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アンラーン💣リラーン📚ためらわん♫run75…⭐自分が想定するベストや理想ではない方が、他者にとってよっぽどベストや理想になるという目からウロコ⭐️

(これまでの虚栄を解きほぐす「unlearn」のため、頭の中を刷新する「relearn」を躊躇なく進めるための記録)

【記事累積:1984本目、連続投稿:917日目】
<探究対象…コラム、話の展開、グランドデザイン、リスクヘッジ、ピタゴラス>

昨日は勤務校の卒入学式(卒業式と入学式を合わせて行います)でした。児童・生徒が通っているメイン校はこの時期そのまま授業が続きますが、勤務している在外教育施設は日本の年度の区切りになっているため、3月が節目となります。

節目ということで式典が終わった後に、教員から児童・生徒に向けてそれぞれメッセージを送ることになっていたので、1年間を振り返ってどんなメッセージを送るか少し前から考えていました。私が話す順番は2番目でしたが、誰かに話をするということについて、今後につながる貴重な学びが得られたのです。さてその学びとは一体どういうものだったのでしょうか。

人前で複数の人が順番に話をする場面では、最初の人がどのように話すのかで、全体的な流れや方向性が決まるものです。例えば、自己紹介を順々にしていくような場面では、最初の人がシンプルに自分の名前や簡単な経歴を話して終わると、そのあとの人たちも話の大枠としてはそれに倣ったものになることが多いと思います。逆に最初の人が小ネタを交えて自己紹介をすると、求められているわけではないものの、それ以降の人もそれを意識するようになり、何となく小ネタ縛りになってしまうことが少なくありません。

私の中では1年間のまとめなので、みなさんそれなりに長めの話をするのかなと勝手に考えていました。そこで私は来年度の生活や学びを考える上で、指針になるようなものについて話そうと思いました。それは、以前勤めていたシンガポール日本人学校中学部の生徒にも伝えたことがあるもので、それを小学生にも分かるように表現を変え、内容全体も整え直して伝えることにしました。

しかし長い話というのは、いかに内容がしっかりしていたとしても、聞き手の集中力が欠けてしまってはそれが十分に伝わりません。聞き手が話の全体像をイメージしながら話を受け止められるように、話のゴールないしは話のグランドデザインを先に示すことはとても大切だと思います。そのため、1枚の紙にそのゴール・グランドデザインをまとめてみました。

それは「夢×努力×信じる=現実」という関係式です。日本の私学で教員をしていた頃は、「夢×努力=現実」という関係式で話をしていました。その後、この関係式についてシンガポール日本人学校中学部の生徒に伝えるとき、現実をつかむために必要なものは、頭で「夢」を思い描き、身体で「努力」をするというだけでは足りないのではないかと考え、モチベーションやメンタルのような精神的要素として、心で「信じる」ことも大切だと感じるようになりました。そして「夢×努力×信じる=現実」という関係式となり、今回もその話をしようと思ったわけです。

ただ話を聞いている大部分が小学生なので、あまり難しい話だと分からないと思う一方、中学生もいるので、小学生向けの表現では物足りないかもしれないと思い、その両方に向けた表現を用意することにしました。まず「夢」というカードに、小学生向けの「ゴール」、中学生向けの「目標を持つ」というカードをつけて裏側に折り曲げておき、話を進めながらそれを開くような仕掛けにしておきました。3つのカードが全部最初から見えていると、情報過多になりますし、話の展開が平坦で動きがなく、飽きが出てしまうので、そのように裏に折っておいたカードを開く方法を採用したのです。

次に「努力」というカードには、小学生向けの「チャレンジ、リサーチ、リピート」、中学生向けの「目標を見える化、有言実行」というカードをつけました。それから「信じる」のカードには、小学生向けの「ネバーギブアップ」、中学生向けの「目標を諦めない」をつけました。最後に「現実」のカードには、小学生向けの「ゲット」、中学生向けの「目標達成」をつけました。

そして、この「夢」「努力」「信じる」「現実」というカードは、それぞれ人間の身体でいうとそれぞれ「頭」「口」「胸(心)」「手」に対応していると考えているので、話をしている最中の雰囲気を見ながら、そのカードを「夢」ならばおでこに貼ったり、「信じる」なら上半身に貼ったりすると、飛び道具的な説明にはなるものの、インパクトが増すだろうなと考えて、貼り付け用のテープも準備していたのです。

しかし教員が一人ひとり話をする場面になると、予想に反して、最初の先生がとてもシンプルにまとめて話をされたため、私は焦ってしまいました。私が準備した「夢」「努力」「信じる」「現実」それぞれのカードを広げたり、それらを身体に貼ったりしながら説明してしまうと、数倍の時間がかかりそうでしたし、最初の先生が作ってくれた落ち着いた雰囲気をぶち壊しにしてしまう可能性もありました。

「多くの言葉で少しを語るのではなく、少しの言葉で多くを語りなさい」
これは古代ギリシアの自然哲学者の一人ピタゴラスの言葉とされています。

ピタゴラスは万物の根源を「数」に見出した哲学者としても知られています。一般性を持つ数式というものは、数多くの具体的な事象に共通している枠組み・法則などをシンプルに言い表してくれます。しかし話をするとき、相手に分かってほしいという思いの強さから、情景や状況をよりリアルに感じてほしいと考えて、付属情報・補足情報・関連情報などを盛り込みすぎてしまうことがあります。そうすると話の骨子が埋もれてしまって、逆に伝わりにくくなってしまうのです。私はこの典型だと思います。そこで、ピタゴラスが言った「少しの言葉」を、不可欠な骨子の部分だと考えて、そこを大切にしながら話すようにすると、相手にしっかりと伝わると思います。さらに骨子について自分自身で必要以上に説明を加えないようにすると、言葉と言葉の間にたくさんの解釈の余白が生まれ、それが聞き手の想像力・読解力と化学反応し、結果として多くのことを語っている理想的な状態になるのではないでしょうか。

結局、最初にお話された先生が整えていただいた落ち着いた流れを崩したくなかった私は、大枠として用意していた1枚のカードだけを使って、伝えたいことの骨子に絞ってシンプルに話をしたのでした。本来、大枠のカードは序盤で示す脇役のつもりで、主役は色々な仕掛けを盛り込んだカードと考えていましたが、大枠のカードがあってくれたおかげでそれを示しながらショートバージョンの話で着地することができ、企図せずリスクヘッジの重要な役割を果たしてくれたのでした。

こうして多くを語らない状況になったことで、自分の言いたいことの「解説」を自分自身で完結するのではなく、自分が言いたいことの「解釈」を児童・生徒それぞれに委ね、彼らの未来に向けたメッセージとして素敵なものになったのではないかと思っています。それは自分が当初考えていた理想的な状態よりも、聞き手である児童・生徒にとって何十倍も理想的なものになったと感じています。何でもたくさん解説すればいいわけではありませんね。

ただし、せっかく用意したカードたちが日の目を全く見ないままゴミ箱行きでは不憫なので、アンラーン・シリーズのコラムの題材にして成仏してもらおうと思います。

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