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■第13回 就活ルール廃止でも中小が大手に勝てる方法

1 就活ルール廃止は既定路線、中小は今から備えよう

 経団連が新卒採用における就活ルールを廃止する意向を表明しました。

 以前の就職協定の時代まで含めると、実に半世紀以上にわたって多くの大手企業を縛ってきたルールがなくなるわけです。彼らの本音とすれば、「これでようやく堂々と表立って活動できる」といったところでしょうか。

 経済のグローバル化とともに日本に乗り込んできた外資系のコンサルタント会社や金融会社は、自らが課したルールに縛られた国内大手企業を横目に早期から活動し、高待遇も相まって優秀な学生を青田刈りしてきました。大手企業の採用担当者たちは表立って自由に動けず、そんな現状をずっと苦々しく思っていたのです。一度条件の良い他社に内定した学生をひっくり返すのは、大手だからといって容易ではありません。

 もちろん大手企業の担当者たちも指をくわえて見ていたわけではありません。「ルール違反じゃないか」と指摘されたら、「いえいえこれは○○ですから違います」と言い訳できるように注意しながら、解禁前から“地下”で活動してきたのです。日本らしいといえば日本らしい、本音と建前の世界でした。

 地下ルートは、超難関大学のみ、あるいは難関大学まで、そして体育会を通した先輩後輩といった、ごく限られた世界に存在してきました。そして解禁前に学生が「これで内定ですか?」と質問すると、「君も分かっているだろう、まだ内定は出せない、でも大丈夫、安心していいよ。だから他社は断ってきて」と訳の分からない説明をされるのです。担当者にしてみれば、こうした苦労を今後はしなくて済むというわけです。

 2021年春入社からとはいうものの、本丸が明言した以上はすぐにでも実質自由化されるのではないか。新卒も一気に通年採用に変わるのではないかと想像した方も少なくないでしょう。とりわけ毎年努力と工夫を重ねて引き寄せた学生を、最後は大手や人気企業に奪われてきた中小企業のみなさんの中には、「競争がさらに熾烈(しれつ)になる」「もう勝ち目がない」とショックを受けた方も多いのではないでしょうか。

 ところが経団連の意向を聞いて就職活動の早期化、長期化による学業への影響を懸念する大学側に配慮した政府が、「新たなルール策定の議論に着手する」と言い出しました。実態は、とりあえず「2021年春入社までは現行ルールの方向で」という話のようです。混乱を最小限にしたいという配慮はするものの、政府もルール廃止に真っ向から反対する気はないのでしょう。慢性的で深刻化する一方の人手不足による人材流動化、経済のグローバル化などを考えれば、国際的に見て日本独自の就活ルールを維持できるわけもありません。

 想定よりソフトランディングとはなったとしても、「新卒の就活ルール廃止」と、それによる「通年採用化」はもはや既定路線と考えるべきでしょう。

 とりわけ中小企業はお上の議論や結論を待っている場合ではありません。いつ本格廃止、通年化となってもよいように今から準備しておく必要があります。

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