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停滞する社会をブチ抜けるかもしれない「アート思考×弁証法」によるアプローチ【三人寄ればウルトラ文殊の知恵】

もしかしたら、停滞する社会を一気に切り拓くのは「アート思考」と「弁証法」の掛け合わせなんではないだろうかと、そんなコトを考え始めました。

これまでにない「圧倒的ブッ刺さりアイデア」と「ハイパー肚の底からゾクゾクエネルギー」を生み出す可能性がある、その先にあるのは「三人寄ればウルトラ文殊の知恵」です。

ウルトラ文殊・・・、どんな文殊でしょうね?、でもきっとトンでもねぇ文殊ですよ。文殊ってそういう進化するヤツじゃねぇよみたいなツッコミは横に置いておいて、とにかくスンゲぇ知恵を生み出すことができる。フツーに3人集まるパターンとはだいぶ異なる方向に知恵を飛ばすことができるのがアート思考と弁証法の掛け合わせだと思うのです。

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01.アート思考&弁証法の基本のキ


「アート思考」と「弁証法」、どっちも馴染みがない方向けに超スーパーウルトラざっくりな説明を入れておきますね。(そもそもどっちも馴染みがない方はこの記事に興味ないかもしんない)

■アート思考
自分を起点とした思考アプローチ。アーティストの思考プロセスを取り入れるもの。自己・社会に対する問いをたて、自分なりの答えを内発軸に沿って見出そうとする試み。相手を起点とするデザイン思考や市場・社会を起点とする論理思考と対になる概念。(と言われてるが、何だかビミョーな解釈)

■弁証法
ドイツの哲学者ヘーゲルにより体系化された思考アプローチ。対立する(異なる)概念を突き合わせたときに新しい概念を導き出す方法。ある主張(テーゼ)に対し、否定・対立・矛盾する(アンチテーゼ)が現れる、この両者をどちらも否定することなく(足して割るわけ妥協的思考でもなく)両者を高い次元で統合した概念(ジンテーゼ)を生み出す。高次に至るプロセスをアウフヘーベン(止揚)と言う。

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だいぶ乱暴な解説なのでイケてないかもしれませんが、それぞれについて興味のある方は調べてみるとワンサカ記事が出てきますのでそれぞれご覧くだされ。

アート思考自体は昨年2020年が一番盛り上がっていたような気がします。なんだか流行りのビジネス思考法の一環として消費されそうな気がしていて、うーん・・・勿体ないなぁ・・・と思う今日この頃。

とは言えアート思考はデザイン思考のような具体的な方法論ではなく、どちらかと言えばマインドセットに近いモノがあるため、すぐに効果が出るものではないと思っています。そんな状況で「すぐに結果につながらない概念」は消費されがちなのかもしれませんね。

弁証法はすごく昔からある概念。しかし、僕が知ったのは昨年です。リンクにある「直線は最短か」という本が弁証法の入門書で、とても面白い内容でした。実は以前から似たような思考アプローチをしていたものの言語化して的確に使いこなせているわけではなかったので、この本の存在はかなりプラスになりました。

さてさて、この2つの概念を掛け合わせる意味は一体どこにあるのか。掛け合わせると、どんな世界を見ることができるのか。自分が感じている可能性についてツラツラと書き連ねていきたいと思います。



02.アート( I )とデザイン( You )は対立軸なのか


「アート思考」と呼ばれる言葉を使いましたが、実は似た概念は他にも世の中に出てきています。どれも一人の人間の肚に生じる「問い」や「想い」を熱源として、それを表現にアウトプットするものです。


「内発軸」を起点にするアプローチに注目が集まり始めたのは「市場起点の論理思考」と「他者起点のデザイン思考」に対する限界とも言われているようです。

特に事業を進める起業家にとって、変化の激しい現代社会を生き抜くためには、内発軸を持つことが折れずに強い想いを持ち続けていられる。そんな考え方です。

このような流れの中でデザイン思考がアート思考と対立軸的に語られがちなのは「主体の違い」によるものです。

アート思考の主体は「 I (わたし)」であるのに対しデザイン思考の主体は「You(あなた)」です。ついでに言うと論理思考の主体は「They(彼ら)」と言えるでしょう。

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アート思考の主体は「 I (わたし)」でデザイン思考の主体が「You(あなた)」なら、フツーに考えると対立軸となってしまいますね。アート思考とデザイン思考は両立しないと言う結論になってしまうでしょう。

実際には、ビジネスの各段階においてアート思考→デザイン思考→論理思考と順を追うことで成長につなげることができると言われています。だからアート思考とデザイン思考は両立せずとも両方大切だと言うのです。

