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オンライン飲み会だけじゃない、コロナ禍で食分野76兆円市場の何が変わるか農水省の資料などを読み込み10分で理解する

 こんにちは、日本酒ベンチャーHINEMOSの渡辺です。実は元農水省の官僚という肩書きも持っていたりします。

 さて皆さん、突然ですが、オンライン飲み会してますか?最近すっかり耳にするようになった「オンライン飲み会」。緊急事態宣言の後はそもそも夜は居酒屋が営業自粛していることもあってか、「オンライン飲み会」という言葉を非常によく目にするようになりました。

 日本酒ベンチャーである我々ですが、オンライン飲み会(Zoomを使ったもの)の壁紙に利用できる画像を作成して・・

こんな感じでオンライン飲み会に勤しんでいます。

ちなみにGREE社では社員の方に「オンライン飲み会補助3000円」が導入されたようです。IT産業は動きが早いですね・・!

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 さて、コロナ禍において(コロナ鍋じゃないですよ)、正直私が属している日本酒・アルコール業界はもちろん、食分野への悪影響はみるに耐えないものがあり、辛い状況に陥っている方を心配する毎日です(自分自身の心配は棚に置いて・・汗)。

テイクアウトやデリバリーに活路を見出している飲食店も多いですが、仮に自粛がGW明けも続き長期戦になってしまうと、ジリ貧になっていくことは想像がつきます。シンプルに言い表しているなと思ったのはこのツイート↓

今まで「店内飲食を前提とした人が多くいる立地にある飲食店」が、テイクアウトやデリバリーに業態を転換しても、もともとテイクアウト/デリバリーを前提としているお店に対抗するのはなかなか難しいものがあります。

また、在宅勤務する人が増えれば、住宅街にある定食屋の方のデリバリー(日本には昔から出前という文化がある)への注文は増えるかもしれませんが、渋谷のインスタ映えるかっこいい飲食店のランチにはそもそもアクセスすらできなくなりますよね。都心の飲食店は「人が移動しなくなる」という完全にゲームチェンジした環境下で戦いを強いられています。東京都であれば、自粛要請にしたがえば補償される「感染拡大防止協力金」の50万円を受け取る選択をしている飲食店がほとんどのように思えます。(夜にランニングに出かけると、街の真っ暗具合に驚きます)

飲食店向けの補償や飲食店の窮状が各種報道でも目立ちます。ただ、飲食店はもともとカスタマー向けのサービスで最終的に消費者に接するということもあって目につきやすいですが(もともとSNSのアカウントを持っていて消費者とつながっている飲食店もたくさんありますからね)、当然のことながらコロナ禍の影響は70兆円を超える食分野の市場全てに及びます。

なので、食分野の企業の端くれにいるものとして(そして大学の時の専門が食料・環境経済学科だったりもして)、自らも改めて俯瞰して考えてみるために、コロナ禍の影響を網羅的に考察してみることとしました。

(事前の申し立て)ガチなレポートはなんちゃら総研やらに任せるので、あくまでニュースや公開情報から組み立てているものです。概観理解と考えていただければ幸いです。

さて、考察にあたり参考にしたのは、農林水産省の「平成30年度 食料・農業・農村白書(令和元年5月28日公表)」。いわゆる「白書」で、日本や世界の食料・農業関連の話題を網羅しています。

この中に、消費者に届く頃には「76.3兆円」にもなる食分野の流通について一枚の図にしています。(全文はリンクより参照ください)

第6節 食品産業の動向:農林水産省 2020-04-18 23-57-37

さて、これをみると・・消費者に届くまでに様々なプレイヤーが食産業にいることがわかります。大きく9つに別れます。

①国内の生産者=9.2兆円 
②国外の生産者(及び輸入業者)=1.3兆円 
③農協や集出荷組合など
④卸売市場(卸売業者や仲卸業者)=6.7兆円 
⑤食品製造業者=33.4兆円
⑥食品卸売業者
⑦外食産業=25.1兆円
⑧食品小売業者=51.2兆円
⑨消費者

