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これまでに発表した軍事学の翻訳資料の紹介

これまでに出してきた軍事学の翻訳資料をこの記事でまとめておこうと思います。もし興味がある方は一度Amazonでご確認ください。

ナポレオンの軍事箴言集

初めて電子書籍を出すと決めたときから、『ナポレオンの軍事箴言集』にすることは決めていました。ナポレオン・ボナパルトは、自身の軍事思想をまとめた著作を執筆しようとはしていたようですが、結局完成させることができずじまいでした。そのため、死後に研究者が軍事学を研究する上で役に立ちそうなナポレオンの著述をまとめ、それが出版されています。

自分にそれなりの軍事学の知識があると思っていたので、作業に取り掛かることにしましたが、実際には解説を作る過程で相当の勉強を余儀なくされることになり、翻訳の難しさを痛感した一冊です。今でもこのときの勉強が自分の軍事学に対する理解の基礎となっています。

戦争術の大原則

カール・フォン・クラウゼヴィッツは19世紀の軍事学に転換点をもたらした軍人と位置付けられていますが、それは後期のクラウゼヴィッツが書き残した『戦争論』の業績によるところが大きいといえます。前期のクラウゼヴィッツの学説に関しては、自身が軍事学を進講していたプロイセンの王太子に別れ際に書き送った書簡でよくまとめられています。それを訳出したのが『戦争術の大原則』です。

戦略と戦術の基礎的な原則を説明する内容ですが、いわゆる戦争の「摩擦」に関する説明は彼独自のものであり、『戦争論』にも受け継がれた学説です。

愚者の渡しの守り

ボーア戦争の経験を踏まえてイギリスの陸軍軍人スウィントンが出版した小説です。いちおう小説ではありますが、小部隊戦術を学ぶための教材のような内容の小説であり、特に渡渉点を防御するための歩兵小隊の運用がテーマとなっています。とても好評だったこともあり、続編として攻撃する立場から別のオリジナルな小説『隊長コップは三度死ぬ』を書いてみました。自分で書いてみて本当に大変だったので、スウィントンがいかに優れた書き手だったのかがよく分かりました。ある種の推理小説の書き手のような才能の持ち主だったのだと思います。

ゲリラ戦の科学

第一次世界大戦でオスマン帝国を内部から攪乱するため、アラブ人の反乱を支援していたロレンスが非正規戦争を遂行する際に守るべき原則を提示した論稿の翻訳です。ゲリラ戦に興味がある方であれば、一度は聞いたことがある著作だと思いますが、内容はかなり定説に挑戦する内容で、特に毛沢東の軍事思想とは対照的です。


noteの方で出している翻訳資料もまとめておきます。

遊撃戦の規則

『遊撃戦の規則(Rules of Ranging)』(1757)は、あまり知られていないかもしれませんが、イギリスの軍人ロバート・ロジャーズ(Robert Rogers)少佐が書き残した遊撃戦の教範です。特殊作戦の領域では、古典的な著作として位置づけられており、この時期から小部隊戦術が発達していたことがwかる興味深い資料です。

中隊将校のための100のヒント

ジョン・モナッシュは第一次世界大戦で活躍したオーストラリア陸軍の軍人です。『中隊将校のための100のヒント』はANZACの第4歩兵旅団で教育訓練で使われた資料であり、1914年に戦地に赴く直前に書かれたものです。ほとんど一から部隊を新たに編成する場合、いかに効率よく教育訓練を行うべきかについて示唆に富む記述を残しています。

「諸兵科連合とは何か」

1984年にアメリカ陸軍のジョナサン・ハウスが残した著作『諸兵科連合戦に向けて(Toward Combined Arms Warfare)』(1984)の序論を訳出した資料です。第一次世界大戦以降に諸兵科連合が小単位の部隊でも必要となり、戦術のあり方は大きく変わりました。そのことを理解する上でよい資料だと思います。

「陸軍大学校」

イギリスのジャーナリストで、オックスフォード大学の軍事史教授になったスペンサー・ウィルキンソンは『軍隊の頭脳(The Brain of an Army)』(初版1890;改定版1895)でプロイセンの参謀本部の効率性を詳細に検討しているのですが、その効率性の秘訣として優れた教育制度が整備されていることを指摘しています。ウィルキンソンの陸軍大学校に関する記述を訳出しています。

「集中の原則」

イギリスの技術者フレデリック・ランチェスターは1916年に出版した著作『戦争における航空機(Aircraft in Warfare)』で、戦闘過程を定式化する損耗方程式を提案したことで知られています。これがランチェスターの法則ですが、それがどのような前提に基づく軍事モデルであるかについては、必ずしも詳細に理解されていないと思うので、彼自身の記述を訳出しています。

「ステップにおける戦闘」

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、軍事地理学に関する研究成果を紹介するために作成した翻訳資料です。第二次世界大戦でウクライナにいたドイツ軍の将兵の視点から、ウクライナの地理的特性が説明されています。

まだ他にもありますが、随時追加していきます。今後も引き続きよろしくお願いいたします。

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