訪問診療に同行して学んだ大切なこと
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訪問診療に同行して学んだ大切なこと

学校のレポートのタイトルみたいになってしまいましたが…。
湘南おおふなクリニックの長谷川太郎先生(以降、親しみを込めてさん付けで記します)のおかげで大変貴重な体験をさせていただいたので記します。
尚、動画、写真に映っている患者さんについては、事前に撮影の許可をいただいております。

日々、訪問診療をされている皆様にとっては当たり前に思えることを書いていきますが、この記事は、訪問診療のことをまだ知らない方。そして、今後訪問診療のお世話になる可能性がある方に向けて記します。

訪問診療の様子

今回の訪問診療では、医師の長谷川太郎さん、看護師の米澤さん(湘南おおふな訪問看護ステーションの管理者)、そしてケアマネージャーの野地さんの三人体制でした。

ソーシャルワーカーの野地さんがドライバーを兼ねながら、診療中は車中で待機し、スケジュール立てや訪問先への事前の連絡を行っておりました。

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このように、初めは医師の診察から始まります。撮影を許可してくれた状態が良好で、信頼関係のある患者さん宅だからということもあるとは思いますが、お互い笑顔で和やかな雰囲気で始まります。

ここでの長谷川太郎さんの最初のお声がけがすごいです。

患者さんと会えたことへの喜び。前回の訪問診療からこれまでの患者さんを気にかけていたこと。文字では表現しづらいのですが、患者さんへの愛に溢れていました。そして、ここでの会話で患者さんも医師のことをすごく信頼するのがジンジン伝わってきます。
むかし、音楽の先生から「歌は出だしが大事だ!」って教わったのを思い出しました。一流の噺家も最初の入り方が気持ち良いですね。
…話を戻します。

素敵な医師に診てもらえて幸せだ、という感じが伝わってきます。

言い換えれば、患者さんと築いてきた信頼関係ですね。
では、どうやって信頼関係を築いたか、に関する考察は後半で記します。

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このように、患者さんのご家族にも笑顔で語りかけます。

まさに患者さんの「病気」を診るだけでなく「人」、そしてそのご家族も含めて診ているような印象を受けました。

患者さんに対して適切な診療を行なっていたとしても、ご家族が不安な状態だったり、訪問診療チームに対して不信感を抱かれていたら、訪問診療はうまくいきません。
伝聞情報ではありますが、患者さんのご家族ときちんとコミュニケーションを取らないどころか、挨拶ですらおざなりが訪問診療チームが、ご家族から契約を切られたという話も耳にします。

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医師の長谷川太郎さんの問診が終わると、今度は看護師の米澤さんの出番です。先ほどまでの患者さんと医師の会話の内容を基に、患者さんへの検査や処方を進めていきます。
その間、長谷川太郎さんは二人の会話を聞きつつ、先ほどの問診内容をタブレットに入力します。

このときの米澤さん、患者さんよりすこし低い位置から、患者さんの目をしっかりと見て、しっかりとうなずきながら患者さんの話を受け止めています。
これは、「看護師として当たり前」「接客として当たり前」なことかもしれませんが、この1日、米澤さんに同行しておりましたが、どの患者さんに対しても一貫してこの姿勢でした。基本を忠実に継続的に実践する…本当にすごいです。

当たり前なことを、真摯に継続する。本当に大事だと痛感。仕事はもちろん、スポーツ、芸術、全てに通じます。自戒を込めて…。

そして、米澤さんの真のすごさを思い知るのは、少し先のことでした。

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患者さんへの診察と看護が一区切りし、患者さんのご家族に、患者さんの状態と今後の方針を説明する長谷川太郎さん。

このときも笑顔を交えながら、真摯に丁寧に会話をしていました。このときの患者さんの状態が良い状態だったことを差し引いても、この丁寧な説明にご家族もホッとしている様子でした。

患者さんはもちろん、そのご家族にも丁寧に接する。大事ですね。

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こちら、診療中のワンシーン。
この一枚で、患者さんとその家族との関係性がわかります。

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診療が終わり、笑顔でお別れをします。
こういうときに急ぐ素振りを見せずに、しっかりと挨拶。
しつこいですが、当たり前と言われる基本的なことをしっかりと実践していること。ただただ素晴らしいです。

