最低にすらなれない君へ
わらわらと温かな場所で息を吸う
空が青くて気持ちがいい
こんな陽気を人は春と言うのだとか
ぼんやり空を眺めていると、隣にいた友達が死んでいた
あぁ、花咲く前に人にやられちまった
花を摘むのが下手くそな鳥がいるんだ、今日もやって来るから見てるがいいさ
そう言って、ヤツは死んじまった
見る暇も無かったねぇ
カイシャに急ぐだとか言う、いかにもノロマそうな男の人の足がヤツを踏みつけた
なんか、とても面白い話があるような顔をしてだけど、今じゃ顔さえも分からないね
俺もこうして、明日には死んでいるかもわからない
人は死んだ時も生きてる時も人って以外の名前があるらしい
そんな特別な名前を覚えてもらえるだなんて、贅沢だなぁ
あー、夜まで長いし何をしようか
誰か俺の名前を知ってるかい?知らないだろうな
そういえば最近の地面は硬いって爺さん達は言っていたけど、これはどうも土じゃなさそうだ
俺達は一体、どこに咲いてるんだろうかな
ひしゃげたヤツの残り香を、通り過ぎた人らは春が来たわなんて言っている
見向きもされねぇよりは、よっぽどマシだったのかね
そういえば名前っていうのは、呼ばれなきゃ意味がねぇんだって
そんなことを少し思い出したぜ
俺の名前を知ってるかい?
なんてな、教えてやらねぇや
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