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【大牟田の高齢者の棲む家で】

目の醒めるような青空。大牟田の空は広くて蒼い。
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植田尚子さんの経営されるグループホーム「蒼」にお邪魔した。
まさに今日の空にぴったりの名前。
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昨年の水害では、目の前の小さな水路が溢れて、居室のすぐ下まで水が迫ったそうだ。
12名の入居者の方々が、あっという間に嵩を増す大水の中で、声を掛け合って、心配気に外を観ていたことを思うと、それを支える植田さんたちの命を守る責任感と緊張感が目に浮かぶ。
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そもそも、「認知症」の世界では全国的に有名な大牟田市。
認知症模擬訓練など、僕も厚労省時代に同僚と視察に訪れたことがある。
今では、僕の厚労省の後輩 桝井 千裕 さんからも「九州の母」と慕われる尚子さん。
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そもそも、尚子さんは、専業主婦から、民生委員、宅老所を見て回る中で、思い立って介護施設の創設をした。あれこれ考えず、「救命胴衣を着けずにドボンと水に飛び込んだ」みたいに、始めたという。
この直感的で、使命感的な、インスピレーションで、新たな事業に飛び込む潔さは素敵だと思う。共感する。
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そのきっかけは、(当時の)高齢者介護の現場。
・ベッドに結びつけられて拘束されていた高齢者
・男女問わず、黙々と流れ作業で入浴させられていた高齢者
この2つ。
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この2つを決してしない場所、そして「美味しいものを思いきり食べてもらえる場所」。
この実現のために事業をスタートした。
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今や、その思いをカタチにしたグループホーム、というだけでなく、
日本の高齢者の雇用の場ベスト100に選定されるほど、新しい風景を創り出した。
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定年なし。
9割以上のスタッフが55歳以上。
「孫に小遣いを自由に渡したい」という思いに応える職場づくりも実現。
シニアだからこそ気づけるきめ細やかさ、に助けられることが多いそうだ。
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シニアの方が気持ちよく働けるには、「好きな時に来れるだけ、来てくれればいいですよ」という
”刻み時間”の勤務シフトとマネジメント、人間関係の整理、が大事。
尚子さんは、そのあたりも、試行錯誤しながら、そのしなやかな手捌きで整理されているようだ。
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ただ、今の介護保険制度を思うと、
もっと、規模の違いや経営状況の違いを踏まえた決め細かな人員配置基準や報酬設定があっていいのに、
と提言される。
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介護保険の保険者=「自治体」が、単に国並びでなくて、独自の創意工夫でもう少しやれるはずなのに、
市としての”思い”を実現するような制度運用があってもいいのに、と。
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大牟田は35.1%の高齢化率。全国平均を8%以上上回る「高齢化先進地」でもある。
新しい高齢者の働き方、癒し方、過ごし方、いろんなモデルをつくる土壌がここにはある。
そこにチャレンジする植田尚子さんのような方もおられる。
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新しい「長寿の風景」を、大牟田から紡ぎ出せるか。大事な、挑戦だ。

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