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次の訪問先でのワンシーンです。
耳の遠い患者さんに対して、耳元で優しく語りかけます。もちろん、怒鳴ることはありません。あくまで優しく。

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医師と看護師が共同作業で患者さんを診ます(看ます)。

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血圧を測りながら患者さんに話しかける米澤さん。患者さんがすごく嬉しそうに笑っていたのが印象的でした。
※血圧測定じゃなかったらすみません

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別の訪問先でのワンシーン。
こちらの患者さんは寝たきりの方だったこともあり、患者さんのご家族との会話をより丁寧にされているように見えました。

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患者さんのご家族からの話をタブレットに記入していきます。

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診療が終わり、挨拶が終わると速やかに移動します。
この日の訪問件数は10件を越えていました。

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移動は車。ケアマネージャーの野地さんが運転します。湘南おおふなクリニックの診療圏である鎌倉市内は、狭い道、一方通行が多く、駐車できるスペースも限られているため、車で移動するにはノウハウが必要です。
交通事情を理解していないと、患者さんへの訪問が大幅に遅刻してご迷惑をかけることになります。

そして、この間も先ほどの患者さんの振り返りをおこない、これから訪問する患者さんの情報共有をおこないます。タイトなスケジュールなので、車での移動時間を有効に活用しないと大変です。

さながらスポーツでいうハーフタイムの控え室の雰囲気です。
次の診療に向けての準備時間です。

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次の訪問先で。患者さんの穏やかな表情が印象的でした。

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時には、患者さんのご家族から不安を吐露されることもありますが、米澤さんは相手をしっかり見て、気持ちを受け取り、丁寧に答えていきます。

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ご家族の不安を受け取ったあとは、写真のように和やかな空気になります。これはこじつけでも結果論でもありません。ご家族の不安が解消されたからこそ。

看護師の米澤さん。本当にすごいと感じたのが移動中の車でのことでした。

実はこの日、連絡の手違いで、訪問先への到着時間が大幅に遅れる事態が発生しました。しかも遅れることの連絡も伝わっていませんでした(書いていて耳が痛い…)。当然、遅れた訪問先のご家族からはクレームです。

その訪問先での診療が終わって車に戻ってきたら、このようなことが起きた要因を振り返り、今後の改善策を話します。

そのときの看護師の米澤さんの一言

「これは”私たち”の課題だよね」

これには驚きました。
今回のことについては、訪問先への連絡担当である野地さんを責めても不思議ではありません。
しかも、米澤さんはクレームを直接言われた立場です。感情としては、その発端となっている担当者を責めたくなってもおかしくありません。

担当を責めるのではなく、自分事として、課題を認識する。
そこに米澤さんの人としての器の大きさと、米澤さんの野地さんへの信頼を感じざるをえませんでした。米澤さんみたいな人がいる組織(チーム)は強いです。

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その後も、医師と看護師の連携プレイで訪問診療は続きます。

写真は、長谷川太郎さんが患者さんのご家族とコミュニケーションを取り、米澤さんが患者さんに検温している様子。

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患者さんに寄り添い、あたたかい言葉をかけます。患者さんにとって、本当にありがたい存在に映っているのはないでしょうか。

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「踵(かかと)が痛い」と言う患者さんの踵を丁寧に診ています。

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「このくらいの量の薬を塗ってくださいね」
患者さん自身でも適切なケアができるように伝えています。

長谷川太郎さんのすごいところ その1
相手の話をすべて受け止める

長谷川太郎さんの診療を見ていて、素晴らしいと思うことが数え切れないほどありましたが、中でも自分の中で本当に勉強になったことを3つ選んで、この記事を結びます。

まず、相手の話をすべて受け止めること。

いわゆる「傾聴」ってやつですが、わかっていてもなかなかできない「傾聴」です。

患者さんの中には
「それは心配しすぎでしょ」
「そんなわけないでしょ」
「その知識は間違ってるだろ」
と思わず、否定したくなったり、ツッコミを入れたくなる内容もたくさんありました。

そんなときでも、長谷川太郎さんは相手の発言を一切否定せずに、しっかりと頷きながら受け止めていました。

そして、相手がしっかりと話終わった後に

「うん、そうだよね。わかるよ。」
と共感を示した上で
「いま、言われたようなことが起こる可能性は、
医者の立場から見るとすごく低いから大丈夫ですよ。
そしてそれが起きないように念のため、
〇〇を処方するから安心してくださいね。

と、
相手の話を受け取る

共感、理解を示す

専門家としての見解を伝える

具体案を提案する

相手が安心できるようところに丁寧に着地させる

文字にしてみると、コミュニケーションの基本事項ではありますが、これを日々しっかりと実践されている人がどれだけいるでしょうか?

