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【特選映画】映画『タイタニック』の裏で公開されていた曲者映画たち

映画『タイタニック』は、20世紀最大のスペクタクル超大作で、見終わった後の疲労感は、今までで一番かと思われるぐらいの凄い作品でした。しかも、まだシネコンが主流ではなく、またネット予約が出来ない時代だったので、前年の『もののけ姫』を越える大行列ができていて、見る前から大変だったのを覚えています。余りにも並んでいるので、数回、諦めて他の映画を見た記憶があります。そこで、1997年の年末に公開された映画『タイタニック』と同時期(1998年1月~3月)に日本で公開されていた印象に残っている隠れた傑作映画をいくつかあげたいと思います。

ジョン・ウー監督『フェイス・オフ』

  この作品は、『M:I2』『レッドクリフ』で有名なジョン・ウー監督のハリウッド進出作で、興行的にも成功を収めています。内容としては、天敵同士の顔が入れ替わってしまうことで、壮絶なバトルが繰り広げられるというハリウッド映画らしい派手なアクション映画ですが、『男たちの挽歌』など香港ノワールの旗手として名を馳せたジョン・ウー監督らしく、人間ドラマとしても充分楽しめる作品です。ただ、どうしても、まず突っ込みたくなるのが、ジョン・トラボルタとニコラス・ケイジの顔が入れ替わるという設定です。全く顔の骨格が異なるのに何でこの組み合わせにしたのかという純粋な疑問と、難易度が高過ぎじゃないかというツッコミどころから逆に気になってしまい見てしまった映画です。ただ、見始めると、顔が入れ替わる理由も強引であるにも関わらず、二人の俳優が元々持っているキャラクターの魅力だけでなく、かなりの熱演ぶりで、また、ストーリーのテンポもすごく速く、なおかつ、互いの家族も巻き込んでストーリーが展開されるために、思った以上に感情移入をさせてくることから、顔の設定は全く気になりません。見終わった後には、『タイタニック』が見れなかったのを忘れてしまうぐらい満足度の高い作品です。

デヴィッド・フィンチャー監督 『ゲーム』


  最新作の『Mank』も凄く拘りのある渋い名作でしたが、傑作が多いデヴィッド・フィンチャー監督作品群の中で、この『ゲーム』は、『セブン』と『ファイト・クラブ』の間の作品だったゆえに、少し忘れられている作品です。渋いマイケル・ダグラスの熱演と大掛かりな舞台装置で、最後のオチまで、緊迫感が持続する作品です。ラストの派手さやオチも類似している『ファイト・クラブ』同様に、内面の変化を映画という舞台装置を使って最大限に表現している傑作と言って良いと思います。『ファイト・クラブ』の方が、全盛期のブラッド・ピットのインパクトが強すぎたのかもしれませんが、『ゲーム』むもかなりの力作です。

今敏監督『パーフェクトブルー』

 『パプリカ』や『千年女優』の奇才、今敏監督の原点とも言えるサイコスリラーのアニメーション映画『パーフェクトブルー』もこの時期に、公開されています。アイドル女優の主人公の内面が崩壊していく過程が描かれていて、『妄想代理人』同様全体的に暗く、他の映画作品のような派手さは、ありませんが今敏監督の要素が凝縮された作品です。この作品は、特にダーレン・アロノフスキー監督に影響を与えたのが有名で、『レクイエム・フォー・ドリーム』でオマージュされており、また『ブラック・スワン』に大きな影響を与えているのではないかと言われています。

ガス・ヴァン・サント監督『グッド・ウィル・ハンティング』

 この作品も、デヴィッド・フィンチャー監督同様に多種多様な傑作映画の多いガス・ヴァン・サント監督の中では、少し素朴な作品になりますが、ロビン・ウィリアムとマッド・デイモンの自然な落ち着いた演技が見れる良作です。この作品は、ミラマックスの功績の1つに挙げられると思いますが、シルベスター・スタローンと同様に、マッド・デイモンとベン・アフレックの脚本が採用され、ハリウッドスターになるきっかけとなった作品です。当時、ミラマックス全盛期だったのもあり、本作は、アカデミー賞助演男優賞、脚本賞を受賞しています。製作者のスキャンダルで本作の価値に少し影を落としているのも事実ですが、ただ、実際、ハーバード出身だったマット・デイモンの脚本が純粋によく、ガス・ヴァン・サント監督の作品の中でも、特に好きな作品のひとつで、この作品を見るたびに、ベン・アフレックだけではなく、マット・デイモンの監督作品も見てみたいなと思わせる作品です。ガス・ヴァン・サント監督とマッド・デイモンは、『プロミスト・ランド』で再タッグを組んでいます。

その他にも、リュック・ベッソン製作・脚本 の『TAXi』もこの時期に公開されています。『グラン・ブルー』や『ニキータ』、『レオン』の監督作とは異なり、フランス映画でも、こんな面白いアクション映画が出来るんだと驚かされました。また、ギレルモ・デル・トロの『ミミック』も、特に、視覚のインパクトが強すぎて、印象に残っています。


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