サンドイッチ座(ショートショート)
午前四時。日を跨いで、始まりかけの朝の空気は澄んでいる。踏み出す足も軽い。
珍しく早く起きた朝。せっかくなので何かしたくなって、ジョギングをすることにした。
空にはまだ星が残っている。ただ、ほんのりと遠くの方で青色が滲んでいる。きっと日の出は近い。
こんな朝は軽やかな音楽を聴きながら走ろう。プレイリストを眺めて、決める。ディスプレイの光すら今日一日への希望に満ちている気がする。
足首を回して走り始める。
景色が走るスピードに合わせて移り変わっていく。走りながら、空腹に気づく。この後何を食べようかな。色々なメニューを思い浮かべるけれど、その実そこまですぐに何かを食べたいという感じでも無い。
何か軽く食べられるものがあればいいな。何がいいだろうと思いながら空を見上げる。
青色が侵食し始めた空の端っこで、三角形に並ぶ星たちを見つけた。
「サンドイッチだな」
小さく呟く。空に浮かぶ直角三角形。まさしくサンドイッチと呼ぶにふさわしい形。それを見ているとサンドイッチが食べたくなってくる。
もし何か作るとしたら、何を挟もうかな。
そもそも冷蔵庫の中に何が残っていたっけ? ハム、レタス、チーズ? あったっけ。食パンはいつだったか買っておいたものがあったはずだけど。
そんなことを考えているうちに空は白み始め、サンドイッチのパンの肌を思わせる色に変化していく。
……美味しそうな空だなあ。
心地いい空腹の中でそんなことを思った。
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