 それぞれの立場でコロナ影響に対して劇的なゲームチェンジが起こっていると思いますが、この状況を把握することで、自分たちのとるべきアクションが少しでもクリア・シャープになるような、考えるヒントを提供できればと思い、ざっくりと概況を考えていきたいと思います。

ーーーーー休憩ーーーーー

ちなみに私が夜の街を走る時にはジョギングエチケットが重要です。私もバフをしてランニングに勤しんでおります。山中教授も語っています。

ーーーーー休憩終わりーーーーー

①国内の生産者=9.2兆円

 人口の数自体が減るわけではないので市場に供給されるカロリー自体は変わらないはずですが、作っている産品ごとに影響の大小があります。

 例えば、高級食材であるウニ。鮮度が重要かつ繊細な食材は、多くは予約が伴うような高級な飲食店で供されています。そのような高級飲食店ほどコロナの影響でキャンセルが相次いでいますので、高級食材の生産者からしたら消費量の減少からくる大量の在庫を抱え、結果的に生産調整に追われることでしょう。

こちらのnoteが以前にバズっていましたが(カツオ食べたい)、このnoteの中でも紹介されているようにkgあたりのカツオの値段がそのまま昨年比で半額になるなど、高級食材の値段下落は顕著にみられることでしょう。

食材を冷凍で保存とか二次加工してとっておく・・という発想もありますが(例:取りすぎたイチゴを冷凍やジャムなどの加工品に回す)、そもそも保存可能な食品加工なんてすぐにできるものじゃないのと、食品加工用の食材は通常より安い価格で買取されることがほとんどなので、厳しい状況になりそうです。そもそも「余剰」が生まれてしまう時点で値段が下がるのは自明です。

農業に代表される一次産業は「今年は牛が売れないから、豚にしよう」みたいにすぐ転換できるものではないです。(※葉物野菜とかはともかく、酪農や養殖など装置があるものほど難しい)。特定作物を専業でやっている生産者の場合であるほど、市場のバランスが崩れた瞬間に受ける被害がより大きくなります。

また、生産面だけではなく、流通面でも同様です。卸売市場を通して販売せずに、卸売の場外市場を通して販売をしている生産者であればあるほど、大きな被害を被っている可能性があります。

 上記ツイートがかなり広まっていました。状況が分からず憶測ですが、「農家」が「飲食店の休業」で困っているというのは、卸売市場ではない、いわゆる場外流通のケースと思われます。

場外流通・・・ざっくりいうと、市場を挟まずに直接飲食店やレストラン、食品加工場などに卸すことです。

場外流通は、生産者に利益を残すという意味合いでは中間流通を排除することができるのでプラスですが、複数の買い手がいるわけではないので、特定のパートナーへの出荷が止まってしまうと途端に買い手がなく困ってしまいます。1社の大口顧客に支えられていればいるほど、そのリスクは大きくなります。このリンク先の記事にも詳しいです。

 ここまでの状況を踏まえて、アフターコロナの世界において生産者が何を考えているかについて「①何を作るか」と「②どう売るか」という軸を具体的に考えていきます。

「①何を作るか」という軸については厳しい話ですが・・・「作っているもの自体が求められなくなる」リスクについて、まず考えたいです。例えば米であれば、コロナの影響を受けて「食べる人が極端に減る」ことはないですよね。ただ、銘柄を挙げるのには少し抵抗がありますが、タバコ生産は今回のアフターコロナの世界ではでますます市場が厳しい状況になっていくことは予測されるので、タバコ農家の方であれば生産品目自体を未来を見据えて模索する必要がありそうです。
※タバコ農家とJTの関係とか色々ありますが、そこは割愛・・

また、生産者にとっての大きな悩みになるのは、労働力の確保です。もともと技能実習生など、日本で働く海外からきた人々は農漁業分野で1万人を超えますが、今年はコロナの影響で来日できない方が多くいらっしゃいます。そんな中、労働力を融通し合うような取り組みも行われています。

ただ、「今までと同じ労働力が確保できる前提」で生産する品目を選び続けて良いのか、という観点は必要かと思います。例えば一時的に観光産業から人が流れてきて労働力が確保できたとしても、海外からの移動は制限されたままだが国内での移動制限が解除されたら、その労働力は観光産業に再度戻っていきます。その時に改めて労働力が確保できない可能性はないか?などを視野に入れて今後の生産計画などを考える必要があるでしょう。