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この考え方、分からんでもないのですが個人的に不満が残るモノでした。


なぜ I (わたし)とYou(あなた)しか存在しないのか。「We」の概念は存在しないのだろうか、「私たち」はあり得ないのだろうか、自分と他人という切り取り方しかあり得ないのだろうか。

モノゴトを生み出すときに「We(私たち)」による創造は当たり前に存在するはずなのに、一体どこに行ってしまったのだろうか・・・そう感じていたのです。

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アートが I (わたし)、デザインがYou (あなた)で、この両者は対立軸のように扱われる。でも、「We(私たち)」が存在するならば、アート×デザインの同時創造も可能ではないかと思うのです。



03.異なる2つのアート思考をぶつけ合う弁証法アプローチの先に「Weの創造」がある


Weとは「私たち」です。何を当たり前のことを言ってるんだコイツと思われるかもしれませんが、改めて「私たち」について考えてみましょう。

似たような言葉に「みんな」があります。しかし、「みんな」は二つの意味を持ちます。一つは自分を含むみんな、もう一つは自分を含まないみんなです。言うまでもなく「私たち」は自分を含むみんなです。

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「私たち」は私が起点です。同時にそこにいる他の人も起点です。「私たち」と「みんな」、ここに上下関係や優劣は存在しません。そして、「私たち」であることが直球で活きる思考アプローチが弁証法なのです。

再度、弁証法の解説を繰り返しましょう。ある主張(テーゼ)に対し、否定・対立・矛盾する(アンチテーゼ)が現れる、この両者をどちらも否定することなく(足して割るわけでもなく・妥協的な思考でもなく)両者を高い次元で統合した概念(ジンテーゼ)を生み出すアプローチです。

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この図で挙げているテーゼとアンチテーゼを、お互いに内発軸をベースにしたアート思考同士だと考えてみましょう。

アート思考は通常、発する一人のモノとして成立します。しかし、ここにもう一つ自分のアート思考と対立しかねない概念のアート思考をぶつけてみる。このときお互いが潰し合いにならず、妥協にもならず、両者を巻き込んで全く新しい概念を生むことができれば、とてつもないエネルギーを生むのではないでしょうか。

「私の持つアート思考A」と「あなたの持つアート思考B」を掛け合わせた結果、「私たちの持つアート思考C」が生まれるのです。

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「私たちの持つアート思考C」は、決して「私の持つアート思考A」と「あなたの持つアート思考B」の延長線上にあるものではありません。どちらも単独では決して辿り着くことのできなかった概念です。

だから「私の持つアート思考」を育てて「誰かに刺さるデザイン思考」を前提に「社会に届く論理思考」へと繋げるプロセスでは、決して見出すことの出来なかった世界です。

しかし、「私」にとっても「あなた」にとっても「私たちの持つアート思考C」は元々の自分たちが持っていた「私の持つアート思考A」と「あなたの持つアート思考B」を遥かに超える世界の概念です。

両者の内発軸と繋がっていながらも、高次の概念に至っているため爆発的なブっ刺さり感を生むのです。「アート思考」同士をぶつけ合う「弁証法」のアプローチ。ちょっと凄まじいモノがあるかもしれんですよね。

ただ、そう簡単にアウフヘーベン(止揚)には至りません。各々の持つ「アート思考」は、かなり頑なで強固で、ちょっとやそっとじゃ他人の声に耳を貸さないから。



04.アート思考を持った2人だけでは成立しない。アウフヘーベンの仕掛け人が必要になる。


一対一の関係性でアート思考×アート思考のアウフヘーベンを生もうとすると、普通はケンカになります。自分の内発軸とは異なる軸が目の前に現れるわけですからね、そりゃNoを突きつけたくもなります。

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もし一対一の関係性でもジンテーゼを成立させようと思うならば、アート思考とデザイン思考を往復するアプローチが必要になります。

目の前にいる相手に対する深い理解と受容が無ければ相手の意見は単なる対立軸でしかありません。「アート」モードと「デザイン」モードを行き来しながら思考を縦横無尽に飛びかわせる、しかもそれが対話する両者に必要なスタンスです。

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これは現実に実行するのは中々難しい。どうしても「アート」モードか「デザイン」モードのどちらかに思考が引っ張られます。対話の中で相手とのパワーバランスが生まれてしまう。一対一の関係性は対立か妥協を生んで終わってしまうことが多いと感じています。

