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天ぷらのお裾分けを受けて

昨夜は、町内会の会合に参加した。会合は、私の自己紹介から始まった。私の近所に住んでいるMさんが、話そうと思っていたことをほとんど紹介してバトンをよこしてきたので、自己紹介は手短に終わった。「できるだけ長居していただいて」と会長が言った。会合は、昨年の振り返りや会計報告、コロナウイルスに関する注意喚起、会長の引継ぎなどを行った。誰が何を考えているのかさっぱりわからない、異国のような空間と時間だった。私の印象に残ることといえば、会合自体が高齢化社会の侘しさを漂わせていたことと、ゴミの出し方に対し、東京と比べると厳格なことくらいだった。

その後の懇親会では、「志田くん、きみは自分の親父よりも年上を相手してるんだ。よう呑まんといかんぞ」なんて、ジョークを言われながら、気持ちよく飲んだ。会合に参加したのは、男女12人の地域住民だったが、懇親会に残ったのは男だけだった。商店街の町だから、それぞれ写真屋だの酒屋だの、玩具店だのを営んでいる人たちだった。その場は、先ほどまでの空気とは真逆の様相で賑わった。地域の情報が飛び交って、私は土地に溶け込み始めているように感じた。とはいえ、私がいわゆる「お客さん」的な存在として、若いというだけで無条件に歓迎されているということは明らかだった。1時間と短い時間でも、みんなそれなりに気持ちよくなっていた。帰る際には、アルコールで手を消毒するように話し合っていたが、結局誰もそんなことをしなかったと思う。

今日の昼どき、私の借家を尋ねて来たのは、懇親会で「明日ちょっと寄るわ」と話していたおっちゃんだった。朝から雪が降るほど寒かったのに、山菜の天ぷらと糠漬けをお裾分けしにきてくれたのだった。まさか本当に来るとは思わなかった。「ぬかはよく洗ってな」とひとこと言って、おっちゃんはそそくさと出かけて行った。私はスーパーに出かけて、奥飛騨の半生そばを購入した(そこでも懇親会で知り合った人と会った)。数日前、釣りに出かけた際に採ってきたワサビをおろして、フキノトウはふきみそにした。食が豊かなのは、田舎のいいところだ。

本格的にこの地域に住み始めてからまだほんの1週間だが、どれだけのものや親切を受けたか分からない。こういった歓迎から、いろいろと頼まれるようになり、それが重責になる。そういうことが往々にしてあると、知人が忠告してくれた。言わんとしていることは分かる。でも、ここはそうじゃないとも思ったりしている。年寄りだって、みんな若者だったわけだし。というか、扶助会ってそうやって成り立つんじゃなかろうか。まあいい。とにかく、これから楽しみだ。


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