親子マラソン

昨年の10月横浜マラソンを走った後、子供のマラソン熱が高まっていた。元々走るのは好きな子供なので、父親が何かで「勝った」のが嬉しいらしい。ちなみにマラソンに勝ちも負けもないので、完走したことを「勝った」と表現するようにしている。
本人もマラソンを走ってみたい、と言っている。未就学児で走る大会なんであるのだろうか?と調べてみると、、、あった。親子で1.2km走るマラソン大会。しかも、1月と比較的近く家から30分程度で行ける場所でやっている。
息子に話すとやりたい!とのことだったので申し込んでみた。

***

そして、本番が近づいた頃。
息子のマラソン熱は冷め切っていた。絵に描いたような手の平返しだった。
「えー、行きたくない」と拒否。君が行きたいと言ったから申し込んだしお金も払ってしまったんだから行くように、と言っても気のない返事。今朝は少し咳が出ると「行くとお咳でちゃうかも」と言い出す。言い訳の賢さに少し感心する。
さておき、熱も出ていないし咳もさほどひどくなさそうなので、息子を引きずり会場へ向かう。やる気がなさそうだが、「メダルもらえるかな?」と繰り返している。走るのは興味は出ないがメダルは欲しいらしい。ちなみに開催概要には参加賞は「タオル」と書かれている。やや心配。

会場につくと、すでに多くのランナーと家族連れで賑わっていた。
サングラスをかけ颯爽と走るランナーの横で、上から下までピンクで揃えた女性のランナーが子供にゼッケンをつけている。横の海岸に停泊する船から汽笛の音が響き渡り、息子が「声が大きいね」と呟く。肌寒いが、雨が降る様子はない。ランニングには悪くない気候だ。
受付でゼッケンを受け取る。そして、ゼッケン安全ピンで子供につけ終わると、急に顔が輝いた。
突然、無意味に走り出し、目の届かないところに行きそうになり私を慌てさせる。仮面ライダーの変身ポーズを繰り返し、ゲラゲラ笑う。

ああ、ゼッケンが嬉しいんだ。
ゼッケンをつけるのは、はじめて。しかも、大人と一緒。それは嬉しい、よな。
そのままレース開始まで、大きな音楽に合わせて謎の踊りを披露したり、子供は上機嫌だった。
手の平は、こうして、再び返された。

スタートラインにつき、10からカウントダウンが始まる。周りの大人も子供もカウントを始め、息子も5ぐらいから数え始める。
レーススタート。
息子は、ちょっとびっくりするぐらい、頑張った。
まず、一度も歩かなかった。1.2km走り続けた経験はないだろうに、全く止まらなかった。
はじめての経験だからだんだんスピードは鈍くなる。一人で走っても、父親の手を取るようになる。
でも、折り返しのたび、手を振り払いまたスピードを上げる。何人かを抜く。疲れてスピードが落ち、父親の手を取る。それでも、次の折り返しが来るとまたスピードをあげ駆け出していく。
後半は息も荒くなりスピードも落ちていたが、それでも足を止めようとしなかった。最後の折り返し地点でも、私の手を払い走り出していく。

大したもんだ。
手を払い駆け出す息子の背中を見て、素直に感心した。

幸いなことに完走のメダルも貰えた。レース後、給水所でいつも飲めないアクエリアスも飲めた。息子はかなり楽しめたのか、帰り道も上機嫌だった。

その後、息子は車に乗ってチャイルドシートで揺られすぐに眠った。
深い熟睡だった。

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