見出し画像

5G線上のアリサ【第5章#8話】共感

#8話:共感



【視聴時間=03:00】


「しかし、その過程において私と洋次郎のしたことは4人の大人を巻き込み、先生を深く傷付けることになりました。これに対し、私は愛利沙先生のお気持ち次第では辞任も覚悟している次第です」

まさか愛利沙のさじ加減で総理辞任ができる事態。

加護のVRメガネを通し、あるいはテレビを拝みながら、国民全員手のひら返し。

総理をそのままいさせて欲しい。

〈お願いします。許してください、アリサ先生!〉とネットが動く。

1000万人以上がつぶやき八名が描いた計画プランの通り、彼女を責めたことについて謝罪と同時に許しを乞うと―――

「―――違うのね。どれだけ多くの人に謝ってもらっても、承認されても、欲求は満たされない。加護さん、八名蜂谷さん、あなたたち二人があたしに対して本当に教えたかったのは、こういう気持ちだったということ?」

「アイムソーリー、その通りです」

「はい、すいません」

「初めて気付いた」

八名と加護の最後の願い。

愛利沙に教えていきたいことは、あなたは自己愛などでなくて自分を許せぬ自分自身に、長年苦しめられてきたと暗に導くことであった。

「初めはただ楽しくて洋次郎越しにパソコン教室へ通っていました。それからは国のためにネットを学び、グループトークからIOT化を進めていきました」

八名のサブアカウントアイムソーリーがアリサアカウントをフォローしたのも、パソコン教室5周年記念。

良かれと思って取った行動。

けれども愛利沙が自分の過去と向き合う途中、思い付いた。

新たなジジイのGG計画。

国家再生と改変作戦。


それとは違う。


一人の女性の心を救う救出戦へ。

暴走しながら炎上をするアリサの景色を変えるために、二人は自分の進退を賭け、すでに決断を下していた。

「加護さん……」

「清水先生は自分自身の過去を打ち明かし、向き合いました。小学生の時、中学生の時、高校を中退した時。それから引きこもり、ネットに助けを求めましたが、恋愛も悲しい形で終わったことを―――」

そして二人はフォローを決めた。

100万人のフォロワーを与え、虚構の中から現実を見付けその目を逸らさぬ覚悟も見つめ、心を射抜かれ進退を賭け、炎上騒ぎの収集へ。

愛利沙の承認次第で総理が交代をする事態になった。

桜満開の立体ビジョンを映し許した日本全土は、アリサも同じく共感するよう願いを込めて祈りだした。


次回の記事と作品です。ぜひご覧ください
5月のnoteカレンダーです。
新着記事と作品は19:00頃にアップします。

『”Cherish”perfomed by Dorian Charnis,used under license from Shutterstock』

Thank you for reading!