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★我楽多だらけの製哲書(46)★~手間はかかるが楽しくてやめられない様々な仕掛けとソクラテス~

今年も年明けから感染者が増え、オンライン授業となった。去年も冬休み明けからすぐにオンライン授業になったが、去年はHR担任もしていたので、毎日の朝礼で何か生徒たちにメッセージを定期的な形で送り、オンラインになっているからこそ特別に得られている情報があって、オンラインはオンラインでデメリットばかりではないのだと思ってほしいという考えの下、年度当初から続けている「朝コラム」とは別に、「色々な地域の文化について紹介するコーナー」を1月途中からスタートさせた。

このコーナーは夏休み中にも配信していたのだが、夏休みが終わり、通常登校になってからは休止状態だった。しかし、今回オンライン対応となり、プラスアルファの情報発信を受け取ることができるのは、オンラインの環境下ならではだと生徒も感じられるのではないかと思って、このコーナーをシーズン2として再開したのである。

結果的に、毎日クラスに提供するルーティンの種類が増えることになって、準備時間を多く要することになったのは間違いのないことだが、それまでクラスに提供してきた「朝コラム」や「学問に関わる名著の紹介の日めくり(冬休み前は「学問の紹介の日めくり」だった)」とは異なる性質のメッセージの送り方なので、作る過程での試行錯誤から受ける刺激も一味違ってくる点では、楽しめているのも事実なのである。

ただオンライン授業から対面授業戻り、生徒が登校してくれば、当然に生徒対応も増えてくるため、毎日のルーティンをこれだけ手広くしたままだと、なかなか大変であった。たくさんのメッセージチャンネルを展開することのメリットはあるとは思うが、多岐にわたる展開をするがゆえに、準備時間が確保できず一つひとつの質が低下してしまったり、そもそも対面授業での生徒対応に手が回らなくなったりというのでは本末転倒といえるだろう。色々な仕掛けはあくまでも生徒に何らかのプラスの効果を及ぼすための「手段」であって、どれだけ仕掛けをしているかそれ自体が「目的」となってしまってはいけない。そして、仕掛け自体が目的化したことにより、それが生徒へマイナスの効果を及ぼすことになるとしたら、一体それは何のための仕掛けだったのかということになり、仕掛けの本質を見失っている状態で、完全に失敗であると言わざるを得ない。

かつての日本も、アジア・太平洋戦争において、開始直後の奇襲成功の勢いに酔いしれ、戦線の拡大を繰り返し、落としどころを見失った泥沼の戦争に突入していった。しかもその戦線の維持についても、合理的な兵站の見通しがなかったため、あっという間に戦況は悪化の一途を辿っていったわけである。

「戦いにおける指揮官の能力を示すものとして、戦術が占める割合は僅かである。第一にして最も重要な能力は部下の兵士たちに軍装備を揃え、糧食を与え続けられる点にある。」
これは古代ギリシアの三大哲学者の一人に数えられるソクラテスの言葉である。ソクラテスが生きた紀元前の時期から主張されていたことを、2000年以上も経ってから、日本は理解しないまま、出口の見えない戦争を突き進み、敗北したわけで、先哲の思想が活かされなかった典型例といえるだろう。

私のHRにおける仕掛けにおいても、このような先哲の思想や過去の教訓が活かされなければ、仕掛けの数を増やすことばかりに気をとられ、十分に内容を練ったり、精査したりすることができなくなって、それはあたかも戦争において兵站が追いつかないのと同様の状態になり、仕掛けが機能せず効果も出ないという最悪の事態に陥ってしまう危険性を持っていたのである。

ただただ前へ前へと突き進めば上手くいくわけではないことは、一つの事業において大きな成功を収めた企業が、その事業を拡大したり、新規の展開をしたりしても、同じように次なる成功を収められるわけではない事例から学ぶことができる。
「2002年9月に設立したエフアール・フーズの撤退について一言でいうと、我々にとっては大きすぎる仕事でした。エフアール・フーズのトマトなどの農作物は、水や肥料をできるだけ与えずに農作物が持つ力を引き出して育てる永田農法で生産し、品質や味への高い評価をいただいたのですが、手間暇がかかるため残念ながら生産効率と販売効率が合わなかった。当時、フリース・ブームが終わり、何度目かの停滞期に入っていたことから、行き詰まり感を打破する意味でも、チャレンジを試みたのですが、慢心があったのかもしれません。」
これはユニクロで成功を収めた柳井正が、新事業として野菜の生産・販売を手掛けたものの、その後、撤退をしたことについて述べたものである。

HRの仕掛けについても、様々なメッセージチャンネルを用意していることそれ自体に満足し、それがしっかりと運営できるための時間やアイデアの補給が続くかどうかという視点が欠けてしまうと、悲惨な結果になってしまう。

そのような自覚から、仕掛けが自己満足・自己陶酔ゆえの破滅・玉砕とならぬように、「勇気ある撤退」として、去年は対面授業の切り替えに合わせ、仕掛けの精査をした。今年はHRがない分、時間的に余裕があり、毎日のコラムが供給できてはいるものの、いつの間にか「手段の目的化」という意識が中心になっている自分に気づかされることがある。

常に初心に立ち返り、目的を中心に据えた投稿をすることが大切であるし、そのような目的中心の投稿だからこそ、毎回毎回の投稿が「単なる作業」になってしまわずに、ワクワクとした「知的活動」であり続けるのだと思う。それがタイトルの「我楽多」に適う活動である。

#哲学   #ソクラテス   #手段の目的化
#リモートワークの日常

(以下でHRの仕掛けをいくつか紹介)

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