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●オリムピックこぼれ話●~その壱:1964年10月11日・毎日新聞~

北京冬季オリンピックが始まったが、オリンピック自体に対するこぼれ話ではなく、ネットオークションで手に入れた1964年に東京オリンピックが開催された頃の新聞記事を材料に、当時の出来事について振り返ってみたい。

★1964年10月10日…シンガポールのリー・クアンユー首相が刺される?
シンガポールがマレーシアから独立する前年であり、政治情勢も穏やかとは言えない時期であるが、他の新聞でも同様の出来事が取り上げられていた。しかし、真相は分からず、他の新聞では首相は無事だったという記事も載っていた。
この翌年、1965年8月9日のシンガポールの独立の際、リー・クアンユー首相は次のように国民に語りかけた。
「私にとって、今は苦渋の時です。生涯、私は二つの領域の合併と統一を信じてきました。私リー・クアンユーは、自由と正義の原則、多くの人々の福祉と幸福の探求、平等な社会を築くことに基づき、本日1965年8月9日に、シンガポールが永久に主権民主主義、ならびに独立国家であることを宣言いたします。」

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★1964年10月9日…南ベトナム首相、独力で爆撃可能
ベトナムは1954年以来、南北の対立が激化していた。そして、アメリカの南ベトナムへの支援が進み、東京オリンピック開催の2カ月前には、北ベトナムのトンキン湾を爆撃している。
この翌年、1965年2月からはアメリカの北爆が積極的に行われ、「ベトナム戦争」が本格化していった。そして、アメリカを中心として反戦運動も高まりを見せ、「ヒッピー」という文化が若者に浸透していく。
そして1969年にジョン・レノンは「Give Peace a Chance」という曲をリリースし、反戦・平和を訴えたのである。

「Give Peace a Chance」
Ev'rybody's talking about
Bagism, Shagism, Dragism, Madism, Ragism, Tagism
This-ism, that-ism, is-m, is-m, is-m.
All we are saying is give peace a chance
All we are saying is give peace a chance
みんなが喋っているのはバギズム、シャギズム、ドラッギズム、マディズム、ラギズム、タギズム
何とかイズム かんとかイズム イズム イズム イズムばっかしさ
だけど 僕らが言っているのは “平和を我等に” ただこれだけさ
だけど 僕らが言っているのは “平和を我等に” ただこれだけさ

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★1964年10月…農薬散布、注意して
農業で使用されている農薬が人体に悪影響を及ぼすということで、農薬散布が行われている場所の近くを通る人に対して注意喚起をしている。日本では1950年代半ばから、工業や農業において使用される化学物質による公害病が社会問題化し始めていった。世界でも1962年にレイチェル・カーソンが出版した『沈黙の春』によって、化学物質が生態系に及ぼす悪影響が指摘され、国内も国際社会も経済活動と環境の関係性を無視できなくなっていった。東京オリンピックが行われる1964年には、厚生省に公害課が設置され、1967年には公害対策基本法が制定されることになる。その後も1970年にはいわゆる公害国会で14本の公害関係法案が可決され、1971年の環境庁設置へとつながっていく。国際社会でも1972年にはストックホルムで国連人間環境会議が開かれ、「Only One Earth(かけがえのない地球)」というスローガンが掲げられた。

『沈黙の春』(1962年、レイチェル・カーソン)
「アメリカの奥深くわけ入ったところに、ある町があった。生命あるものはみな、自然と一つだった。」
「ところが、あるときどういう呪いをうけたのか、暗い影があたりにしのびよった。いままで見たこともきいたこともないことが起りだした。若鶏はわけのわからぬ病気にかかり、牛も羊も病気になって死んだ。どこへ行っても、死の影。農夫たちは、どこのだれかが病気になったという話でもちきり。町の医者は、見たこともない病気があとからあとへと出てくるのに、とまどうばかりだった。そのうち、突然死ぬ人も出てきた。何が原因か、わからない。大人だけではない。子供も死んだ。元気よく遊んでいると思った子供が急に気分が悪くなり、2、3時間後にはもう冷たくなっていた。」
「自然は、沈黙した。うす気味悪い。鳥たちは、どこへ行ってしまったのか。みんな不思議に思い、不吉な予感におびえた。裏庭の餌箱は、からっぽだった。ああ鳥がいた、と思っても、死にかけていた。ぷるぷるからだをふるわせ、飛ぶこともできなかった。春がきたが、沈黙の春だった。」
「病める世界 - 新しい生命の誕生をつげる声ももはやきかれない。すべては、人間がみずからまねいた禍いだった。」
「アメリカでは、春がきても自然は黙りこくっている。そんな町や村がいっぱいある。いったいなぜなのか。そのわけを知りたいと思うものは、先を読まれよ。」
これはSDGsの先駆けであったと思う。

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★「平和の祭典」としてオリンピックが開催されるときでも、世界のどこかでは平和とはいえない出来事が進行中である。特にウクライナ、ミャンマー、アフガニスタンが気になるところである。しかし、1992年に提唱された「オリンピック休戦」の理念を皆が受け止め、まずはオリンピック・パラリンピックの期間中、世界が穏やかであることを信じたい。そして休戦の話よりも深刻なのは人権問題である。世界は一時の「平和ごっご」によって、人権問題から目を背けてはいけない。

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