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2021年11月3日

1日1話、実話怪談お届け中!

【今日は何の日?】11月3日:ハンカチーフの日

「国内のハンカチはすべて正方形にするように」

フランスルイ16世の妃・マリー・アントワネットが、夫のルイ16世にそんなおふれを出させたことがあるはご存じですか?日本ハンカチーフ協会はこのエピソードにちなみ、マリー・アントワネットの誕生日に近い日本の祝日・11月3日をハンカチーフの記念日をとして制定いたしました。

さて、今日の一話は?

「ホーム」

 林さんは会社からの帰り道に、駅のホームで男に声を掛けられた。
「一緒にどうですか?」
 飲み屋への誘いかとも思ったが、面識もないので断った。
「いやいや、そう言わずに」
 だが、しつこく誘ってくる。
 電車がホームに入ってきた。
「……ではお先に」
 男は林さんに会釈すると、入ってくる列車に飛び込んだ。列車に直撃した男の頭が、赤い霧を吹き出しながら飛び散った。
 声を上げたとき、男は消えていた。

* * *

 その日は仕事の関係か体調のせいか、随分疲れていた。普段から人いきれが苦手な五味さんは、混雑を避けてわざと階段から遠い車両に乗る。混雑がまだマシだからだ。別に後は家に帰るだけなのだから急ぐ必要もない。
 階段を目指して人の波がゆるゆると流れていく。その後をのんびり付いていく。
 すると、人ごみの間を縫うように、一人の青年が人の波を逆走してきた。人を掻き分けるというよりは、すり抜けるようにして走っている。
 青年は焦っている様子だが、列車は暫く来ないはずだ。急ぐ必要はないだろうに。
 五味さんは横を走っていく青年を一瞥すると、そのままエスカレーターの列に並んだ。
「落としましたよ」
 後ろから女性に声を掛けられた。振り返ると、中年の女性が五味さんのハンカチを差し出していた。ポケットから定期を出そうとして落としたようだ。礼を言って受け取る。
 そのとき、視界に件の青年が入り込んだ。青年はホームの端まで勢い良く走っていき、そのまま何もない線路に飛び込んで消えた。

――「ホーム」神沼三平太『恐怖箱 百舌』より

☜2021年11月2日 ◆ 2021年11月4日☞

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