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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉 Vol.2】

大人の流儀

 伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

 帯に自筆で「ちゃんとした大人になりたければこの本を読みなさい」と記しています。

 ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。


出典元

『大人の流儀 1』
2011年3月18日第1刷発行
2011年7月14日第11刷発行
講談社


「不安が新しい出口を見つける」から

伊集院 静の言葉 1(4)

 歴史を見ればわかるが、ひとつの国が不況に陥るのは数字ではない。人間がそうさせる。大臣の失言、銀行家の暴言などつまらぬ言葉で大衆は不安を抱き、景気は一気に傾く。
 世のお父さんの飲むビールまで節約じゃおかしい。大人の男が仕事の後にやる一杯をケチってはダメだ。それに何でも安いのがいいという発想も愚かだ。物には適正な値段、つまり価値がある。安いものは結果として物の価値をこわすことになる。

大人の流儀 1 伊集院 静


伊集院 静の言葉 2(5)

 時々、私は考える。
 旅をしていて、いい土地に出逢うと、
___このままここで暮らそうかナ・・・・・・。
 半分冗談で、半分本気で。
 「家族は、仕事はどうするんですか」
 「そんなこと知ったこっちゃないわい」

大人の流儀 1 伊集院 静


伊集院 静の言葉 3(6)

 恋愛小説を二十年振りに書き、本が書店に並んだ。京都が舞台で、時代は五十年近く前である。ほとんど時代小説だ。連載の時から、これは誰も読まんのじゃないか、と不安、、を抱いての執筆だったが、それは今もかわらない。三十年近く前にこれを書こうとした時も同じ感情を抱いた。
 しかし、この不安、、というのが大切ではないのか、と今回思った。企業が新製品を出す時は皆そうだろう。不安は新しい出口を見つけてくれる唯一の感情の在り方かも。
 と書いて、作家がつべこべ理由を言うようじゃお仕舞いだとも思う。今までのように黙って読みなさい、がいいのか。

大人の流儀 1 伊集院 静



✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院静氏の歴史観の一端が示された言葉がありました。
「歴史は繰り返す」(History repeats itself.)という諺がありますが、
全く同じではないにしても、形を変えて繰り返されてきたことを私たちは目の当たりにしてきました。

伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。


<著者略歴 『大人の流儀』から

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。

91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。

作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。



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