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■第2回 「年下上司、年上部下」問題を解決する3つの提案

1 30年で全ての人にふりかかるまでになった「年下上司、年上部下」問題

 前回からスタートした新シリーズ、「武田斉紀の『組織や仕事のあるある問題、こうして解決』」。第2回のテーマとして取り上げるのは、「年下上司、年上部下」です。ビジネス誌の方に聞いたら、密かに読者の関心の高いテーマなのだとか。

 実力主義が当たり前の会社で育った人からすれば、テーマ自体がナンセンスと思われるかもしれません。外資系企業の日本法人に勤める知人は、上司部下はあるけれど、ふだん互いの年齢を聞くこともないから年下か年上かは知らないと言います。

 はたまた戦後の焼け野原から立ち直り、年功序列と終身雇用に守られながら急成長してきた日本。義務教育では全国民が尊敬語と謙譲語の使い分けを習い、自分より年長者を敬う文化が連綿と受け継がれてきました。

 30年以上前、私は年齢や学歴によらず実力で評価され、勝っても負けてもフェアなのがいいと考えて、日本企業にしては実力主義で知られた会社に入社しました。確か2年目のこと。

 初めて身近に「年下上司、年上部下」の誕生を目にすることになったのです。

 しかも…というのはすでに時代錯誤ですが…「年下女性上司、年上男性部下」の組み合わせでした。男性の方が決して仕事ができなかったわけではなく、それ以上に実績を上げた女性部下が抜てきされた形でした。

 昨日まで後輩というポジションだった彼女は机の島の角席に移り、部下となった彼は彼女の右隣の島の中。現場のリーダーである彼はしょっちゅう彼女に呼ばれては、その都度「はいっ!」と立ち上がり、椅子に座ったままの彼女の隣にかけよって立ったまま指示を仰いでいました。難関大学を卒業してつい先日まで順調に会社生活を送っていた彼自身、こんな日が来るとは想像していなかったことでしょう。

 他社のように年功序列ではなく、実力で評価され「勝っても負けてもフェアなのがいい」と思っていた私ですが、いざ目の前に突き付けられると複雑な気持ちでした。同期の仲間と先輩を気の毒そうに遠巻きに見ながら、酒の席では自分たちも今にそうなるのかもなと話したものです。

 時代は流れ、企業の成長スピードは落ち、少子高齢化も相まって、よほどの急成長企業でもない限りポスト不足が発生し始めました。同期全員を一斉に昇進させるわけにもいかず、かといって若手の優秀な人材も厚遇しないと他社に逃げられてしまう。

 頑固に年功序列を守っていた大手企業でさえも、少しずつ実力主義、成果主義の人事を取り入れざるを得なくなってきています。

 私の周りには、「年下上司、年上部下」が身近で現実のものとなっている人、まだなっていない人。「年下上司、年上部下」はできれば避けたいと思っている人、あまり気にしていない人と、いろいろな状況や気持ちの人がいるように思います。実際はどうなのでしょうか。

 あるアンケート(2016年)によれば、「6割以上(66%)が年下上司の下で働いた経験がある」とのこと。

 つまり3人に2人はすでに経験していて、今後も定年近くまで勤める前提に立てば経験者はどんどん増えていくのでしょう。早々と社長にならない限り、年々遭遇する確率は上がっていくのです。

 「年下上司、年上部下」は、もはや誰もがいつ経験してもおかしくない状況になっているようです。

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