ちなみに海外の観点であれば、肥料や農薬などは海外からの輸入割合が多い(というか化学肥料は全てが輸入依存)なので、それらの供給の動向には目を配る必要があるでしょう。国も様々な支援をして資材価格の安定を講じますが、必ず上がらないと言える状況ではありません。

「②どう売るか」については、シンプルに「販売チャネルの多様化」への第一歩を踏み出すチャンスと捉え、取り組みを始める生産者の方が増えてくると思います。今までは農協へ出荷していたが、(大変なんだけど)個人客を相手にする。もしくは個人客を相手にしているプラットフォーム(Oisixとかですね)に出荷する、他にも食べチョクなどもありますね。

「生産」が本来プロフェッショナルである生産者が販売チャネルを考えていくのは大変な作業ですが、今はスマホさえあればECストアが開設できたり、メルカリでも野菜が売れたり(賛否ありますが)と、手間をかければ(※)消費者への直接販売を始めることができます。このコロナをきっかけに「始める」ことができると、いつかコロナを乗り切ったアフターコロナの世界においても強い生産者になれることが間違いないと思います。
(※)農業従事者の平均年齢は60歳を超えているので、難しいことも承知です・・。ただ、徳島の株式会社いろどりの事例もありますし、一人じゃなくても仕掛ける人がいれば人は誰でも変われる、と私は信じています。

②国外の生産者(及び輸入業者)=1.3兆円

当然、海外の生産者にも相当な打撃が出ています。日本は東京がコロナ感染の中心で地方の生産に大きな影響はないですが、例えば中国で言えば上記リンクで言及されていますが世界最大の小麦生産国である中国の小麦生産量が下がってしまうことが続けば、中長期での小麦価格の上昇は避けられないでしょう。この影響は世界に及びます。

原則外出禁止になった国々や、日本以上に海外からの労働力に頼っている生産者からすると、人の移動が禁じられたことは死刑宣告に等しい影響が出るでしょう。。

ただ、誤解がなきように言っておくと、食料不足にいますぐ陥るということはありません。農林水産省もコロナ対策のまとめページで発表していますが、主要作物である小麦は政府が2.3ヶ月分の備蓄をしていますし、中国はすでに1年分の在庫を確保したと報じられていました。

食料品は十分な供給量・供給体制を確保しています。
コメや小麦の備蓄についても十分な量が確保されています。
海外からの輸入が滞っているということもありません。

丁寧に動画まで・・極端に小麦の先物価格が上昇してるとかそういう事実もありません。ただ、今後どこかの国が極端な行動を政府単位で買い占めなどをするなどの可能性はゼロではないので、各種報道を要チェックするべきとは思いますが、今すぐ個人がスーパーで食料品の買い占めに動いても良いことはなさそうです。

③農協や集出荷組合など

 一般的に、最初に生産者が作った野菜などを渡す相手です。彼らは「買い取った農産物を、市場/市場以外など様々なチャネルへ適切に農産物を流通させる」というミッションを帯びています。そのため、コロナ禍でも確保できる販売チャネルの確保に奔走しているかと思います。

 ただ、後述しますがこの状況下でも小売業(いわゆるスーパー)全ての売り上げが下がっているわけではなく、むしろプラスに転じている会社もあるので、卸売市場での値付けが極端に悪くなっていることはなさそうです。そのため、作物による諸事情は当然あれど全ての農協・集出荷組合が極端に困窮するような状況ではないかと思います。これも農水省が主要野菜については価格動向調査を以前から出していますが、

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特段価格は上がっていないですね。

ーーーーー休憩ーーーーー

すごいトリビアですが、この調査って昔はキャベツ、レタス、たまねぎ、きゅうり、トマトの5つだったのですが、平成30年に拡大されてばれいしょ(じゃがいも)、なす、ネギが追加されました。このラインナップ見ると、私は定食の付け合わせを想像してしまいますね・・・。ポテトサラダ定食が作れる・・・!

