【映画レビュー】未曾有の破産まで一週間 〜映画「国家が破産する日」〜

どうもこんにちは。先日「これから映画の紹介などやっていくのでよろしくお願いします」と書きましたが、いざ書こうとするとどういうものから書いていけばいいか悩みました。重いといったらそれまでかもしれませんが、この作品をチョイスしました。

今回ご紹介する作品は、2018年公開の韓国映画、「国家が破産する日(原題:국가부도의 날(国家不渡りの日))」です。

画像1

韓国映画は、昔は一般的に「冬ソナ」をはじめとする韓流ドラマと同じようなイメージが自分や周りにあったりしましたが、最近「パラサイト」がパルムドールを取ったように、その構成や演技力、幅広いジャンルでのクオリティの高さが改めて注目されています。自分も何本か観ましたが、認識を改めざるを得ないほど圧巻でした。(語彙力)

以下ネタバレ注意。

舞台は1990年代後半の韓国。日本の高度経済成長〜バブル期のように、当時の韓国は新興国として好景気に沸き、香港、台湾、シンガポールと並び「アジアの四小龍」と呼ばれていました。

1996年には経済先進国の集まりである「OECD」に加盟し、当時の世論調査では国民の8割が自分を中間層と考えていました。そこまで、当時の風潮として将来を楽観視している人たちが多かったのです。


あの事件が起こるまではー。


1997年。韓国銀行(日本で言う日本銀行)で務める「通貨対策チーム」のハン・シヒョンは、近頃起こる中小企業の倒産に違和感を感じ、近いうちに起こる通貨危機を予測します。

早速政府の担当者にかけあうも…当時大統領の息子が権力濫用で不正した事件があり、大統領府はその対応に追われていました。ようやく非公開で対策チームを結成するも、皆対岸の火事のような反応。

「経済先進国の仲間入りを果たしたばかりだというのに、その信用が崩れるようなことがあるのか?」

懐疑的な反応の一同に対し、ハンは衝撃の予測を突き付けます。国家破産までのタイムリミットは、僅か「1週間」だったのです。


ちょうど同じ頃、金融コンサルタントとして働いていたユン・ジョンハクも、取引先の外資からの電話や、偶然耳にしたラジオ番組での投書などから​独自に危機を察知していました。

彼は早速会社を辞職し、お得意先を集めて投資を募ります。お得意先は皆、富裕層やその知り合いなど。しかし、ほとんどの人たちは「まさか国が破産するはずもない」と取り合ってくれません。話を信じてくれたのは中年の紳士とチャラそうな青年だけでした。

ジョンハクは凹むことなく、半ばギャンブルまがいの投資に打って出ます。

一方、ソウルの小さな町工場。社長のガプスは、ソウルの有名百貨店から大量の受注を受け、「現金より早い」と口車に乗せられ、約束手形で引き受けてしまいます。それは万が一、百貨店が倒産したときにはその代金を回収できず、材料業者に支払う代金のあてが無くなることを意味していました。

しかし、経済に疎いガプスは「経済成長している」と報道するテレビなどの世相を信じてしまう人でした。

ハンの訴えも虚しく、政府は「無用の混乱を避ける為」と状況をひた隠しにします。

運命の一週間後。果たして、通貨危機が韓国で本格的に発生。国内の銀行や金融機関は人々が殺到し大混乱に陥ります。

焦るハン。戸惑うガプス。大博打に勝ったユン。

カメラは三人の反応を映し出します。

それぞれの思惑が交錯するのをよそに、政府担当者らはIMF(国際通貨基金)からの支援を画策。

しかしそれは、IMFからの支援だけでなく、内政干渉同然の要求も呑まなければならなくなるということでした。

ハンは再びその動きに抗おうとするものの、エリート次官のパクらの陰謀により決定されてしまう事態に。

果たして、専務理事が訪韓し、過酷な条件を飲まされてしまいます。

彼らの運命はどうなるのか。誰が生き残るのかー。


という形で映画は終わりへ向かっていきます。

国家の中枢で、国民の知らない間に国が潰れる、という衝撃の実話でした。

中盤からは、パニックとなり慌てふためく民衆の反応、登場人物たちの対比、密かに自分たちへと利権を誘導しようとする輩が淡々と映し出されていき、見ている自分も引き込まれます。

個人的には、ハンと対立するパク次官がとても曲者で本当に憎たらしい演技が印象的でした。

重い作品ですし、実話という点が恐ろしいですが、我々日本人からしてみても、バブル崩壊後「失われた30年」と呼ばれた閉塞感が続いているのは確かですし、今年のコロナ禍や、安倍総理の辞任など一連のことを見ても、他人事ではないと思います。           

だからこそ、この作品は大勢の人に見てもらうべきものです。