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【第12話】強烈にアツい真夏の火葬場! その過酷さを元職員が激白!【下駄華緒の弔い人奇譚】


―第12話―

最近では昼の太陽の日差しもそろそろ暖かくなってきたかなぁと思います。肌寒かった日々は終わりを告げ、夏に向かっているのを実感します。

が、火葬場の夏は物凄く大変です。
何が大変かというとその「暑さ」です。もしかすると「熱さ」という表現の方が合っているかもしれません。どれくらいかというと、四季に関係なく常に職員の熱中症には気をつけないといけないほどです。しかも必ずと言っていいほど全国の火葬場で職員の熱中症の報告が毎年夏になると急増します。

実際、真夏の火葬場での火葬業務は大変でした。
まず、実際に火葬を行う炉裏は火葬中の炎の熱で空間全体がムゥ! っと熱がこもっています。当然、窓がある火葬場なら窓を開けるし、スポットクーラーと呼ばれる業務用の装置もつけますが全く追いつきません。ずっと全身からダラダラと汗が吹き出します。だって、相手は勢いよく吹き出す灼熱の炎ですからね。
なので職員も当然ある程度様々なグッズを持参して予防をします。が、ちっぽけな予防なんてなんの役にも立ちません。最終的にはタオルをバケツに入れた氷水に浸しそれを首に巻いて火葬業務に取り組むのですがものの数分も経つと首に巻かれたタオルが生暖かくなっています。もはや濡れたタオルもこれは汗なのか元々氷水なのか…とわからなくなります。

そして火葬が終わると汗を拭いて、次はお骨あげをする事もあります。
顔も洗ってサッパリと一見爽やかそうに見えますが、やっぱり身体の中にまだ熱が篭ってたんでしょうね。
お骨あげ中に火葬台に汗が一滴、ポトリと落ちた事がありました。そのときに「ジュッ」っと音がしたんです…。台も熱かったですからね。
物凄く気まずかったんですが、あの時は遺族さんに「大変ですねぇ」と言っていただいたのが唯一の救いでした。

著者紹介

下駄華緒 geta hanao

2018年、バンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。前職の火葬場職員、葬儀屋の経験を生かし怪談師としても全国を駆け回る。怪談最恐戦2019怪談最恐位。