ーーーーー休憩終わりーーーーー

④卸売市場(卸売業者や仲卸業者)=6.7兆円

 卸売市場自体へ足を運ぶ人が減少している、という厳しさはあるかと思います(場外市場は観光目的の方が減少している、という見え方もありますが・・)。やはり小売・スーパーで求められる食材は影響を受けにくいですが、高級食材などプロが扱う非日常の食材について、欲しい人がいなければ値段はどんどん下がっていきます。

流通する量の減少もそうですが、流通単価まで下がってしまう現状。このコロナ禍で高く買ってもらえる相手を探すのは大変に難しい状況かと思います。ただ、後述しますがこのコロナ禍で伸びうる業態(食材小売や一部外食のデリバリー)に対しての販路模索が進んでいるかと思います。

 ちなみに、卸売業者なのでストックをすると言う発想もありますが・・冷凍食品もいつまでも持つわけではなく痛みます。また、そもそも市場が動くことを前提に倉庫などは設計されているため、デッドストックを持ち続けることは経営上大変な問題です。facebookで一大グループ(20万人を超えている)となっている「コロナ支援・訳あり商品情報グループ」では卸売業者の投稿も目立ちます。生産者から買い取ったものが消費者に届かない状況では、在庫を抱えるのは卸売業者です。

この記事でもありますが、青果より鮮魚への影響が大きいですね・・。

⑤食品製造業者=33.4兆円

ここは市場が多様すぎて一概には言えないのですが・・・例えば、外食産業に向けて業務用食材の製造している会社は大打撃を受けているかと思います。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の広がりで、国内と中国の業務用商品の販売が大幅に減少する。

ただ、外食産業ではなく小売に向けた食品製造業者には、注文が多く寄せられています。またまた農水省が食糧についての情報をまとめて発信していますが、その中でも即席めん・冷凍食品・パスタ・レトルト食品の分野で平時から1.2~最大5倍の発注があったとも報告されています。

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 これらの製造業者は、製造業だけあって業態をすぐに変化できないことは重々承知ですが、「今求められるものを作る」という姿勢で運営をしている会社もたくさんあります。例えば私がいる日本酒業界では。国の対応もあって消毒用のアルコールの製造に乗り出した会社が多数あります。

他にもコロナが続くと何がどう変わるか・・・例えば、人々の買い物の「頻度」が落ち、毎日買い物をするのではなく買い溜めをする人は増えていきそうです。そのため、チルドではなく冷凍やレトルトで美味しさを保つことができる商品の人気が高まりそうです。CAS冷凍技術が世の中に出て久しいですが「長期保存」で美味しさを保つことを可能にする技術への対応は今後消費者に歓迎される動きになりそうです。

また、冷蔵庫・冷凍庫がパンパンになりがちなので、省スペースで保存できる冷凍食品などのニーズが高まりそうです。

 それ以外にも、野菜や果物の鮮度を守る、機能性素材で梱包されることへのニーズは高まるでしょう。例えば梱包素材を変えるだけでできる対応があるかなど、食品製造業社の立場で考える必要がありそうです。

また、私は昔ラーメンを自分が運営するカフェで出していたことがありまして、その時にお世話になっていた麺屋さんもUber Eats用の伸びにくい麺を開発しています。このコロナをきっかけに求められる食材の変化を捉えることができれば、製造業であってもコロナをプラス影響にできると信じています。

※蛇足にはなりますが・・・食品製造業者で通販に進出している業者も多いかと思いますが、今までは対応していなかった会社が今回のコロナをきっかけに消費者への直接通販に取り組むケースが増えてきそうです。なので、EC制作業者やECコンサルからしたら非常に活況が生まれているのではないかと想像しています・・。

⑥食品卸売業者

ここは④にも通ずる話なのでさらっと書きますが「コロナ禍であっても買ってくれる業者」の開拓に追われているかと思います。ただ、これらの産業についてはアナログな商習慣が残っており、そもそも現物がある商品なので、ビジネス上の動きを全てオンラインに置き換えることが難しいでしょう。そのため、現在のビジネスをいかにオンラインなどに移行するか、という課題が同時に発生しえます。こちら、仕事ぶりが分かりやすいので下記の記事を引用してみます。