忙しさを理由に雑なコミュニケーションになる
↓ 
相手が不信、不安に残される

クレーム処理に忙殺され
売り上げが上がらないタスクでますます多忙に

契約が切られる

自己嫌悪 もしくは 相手のせい

こんなサイクルになりかけたら、長谷川太郎さんのことを思い浮かべようと思いました。

相手の困っていることをしっかりと自分で受け止めた上で、責任を持って、その分野の専門家にバトンを繋ぐ。

これって、どんな仕事でも大切なスキルではないでしょうか…!?

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長谷川太郎さんのすごいところ その2
ポテンヒットをつくらない

次に、ポテンヒットをつくらないこと。

言い換えると、患者さんとご家族を不安なまま置き去りにしないこと。

患者さんによっては、その医師の専門外の領域のことを聞かれる場合があります(長谷川太郎さんの専門は泌尿器です)。

そんなシーンで、長谷川太郎さんは

「〇〇の疾患については、私は専門ではないので詳しくはわかりません。そして△△病院の□□先生が専門ですので、今確認してみますね」

と言って、その場で連携する医療機関に電話で問い合わせました

もし、そのときに「それは私の専門じゃありません」と一蹴されたら、患者さんやご家族はどう感じたでしょうか? 
(いわゆる “It's none of my business!" という回答です)

相手の困っていることをしっかりと自分で受け止めた上で、責任を持って、その分野の専門家にバトンを繋ぐ。

これって、どんな仕事でも大切なスキルではないでしょうか…!

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長谷川太郎さんのすごいところ その3
"悪者"をつくらない

予期せぬトラブルが起きたり、意図の食い違いがあった時に、"悪者"を作ることによって場が収まることはあります。

例えば、初めて診る患者さんの状態が良くない時に、前任の担当の医師を批判すれば、患者さんの矛先は前任の医師に向くし、自分の正しさを主張しやすくなります。
これは人としてどうなのか?と思いつつも打開策や回避策が思い浮かばない時についついやってしまうこともあります(反省)。

長谷川太郎さんは、患者さんやご家族からの質問(クレームも含む)に対して、自身のスタッフはもちろん、他の医療機関や介護機関の人たちを“悪者”にすることは全くなく、むしろ、全ての関わる人たちに対して敬意を持ったコミュニケーションをしていました

患者さんの訴えに対しては共感し、わからないことは「わからないので、本人に確認しますね」と伝え、その上で「〇〇と判断した上で、△△を施したと思いますよ」と意見を伝える。…前章と内容が被ってきた。

まとめ

私は医療従事者ではないので、湘南おおふなクリニックが各訪問先でおこなっていた診療について医学的な正しさはわかりません。そして、そこに関して本記事で言及する立場でもありません。

患者さんとそのご家族との向き合い方に感銘を受け、大切なものを学ばさせていただきました。

「このような素晴らしいコミニケーションスキルはどこで磨かれたんですか?」
と、帰りの車中で、長谷川太郎さんに尋ねました。

「医療の現場で、患者さんにとって何が最適かを考えて、試行錯誤しながら磨かれたんじゃないかな
という回答をいただきました。

もしこの回答が真だとしたら、本来、訪問診療で学ぶべき重要なエッセンスが属人化されていて、その人のキャリア次第でこのエッセンスを身につけないままだと言うことになります。

だからこそ、訪問診療の人たちを中心に“対人支援”や“コミュニケーション”に関する教育の機運が高まってきているのかもしれません。

最後に、今回のような貴重な機会をくださった湘南おおふなクリニックの長谷川太郎さん、米澤さん、野地さん、本当にありがとうございました!

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一般社団法人日本医療デザインセンター/代表理事、デザイナー。 Jump Start 株式会社/代表取締役、クリエイティブ・ディレクター。