担へと置き換わることになる

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国の交付金で建てる発電所が東電の収入源となる。しかもその収入はFIT制度により、国民が電気料金の賦課金として支払うものだ。「福島の原発事故の賠償は東電の責務なので、せめて建設費は自己資金で出すべきではないか」(政府関係者)との見方がある。

薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか 2022.10.17 p.019

*FIT = 国の固定価格買い取り制度


ニュースイッチというウェブサイトにFITとFIPの比較が掲載されていました。

FIT(フィードインタリフ)とFIP(フィードインプレミアム)の比較

つくればもうかるFIT終焉…新たな再エネ普及策「FIP」の効果の行方
2022年10月26日 ニュースイッチ


一言で言えば、固定価格から変動価格への移行です。
つまり、市場価格によって上下するということです。
今までは発電業者は企業努力をしなくても固定価格で収入が得られましたが、当たり前のことですが、今後は企業努力が欠かせません。

ただし、「市場価格が基準を下回ると国が補助金(プレミアム)を交付し収入減少を抑える」のでは、補助金を当てにすることになり、以前とあまり変わらないのではないかと勘ぐってしまいます。

FIPの売電価格は火力など他の電源と同じように変動する。対象は一定規模以上の発電設備だ。発電事業者が再生エネ電力を市場(日本卸電力取引所)に売ると、売電価格は市場価格によって決まる。市場価格が高騰していると発電事業者のもうけが増える。逆に市場価格が基準を下回ると国が補助金(プレミアム)を交付し収入減少を抑える。

つくればもうかるFIT終焉…新たな再エネ普及策「FIP」の効果の行方
2022年10月26日 ニュースイッチ



話を戻しますが、バイオマス発電会社を巡る関係省庁や事業者、電力会社、産廃処理業者等の利権構造に、根拠はありませんが、東京五輪汚職事件のような闇はないのか疑心暗鬼になるのは私だけでしょうか?

原発事故で被害を受けた木材の賠償を実質的に代替
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権益を巡り複雑に絡み合っています。責任の所在が曖昧になります。そのツケは国民にしわ寄せが来る可能性が高いです。



CASE 4 北海道 寿都町(注:すっつちょう 藤巻隆)

着地点見えぬ核ごみ問題
静かな漁業の町が分断された

まず、寿都町は北海道のどこに位置するのか確認しておきましょう。
私はこの町の名称と読み方を初めて知りました。当然のこととしてどこにあるのか全く知りませんでした。


寿都町
薄氷のエネルギー この冬を乗り越えられるか
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ここにあったのですね。
寿都町はどんな町なのか見てみましょう。

想望──。札幌市から車で約3時間、北海道西南部の港町・寿都町にある弁慶岬。「だし風」と呼ばれる強い風が吹く岬にそびえ立つ弁慶像の台座に、その2文字が刻まれていた。

日本海を望むこの地には、源義経とその家来の弁慶にまつわる伝説がある。1189年、戦で難を逃れた義経は、この地に一時滞在。「援軍がえぞ地に向かった」との情報を得て、弁慶は毎日岬に立ったが、船影を見ることはついぞなかった──。そんな言い伝えだ。

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義経と弁慶にまつわる伝説がある地でした。真偽の程は分かりませんが、そうしたエピソードは地元民にとっては親近感を抱く話でしょう。

寿都町は漁業が基幹産業です。この町で核ごみの最終処分場の問題が突然浮上したことです。

漁業が基幹産業である人口2700人余りの小さな町で、核ごみの最終処分場の問題が突如浮上したのが2020年8月。同年11月、寿都町と北海道神恵内村で文献調査が始まった。最終処分場の選定は3段階ある。文献調査は第1段階で2年程度とされ、最大20億円の交付金が支給される。第2段階の「概要調査」は4年程度行われ、最大70億円を支給。第3段階の「精密調査」は14年以上かかるとされ、交付金額は未定だ。

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核ごみの最終処分場の選定は3段階あるそうです。
第1段階 文献調査 交付金 最大20億円
第2段階 概要調査 70億円
第3段階 精密調査 金額未定


岸田政権は原発再稼働を進める方向へ転換を図っています。
そうであれば、核ごみの最終処分場の問題は避けて通れません。

岸田政権が原発再稼働を進める方向へ転換を図るなか、原発から出る核ごみをどうするかは喫緊の課題だ。最終処分場のない原発は「トイレのないマンション」ともやゆされる。

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最終処分場とはどのようなものなのかの解説があります。

核ごみは、原発で使い終わった高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料)を再処理する際に残る廃液を、ガラスと溶かし合わせて固めた「ガラス固化体」のこと。最終処分場はそれを地中に埋設する場所だ。NUMOによると、使用済み核燃料は約1万9000トンが全国の原発などで保管されており、ガラス固化体換算で約2万6000本分になる。NUMOは4万本以上を処分できる施設の建設を計画中で、事業費は約4兆円だ。

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核ごみは想像していたものとは全く違いました。廃液のまま密閉容器に入れたものだと思っていました。無知ですね~。

*NUMO(原子力発電環境整備機構)


このウェブサイトには次のように記されています。

地層処分の対象となる放射性廃棄物の最終処分にあたっては、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(以下、「最終処分法」)に基づき、施設建設地選定のため段階的な調査(文献調査、概要調査、精密調査)が必要です。
そのうち、最初に行う文献調査は、自治体の皆さまから応募いただくか、もしくは国からの申し入れを自治体に受諾いただくことで行われます

文献調査のご案内 原子力発電環境整備機構 地域交流部


概要調査まで進むと最大90億円の交付金が支給
●「核のごみ」最終処分場選定までの流れ
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地元の人たちの立場で考えますと、核ごみの最終処分場候補になったのは寝耳に水だったと思います。一番心配なことは、安全性です。放射能汚染に晒されることはないのかという深刻な問題です。

そしてもう一つは、町の風景が変わってしまうのではないかということです。


「寿都町の自然を守りたい」。こう話すのは、寿都町在住の田原誠さんだ。20年、寿都町が文献調査に入ることを知り、21年春に町に戻って反対運動に加わった。54年ぶりに帰ってきた故郷では、離れたときと変わらない風景が迎えてくれた。「漁師の収入も安定しており、人口が自然減となっても町は十分やっていける」。こう断言する。町長の独断専行のやり方に疑問を感じており「ダメなものはダメと言いたい」と憤る。
(中略)
反対する人、賛成する人、言葉をにごす人、何も言わない人……。その人の考えは、目を見れば、何となく分かった。寿都町では静かな分断が起きている──。そう確信した。「小さな町は、核ごみという国に関わる大きな問題を背負わされている」。寿都の海を眺め、そう語る田原さんの目は、深い悲しみをたたえていた。

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深刻な問題ですね。他人事ではありません。


次回は、

分析・予測 編
止まらぬコスト増
日本に打つ手はあるか

PART 1 膨らむエネルギーコスト
産業界を押しつぶす負担増
電力料金の上限見直しが始まる


についてお伝えします。



🔷 編集後記

原発再稼働と、核のごみの最終処分場の決定等はセットで考えなければならないことが良く分かりました。

原発建設の際には、地元に国から莫大な交付金が払われます。
交付金によって地元は潤います。

しかし、原発事故が起こった場合、2011年3月11日に発生した東日本大震災の後に起きた、東京電力福島第1原子力発電所事故を見れば分かりますが、すぐに危険から逃れることはできません。

犠牲になるのは、いつも地方の小さな町の人たちです。
自分の無力さを実感します。



⭐ 私の回想録


⭐ 私のマガジン (2022.10.28現在)






















   


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