営業は、基本的には既存のクライアント本部へ伺い、新商品の売り込みや販促計画の提案を行っています。今の時期だとボージョレ・ヌーヴォーやクリスマスのイベントに合わせた提案をしていますね。
提案の際は、得意先の売り場へ直接足を運び、レイアウトや客導線を確認し、クライアントの課題を探したり、当社だからできることを考えた上で、自分が何をしたいのか固めてから売り込みます。売り場には競合他社も入っているので、こちらの強みが何かを提示し熱意を伝えることがとても重要です。
また、実際に店頭でお酒を売るのは、各店舗に勤めるパートの方々だったりするので、スタッフ向けに新商品の試飲会なども積極的に行い、味を知っていただく機会を設けています。現場の方に商品を気に入ってもらえなければ、消費者へは売ってもらえませんので。直接的ではないように見えるかもしれませんが、消費者に商品を届ける近道なんですよ。

(良いとか悪いではなく)今までは対面や実際の店舗での販売を考えた上での営業活動がしている業界のため、移動が制限されるビジネス環境では、今までとは違う売り方やアプローチが求められてきます。

※具体的な例で言えば、直接商談ができないので、小売店舗のバイヤーさんにサンプル食品を郵送し、同席しない場所で食べてもらい導入してもらうかどうかが決まる・・みたいな営業シーンが発生しそうです。

⑦外食産業=25.1兆円

いよいよ外食産業です。

外食産業は、
・そもそもの営業自粛
という枷があるので、まともな営業環境ではありません。

これらの記事でも述べられていますが、もともと薄利多売な業態である飲食店において、1ヶ月の休業が致命傷になり得ます。

上記の記事では、異常ともいえる減り幅が外食大手から報告されていますし、個人店も同じ傾向でしょう。国は資金面で多数の支援策を講じていますし、民間の間でも飲食店の力になれるプロジェクトが多数動いています。

※このまとめサイトは非常に有益そうです。

また、ホットペッパーや食べログなどのグルメサイトに代表される、外食産業の周辺も同様に打撃を受けています。

外食産業がこのままだと立ち行かなくなってしまうことは大きく報道されているため、このnoteではこれ以上の言及は避けます。例えば、各種クラウドファンディングサイトが手数料を0%にしたりなど支援策が複数に及んでいますので、自社にあった策を選択して生き残りをかける、という状況と思います。私も様々な消費活動で応援したいと思います・・!

毎日記事を更新されていて、このサイトの中の人の献身も素晴らしいと思います・・!

⑧食品小売業者=51.2兆円

 緊急事態宣言が出ても、小売業者は基本的には営業が続けられています。自宅に多くの人がいて自炊の機会が増加していることから、スーパーマーケットは追い風になっている状況かと思います。大手スーパーのライフではこんなニュースも。

パートやアルバイトを含めた全従業員約4万人に総額約3億円の「緊急特別感謝金」を支給する。従業員の負担に配慮したという。

ライフは前年同期比推移で言えば、3月7.8%増とか2月10.3%増とか高い数値が並んでいます。3月売り上げが好調ということも当然あるのでしょうが、それ以前の1月は0.2%減、12月は0.5%増と好況な状況ではない中で、今回のコロナの影響で従業員へ還元すると言う企業姿勢は非常に好意を持って受け止められている印象です。

また、これは外食・小売両方に通ずる話ですが、下記のようなニュースもあるように、いわゆる「お持ち帰り」が外食同様に需要が増えていくために、その容器を製造する会社は大変に忙しい状況かと思います。

※エフピコは食品容器製造の最大手です。株を買っておけばいいとしか思わない好況っぷり・・

ただ、これらはあくまでスーパーマーケットの話。営業を自粛している都心のデパートでは食品売り場だけは営業を続けていますがそもそもの来客数が減少している中で集客が厳しい状況が続くでしょう。また、生活必需品ではなく、贈答品需要が激減しているため、お菓子ギフトなどの売り場が機能しないことは各種テナント側に大きな負担となっているはずです。

