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論文紹介 社会経済状況によってポピュリズムの形態には違いが生まれる

ポピュリズム(populism)は特権的なエリートと一般の民衆を明確に区別し、自らを民衆の味方と宣伝しながら運動を展開する政治的手法です。ポピュリズムの政党あるいは政治団体の主張の内容には地域によってかなりの違いがあることも知られており、特に社会状況に強く影響を受けていると考えられています。

研究者のKenneth Robertsは同じヨーロッパ地域に限定してみても、イタリアやギリシャのような南ヨーロッパと、ハンガリーやポーランドのような東ヨーロッパとでは、ポピュリズムの形態に違いがあると報告しました。ラテンアメリカにおけるポピュリズムは南ヨーロッパと形態が類似していることも指摘されており、社会経済的状況の違いが差異を生んだのではないかと分析しています。

Roberts, Kenneth M. 2019. “Bipolar Disorders: Varieties of Capitalism and Populist Out-Flanking on the Left and Right.” Polity 51 (4): 641–653, Doi: 10.1086/705377

ポピュリズムはエリートを敵視する民衆を組織化することを目指す政治運動ですが、それは右派の立場をとることもあれば、左派の立場をとることもあり、そのどちらでもない場合さえあります。

例えば、イタリアの五つ星政党はポピュリズム政党ですが、伝統的な意味での右派/左派で区別ができない折衷的な立場を採用しています。アルゼンチンのペロニズム(Peronism)もポピュリズムの典型とされていますが、これも伝統的な右派/左派のどちらにも位置づけることができません。アメリカのティーパーティ運動のように右派的立場を採用するポピュリズムの運動もあり、移民の排斥や人種による隔離を支持することもありますが、スペインのポデモスのように左派に近いポピュリズムは格差の是正や低所得者に対する再分配を支持します。

このような違いが生じた原因について著者は未だ仮説の域を出ないものの、その国の社会経済的構造に由来する可能性が高いという見解を示しています。左派的なポピュリズムが台頭しているのは、南ヨーロッパやラテンアメリカであることは先ほど述べましたが、これらの地域の国々では正規労働者と非正規労働者との間で雇用の安定性や所得の水準で深刻な格差が発生していることが研究者によって指摘されてきました。

この経済的に困窮した非正規労働者が支持基盤であるために、南ヨーロッパやラテンアメリカのポピュリズムは経済的争点に重点を置いた戦略を採用していると考えることができます。しかし、東ヨーロッパの国々では、このような雇用形態による不平等が拡大しておらず、社会福祉制度によって幅広い再分配が行われています。このため、移民がその国で社会福祉の恩恵を受けることに反対していると理解することができます。

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