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止まり木のドラマ

6月5日(月)

この日も僕は出勤じゃない。
ということで、もう一人の間借りバーテンダーである、まっさんの日。
仕事終わりに足を運ぶ。

昨晩もまっさんに色々とお酒を楽しませてもらった。
いただいたお酒は、以下の通り。


・コロナ(ライムなし)
一杯目はいつもビールから、な僕。
『今日もコロナで?』って聞かれるとやっぱり覚えててくれたんだ…って少し心が弾む。
お客さん側になってみると改めてこういった基礎的なところは大事だなとしみじみ思う。
そんなことを考えながら飲んでたらあっという間に無くなったので、次。

・ジンジャーエールを使わないシャンディガフ
なににしようかなーなんて迷いながらバックバーを眺めていると、まっさんからの提案が。
『私の作るシャンディガフはコロナが一番合うんですよ』とのこと。
えーでもシャンディガフって度数低いじゃーんとかぼやいていると
『アルコール度数は少し高めです』
はい、それで。と食い気味でオーダー。
これがまた美味しかった…!
唐辛子のリキュールと、ジンジャーシロップを使って作るシャンディガフ。
飲んだ瞬間から、真夏日の夕暮れどきが頭の中で描かれていく。
マジックアワーの空に、あの開放的な気温。
そんな日の口渇した喉に、クーっと流し込みたい一杯!
これはまっさんボトルから作ってるので、まっさんがいない日には飲めないのが悔やまれるぜ…!

・ミントジュレップ
先程の一杯からもう夏気分が止まらない。
『普通のミントジュレップでいいですか?』とまっさんに聞かれたので普通のものをオーダー。
今の気分は、シンプルにバーボンとミントで爽快にキマりたいのだ…
まっさんは、こういった変わり種をよく提案してくれるのだが、最近なぜか乗せられないぞ…という反発心があることに気づいた。
この反発心があると面白いのですよ。
それを超えてきた提案は、最高の一杯の付加価値となる。
さっきのシャンディガフがまさにそれ。

・コープスリバイバーNo.2
まっさんが一番好きなカクテルなのだそう。
好きな理由をたくさん語ってくれていたが、お酒の弱い僕はこの時点でそれなりに仕上がっていたので、うろ覚え…ごめん、まっさん。
そんな話から作ってくれた一杯。
『死者を蘇らせる』という意味を持つカクテル名。
おかげでお会計してたのに、飲みたい欲が蘇ってしまった。
もう一杯コロナを頼むことになった。

そして帰り際。
盛り上がった話が一つあった。
僕はお酒を飲むと空腹ゆえに、いつもコンビニで大量におにぎりを買ってしまう。
そして家に着いて、それを食べずにベッドにダイブ。
選ばれしおにぎり達と一緒に寝るのが日課である。
そしてお隣にいたお客さんと飲んだ後に食べたいものの話に。
出てくるものは、定番のラーメンに、パスタなどと炭水化物ばっかり(笑)
そこから好きなおにぎりの具は?なんて話が、その場にいた人たち全員を巻き込んでの話題に。
一番端に座られていたお客さんに関しては、僕は初めましての方だった。
…ここで考えてみてほしい。
普段生きていて初対面の方と、好きなおにぎりの具の話なんてすることなんてあります?

『いくらが好きですね』
『シャケが好き!』
『シャケだったらあのプレミアムなシャケがいい!』

とか、こんな会話を初対面の人とすることあります!?

こんな機会はバー含め、お酒のあるところでしか経験できない体験だと思う。
話題が話題だけど、これも一つの出会いであることに間違いないなと。

バーというのは止まり木。
そのときそこに並んだ人でしか織りなすことのできないドラマがある。
だから面白い。
おにぎりの具の話ですら、このカウンターの上では一つのドラマになる。

そうやってその場にいる人たち全体で盛り上がってるときの雰囲気が僕はとっても好きなんだ。
みんなが笑ってて、何かの話題で店全体が盛り上がって、ぽうっと一つの温もりが生まれている。
そんな和気藹々な瞬間が、たまらなく好き。
温かで、なごやかで、エネルギッシュで。
そんな気持ちを胸にギュッと閉じ込めながらお店を後にする。
帰り道にやっぱり思うのは一言。

『いい夜だった、いい夜だった』
そう何回も一言を言いたい。

あの日、止まり木に止まった人たちも、そう思ってくれてるといいな。

大船郊外のBar manoirでの何気ない一ページでした。

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