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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 Vol.39

大人の流儀

 伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

 帯には「あなたのこころの奥にある勇気と覚悟に出会える。『本物の大人』になりたいあなたへ、」(『続・大人の流儀』)と書かれています。

 ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。



「高収入のスポーツ選手がそんなに偉いか」から

伊集院 静の言葉 1 (115)

 茨城の出で洒落者は昔、早稲田の監督をしていた石井藤吉郎と現解説者の豊田泰光くらいで、他はバンカラ人が多いと思っていたが(失礼)、出処でなく海老沢はお洒落を生きる旨としたのだろう。
 以前、私は大人の男のお洒落は行き着けば、生きる姿勢、姿勢とは人間のたんがなすものだと書いた。彼がまさにそれだ。
 私は時折、海老沢に”マツイのあの文章は誉め過ぎだ。彼のため、、にならない”と言われることがあった。彼には作家の胆があったのだろう。今は富士の裾野に眠る。
 別れの会での、彼の恩師、岡野弘彦先生の挽歌を一首紹介する。
 われよりも早く逝きたる君をく 夜声の蝉の 生き弱るまで
 粋で、いい男から先に逝ってしまう。

大人の流儀 2 伊集院 静                               




「人はサラリーのみに働くにあらず」から

伊集院 静の言葉 2 (116)

 この頃は葬儀に金をかけないようにする家が増えているが、東京、地方都市でもまだまだ派手な葬儀がある。必要以上の葬儀をするのは政治家、成金の企業、博徒くらいで、そこに見栄と、一部には葬儀をひろく人に知らしめる目的があった。
 役者、タレントもどきが葬儀の後で、たとえば女優もどきが、主人とは愛で、絆でとドラマの筋書のようなことを口にするが、馬鹿を抜かせ、と思う。ワイドショーもレポーターが、愛が、絆がすべったころんだと言うが、阿呆を抜かせ、というも思う。
 私は基本的には葬儀は簡素で、人知れず幕を引かせてやるべきだと思う。葬儀の席で必要以上に泣く者を目にすると、何が起こったのだと呆れる。

大人の流儀 2 伊集院 静                               



「人はサラリーのみに働くにあらず」から

伊集院 静の言葉 3 (117)

 きちんとした仕事というものは、何よりもそれが最優先される。仕事とは、大人の男が朝目覚めて、最初に考えるものである。家族のことは二の次が当たり前で、仕事がきちんとできた上で、家族を養え、育てられる。この基本的な認識が今のサラリーマンや公務員に根本から欠けている。サラリーマン、すなわち給与を貰い、その代価として働いているふうにとられる。そろそろこんなおかしな日本語を廃止すべきである。仕事が先にあり、代価はあとから生じる。不景気なら給与は減って当たり前のことで、商家が傾けば、給与も、ボーナスもクソもない。貰って当然とかまえているところに甘さ、愚かさがある。
 いつの世も厳しいのが労働であり、仕事であり、生きるということなのだ。

大人の流儀 2 伊集院 静                               



出典元

『大人の流儀 2』(書籍の表紙は「続・大人の流儀」)
2011年12月12日第1刷発行
講談社



✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。

🔷 「仕事が先にあり、代価はあとから生じる。不景気なら給与は減って当たり前のことで、商家が傾けば、給与も、ボーナスもクソもない。貰って当然とかまえているところに甘さ、愚かさがある」

これは私には実感できる言葉です。

サラリーマン時代、会社の業績が急降下し、給与やボーナスを大幅に減らされた経験があります。

それどころか、別の会社で破綻処理を手伝わされ、1カ月間働いて給与0円ということも、通勤費を含め10万円の支給ということが1年10カ月も続き、未払い給与(通勤費を含む)が数百万円に達したことがありました。

次の投稿に経緯を掲載しています。




🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。


<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。

91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。

作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。







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