そこに希望を見出すのであれば(そして外食産業とのトレードオフな気もしますが)もともと「お持ち帰りで高級なものを」と言う時に強いデパートですので、「外食できないけど」「美味しいものを食べたい」と言う消費者にとっての訴求ポイントを作れるのはデパート食品売り場の強みです。

⑨消費者

さて、残るは消費者です。ただ、ここまでみてきた全ての業者の困りごとは、裏を返せば消費者意識と一致しています。各種コンサルティング会社がいろいろなレポートを出されていますが、日本においては(ちょっとだけ時間が空いていますが)野村総研のレポートが日本人のためのレポートになっており、わかりやすいので参考にします。

新型コロナウイルス感染拡大が日本人の消費行動に及ぼす影響~キャッシュレス決済情報を使った消費のリアル

まず持って、増加しているのが生活必需品の支出額。

生活必需品の支出が増えた人に限ってみると、今後積極的にお金を使いたいものとして「食料品」(73%)「飲料品」(45%)「医薬品、薬」(24%)が高く、生活必需品や医薬品を備蓄することで生活を防衛しようという意向が見て取れる。

というように、3月に小売店やドラッグストアの売り上げが向上した、というのは消費者意識と全く同じ動きをしています。

反対に、生活必需品の支出を減らした人に限ってみると、今後さらに消費を控えたいものとして「外食」(37%)「外出用の衣類・ファッション」(32%)「旅行費用」(28%)「人とのつきあい・交際費」(26%)が高く、(・・・略)

外食が減っているのも、消費者意識通りです。

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ちなみに、このアンケートの時点(2020年3月)ではネットショッピングの割合は10%ばかり増えている中で、宅配サービスの利用については、そこまでの伸びがみられていません。

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個人の感覚としても、最初の1週間の自粛は物珍しさもあってか毎日自炊もそこまで苦じゃありませんでしたが、

(自炊をよくしていた私)

だんだんと調理自体が辛くなり、すき家のテイクアウトとか宅配ピザとかに手を伸ばしてしまいましたからね・・・。

さて、私は消費者という意識が変わっているなと思うのは・・・「応援」という名目での購入がされているのが新しいムーブメントと思います。

飲食店の背景を購入して(オンライン飲み会に使える)応援する、というコンセプトのサイトや、

未来の売り上げを担保するための前売りチケットを販売したり(これは地域で繋がってやっている事例)、

Uber Eatsにはシンプルに、支援機能が追加されたりしています。過去には、天災などにあった地域の特産物を「買って応援」というキャンペーンはありましたが、これだけの規模で、全国の飲食店が「応援」をキーワードに注目される機会は過去になかったでしょう。

この「応援」というムーブメントをうまく理解し、困難な状況下では「応援したいと思っている消費者が応援できるようにする」という体勢をお互いが作り上げられるよう、テクノロジーがサポートできればいいと思っています。

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閉店の知らせなど、悲しいニュースもあります。私も取引先企業の悲しいニュースを聞いて、悲しい思いもしました。今回の禍がどのような収束の仕方をするかは正直わかりません。頻繁に外出自粛を繰り返す国になるのか、外出自粛自体がGW明けも長期化するのか、はたまた抗体が早くに人々に付与されて問題ない暮らしに戻るのか・・・。

ただ、私自身に言い聞かせる気持ちもありますが、前を向いて状況を捉え、今の自分にやるべきことをやっていくこと(手を動かし続けること)自体が、気持ちを落とさずにいるコツだと信じています。そして「状況を捉え」るために、俯瞰的な目線で食分野を見渡すことは価値があると思っています。少しでも皆様のお役に立てば幸いです。

1日でも早い、新型コロナウイルスの収束を望みます。以上です!

※何か抜けている観点や(たくさんあると思いますが・・)、これを載せたほうがいいんじゃないかとか、事実誤認などあればコメント欄でご指摘いただけると幸いです。

ーーーーー以下は自己紹介みたいなものですーーーーー

▼時間に寄り添う日本酒 HINEMOS WEBサイトはこちら

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