だから、3人目が必要になるのです。

この3人目はアート思考を持っているわけではありません。「私の持つアート思考A」と「あなたの持つアート思考B」の両方を俯瞰しながら反復横跳びし、「私たちの持つアート思考C」へと導いてくれるアウフヘーベンの仕掛け人です。

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3人目という立場であるからこそ、両者のアート思考を俯瞰してみることができ、その両者を巻き込んだ高次のアイデアを導くことができるのです。

これは決して妥協して間を取るわけではありません。だから実践するのは「仲介」でも「調整」でもありません。両者の内発エネルギーを掛け合わせるからこそ生み出せる世界に「気づく」能力が必要になります。

異なる2 つの分野を掛け合わせ、新しい概念を生むことを「創発」とも呼びます。

さながらこの3人目は「創発コーディネーター」とか言えるのかもしれませんね。あるいはアウフヘーベンの日本語訳である止揚を使って「止揚家」とでも表現してみましょうか。

3人目がいるからこそ、アート思考Aとアート思考Bは新しいアート思考Cを見ることができた。アート思考Cは元のABと比べても圧倒的な腹落ち感です。断然コッチの方がイイじゃん!なワケです。

1人の内発軸をベースにしたアート思考よりも、Weによって生み出されたアート思考の方が力強く・しなやかさもある。決して内発の方向から逸れたものではなく内発の延長線上にありながら、自分だけでは辿り着けなかった世界です。

こんな世界が見れるんじゃないかと思うから、アート思考×弁証法に可能性を感じるのです。



05.どんな三人が集まるか【三人寄ればウルトラ文殊の知恵】


この三人の組み合わせは「2人のアート思考家」と「1人の創発コーディネーター」によるものです。昔から「三人寄れば文殊の知恵」と言いますが、この三人の組み方にも特徴が現れますよね。

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どんな三人が集まるかによって、生まれてくる知恵の方向性も異なります。

よく聞くモノだとテック系スタートアップの初期の人員は「起業家」「デザイナー」「エンジニア」の三人が良いと言ったりしますよね。これは現代のIT社会でスピーディーかつ最小のスケールでコトを起こすために必要な能力を集めた三人です。必然的に「事業を起こす」に沿った知恵の生まれ方となります。

他にもウォルトディズニーの「内なる3つの人格」を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。彼は「夢想家」「実務家」「批評家」の3つの人格を使い分けながらビジネスを進めていた、実際にこの人格になるためにそれぞれの会議室も用意していたと聞いたことがあります。コレはより面白いアイデアを生み出しながら現実に適切に落とし込んでいくことも両輪で進める三人の組み合わせです。

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対して今回の記事で紹介した「2人のアート思考家」と「1人の創発コーディネーター」が生むものは、「Weの熱源×爆発的な突破策」と言えるでしょう。

3人で着火し、3人で燃え盛る。1人の内発軸を超えた先にあるWeの世界です。だからこの三人が生む知恵をウルトラ文殊の知恵と表現したのです。

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この現象を引き起こす創発コーディネーターの持つ意味はめちゃくちゃ大きい。むしろ、これからの世の中でガンガン増えてほしい人材でもあります。

これまでは異なる概念同士の間に入る人は「調整役」や「仲介役」でした。この役割を持った人が存在することも重要ですが、調整や仲介の結果生まれるものはAとBを足したものか、どちらかの妥協を生んだものです。

同じように異なる概念同士の間に入る場合でも、調整役と創発コーディネーターに求められる資質は根本的に異なります。最も必要な能力は「創造性」でしょう。

それもテーゼとアンチテーゼの双方を俯瞰して見ながら、両者を巻き込んだ全く新しい概念を提示する創造性です。前回の記事で提唱した「三角形クリエイティブ」とガッツリ繋がってくる概念です。

と、そんな可能性をアート思考×弁証法に見出しました。

めちゃくちゃ概念ベースの話しだったので「なんのこっちゃ?」になるかもしれません。

でも、もしかしたら皆さん既に人生の中で体感しているモノかもしれませんよ?、自分の想いと相手の想いがぶつかり合った結果、「だったらこんな方法があるんじゃない?」と全く新しい世界に至った経験ある方もいるんじゃないですかね。「想い」と呼ぶほどのモノでなくても「アイデア」といったモノでも似た現象は起こります。

可能性があるから、意識して使っていきたいと思うのです。で、もし意識して使ってくれる人が増えてきたら、すんごい未来の見れる可能性がもっともっと広がると思うのです。

ときに創発コーディネーターとして、ときにアート思考の実践者として、実験を繰り返していきましょうよ。

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