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❖「ノベル」な書き出し「述べる」だけ(第3話)❖ まいに知・あらび基・おもいつ記(2023年5月21日)

(小説っぽい書き出しで表現してみるシリーズ)

私が導き出した答えは、ダールカレーとグリーンサラダとトニックウォーター。注文は完了した。

それなのに店のスタッフは立ったまま。
流れ出した不思議な時間。こういう時間は、実際の長さと体感の長さの間に大きな隔たりがあるもの。

向こうは長く感じてはいなかったかもしれない。しかし、私は耐えられなかった。

スタッフの顔を見た。彼は明らかに私の次の言葉を待っている。でも残念ながら、彼の期待に応えることはできない。私の中で注文は完了しているからである。

拙いカタカナ英語で、「ザッツオール」。彼の瞳の中に浮かんだ驚きと疑問を私は見逃さなかった。

再び流れる不思議な時間。でも今度先に耐えられなくなったのは向こうだった。

「Anything」とか「Naan」とか「Rice」といった単語は、ナンとか聞き取れた。違った「何とか」である。

これに対して私は「ノーニード」。首を傾げこそしなかったが、彼の身体全体に疑問が漂っているのは分かった。

その雰囲気をまとったまま彼はカウンターに戻り、他のスタッフと会話をしている。厨房にも私のオーダーを伝えたようだ。

その様子がどうしても気になってしまう。しかしこちらが様子を伺っていることを悟られてはいけない。ただでさえ、注文で不思議な客になっているのに、カウンターばかり見ていると思われたら、輪をかけて不思議な客になってしまう。

そこで私は1つの策を講ずることにした。

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【本日はここまで、以下は補足、蛇足?】
メニューには、個々の商品に対する値段がつけられています。
そのため、理論上は例えばその中の1品だけを注文しても良いはずです。

ただ、人間には固定観念や先入観というものがあります。
このときの私の注文は、店のスタッフの固定観念・先入観との関係でミスマッチがあったのだと思います。

このときの注文は冗談でもなんでもなく、きちんと考えた上での答えでした。
しかしスタッフにはそのように伝わらなかったわけです。

いつもならば、スタッフの圧に屈して、追加注文する方だと思いますが、このときは毅然と「ノーニード」でした。それは以前にこの店を利用したときの「苦い記憶」を踏まえてのものでした。
お店がカレー屋さんだから「辛い(からい・つらい)記憶」の方が適切ですかね。

毅然と答えたものの、カウンターの様子が気になっていたのは紛れもない事実でした。

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