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鮭鉛筆

 鉛筆鮭という名前の鮭がいる。元々、住処にしている岩の成分を少しずつかじりながら栄養にしているため、岩に含まれる炭素の量によって、鉛筆にしたときの色の濃さが変わる。
 また、その地域ごとの様々な要因によっても変化するため、様々な産地の鉛筆鮭を使った鉛筆がある。
 私はもともと、芯の柔らかい鉛筆が好きなので、炭素の含有量が多い鮭をよく使う。
 一般的な鮭より小ぶりで、手に馴染むサイズ。
 昔、鮭鉛筆を一から作ったときは、なんとも言えない気持ちになった。
 なぜかといえば、鉛筆鮭は一度乾燥させてから他の鉛筆同様に削るのだが、そのとき、"目が合ってしまう"のだ。つまり、一回目に削るときは、その頭を容赦なくごりごりと削ぎ落とし、あの鉛筆の形にするということ。
 それを考えると、お店で売っている鮭鉛筆はだいぶ良心的だ。すでにその苦痛を取り払ってくれている。
 ちなみに、私はこの鮭鉛筆を食べるのが好きだ。
 もちろん、炭素部分は取り除くが、それ以外の身の部分は食用にもなる。
 鉛筆削りを使って削ってやれば、あっという間に削り節に大変身だ。不思議と、炭素の含有量と身の柔らかさが比例している。つまり、芯の柔らかい鮭は、身も柔らかいということだ。
 ちなみに個人的には、削った鮭鉛筆は、お茶漬けや卵かけご飯に使うのがおすすめだ。ふんわりと広がる木とも削り節とも言えない、形容しがたい香ばしい香りが、かなり癖になる。

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