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2020 SaaS Trendsレポートまとめと考察

BlissfullyというNew YorkのSaaS企業が毎年SaaSのトレンドに関するレポートを発表しています。
先月最新のレポートが発表されていましたので、今回はこのSaaS Trendsレポートをまとめていきます。
今年の大きなトピックとしては下記のようなものが挙げられていました。

・SaaSの利用率が30%増加している。
・利用されているSaaSの数も30%増加している。
・利用率が増加している一方使われていないSaaSの数も増えている。

SaaS企業の方にとって非常に有用な情報ばかりですので、興味を持った方はぜひ下記の原文を読みましょう!!

はじめに:会社規模の定義

レポートでは会社のセグメントを下記のように定義しています。

・Small Business(SMB)従業員が1-100
・Mid-Market(MM)従業員が101-1000
・Enterprise:1000名以上

ではさっそく詳細を見ていきましょう!

全体のトレンド:SaaSの利用が大幅に広がっている

【レポート要約】
1社あたりのSaaSに対する支出は前年比で50%増加していて、平均で137の SaaSを利用している。
内訳としては、SMBでは平均102、MMでは185、Enterpriseでは288のSaaSを利用している。

また、興味深いことに、支出の増加率はアプリの増加率を上回っているというトレンドも見られる。
これには以下のような理由が挙げられる。

①既存のベンダーに多くの支出をしている
→ユーザー追加、アップセルやクロスセル、値上げ等
②M&Aでベンダーが統合され特定のベンダーへの支出が増加

また、企業では毎年30%以上のSaaSを解約しているというデータもある。
SalesforceやHubSpotといったプラットフォームSaaS企業は買収や機能拡張などでより多くの機能を提供することで、他のマーケット(例えばプロジェクト管理ツール等)に侵食することで、他のSaaSの解約を推し進めている可能性がある。

【考察】
多い!!多いよ!!!というのが最初の感想です笑
数についてはUSと国内の状況には大きな開きがあるというのが所感です。
国内の利用数のデータはあまり多くありませんが、HENNGE社が1社平均で7のSaaSを利用しているというデータを出しています。

これを見ても数に圧倒的な開きがあることがわかります。
今後国内でもSaaSの利用数は増加していくと予想されますが、ここまで差があることに正直驚きました。
また、国内ではM&Aについても日本国内はUSに比べて活発でない印象ですが、SanSan社がSATORI社の株式を買収したり、マネーフォワード社がスマートキャンプ社を買収したりといったことが最近ありました。
今後もIPO後のSaaS企業がよりプラットフォーム化していく中で、この流れが進むのではと考えています。

SaaSの浪費:年間で倍増

【レポート要約】
SaaSの利用が増えているというデータがある一方で、契約が重複しているSaaSや、退職等でオーナー不在のSaaSも増えてしまっている。
重複しているSaaSは80%増加しており、企業では平均3.6のSaaSを重複して契約している。
内訳はSMBで2.3、MMで5.8、Enterpriseで7.6。

また、オーナーのいないSaaSは前年に比べ100%増加しており、平均2.6とのこと。
内訳はSMBで1.4、MMで4.3、Enterpriseで7.1。

これらはコストがかかるだけでなくセキュリティリスクでもある。こういった事態を防ぐためにもSaaSの利用状況を分析し、在職中や退職時のオペレーションやポリシーを策定しておく必要がある。

【考察】
契約の重複については私自身も以前同じような状況に陥りそうになったことがあります。
以前にプロジェクト管理ツールの導入を検討した際に、同じタイミングで別セクションや別部署、合計3つのチームで同様のSaaSの検討をしていたことがあります。
150人程度の会社だったので、素早く情報の共有ができ、同一のテナントを共有で利用することとなりましたが、もしこれがもっと大きな企業であったらおそらく3つの別契約が走ったことだろうと思います。
この例は少し、特殊かもしれませんが、意図せずに同一系統のSaaSを複数契約してしまう、といったことは最近よく聞くようになってきました。
例えば、全社的にはMicrosoft 365を契約していてTeamsを全社のチャットツールで利用しているが、開発部はSlack、営業部はChatworkを利用しているというように。

また、オーナー不在のSaaSも少しずつ話しを聞くようになってきました。SaaSは誰でも簡単に導入できるようになった反面、管理が非常に難しくなってきました。
私はこういったSaaSを野良SaaSと呼んでいます。
管理ができていないだけで野良SaaSが原因で毎月クレジットカードから自動的にチャージされているかもしれません。

SaaSのサイロ化は進む

【レポート要約】
以前はIT部門が集中管理でテクノロジーの選択をしていた。
しかしながら、SaaSはIT部門以外の人々が自分たちで最適なものを検討し、利用することができるようになった。

一方で、一元管理が難しくなりシャドーITの増加がIT部門の頭痛の種となっている。
そして、このトレンドは続くと考えられる。

これを裏付けるデータとして、SaaSのオーナーはMMの企業だと前年の12人から21人に増加している。
また、SaaSアプリの選定や管理には、IT部門以外の人が関与するようになっている。

【考察】
前項のチャットツールの例のように、国内でも少しずつこの問題が顕在化してきていると感じています。
SaaSの一元管理という課題を解決するためにも、下記のような対策が有効だと考えています。
①SaaSを導入する際のプロセスの定義
②導入する際の選定基準の明確化
③IDの統合(IDaaSの導入など)
④ネットワークレベルでの監視(CASBなど)

野良SaaSが増えていく前にまずは①、②といったルールを明確にし、その上で③や④といったシステムでの解決を検討しましょう。

なお、③については以前IDについてのnoteを書いたのでこちらもぜひ。

その他

[急成長しているSaaSの分野]
下記の分野のSaaS急成長が見えます。
・ITとセキュリティ
 →2年連続で100%の成長。GDPRなどの新たなニーズに対応するため
・HR
 →レガシーなシステムの移行
・Customer Support

一方でSaaSにいち早く参入したSalesforceを始めとするCRMの分野は成熟しているため、成長率は鈍化している。

[企業規模ごとのSaaSの利用数]
SMB:102
MM:185
Enterprise:288

まとめ

今回のまとめとしては、「SaaSは増えていく!!」です笑
国内の状況とは全く異なっていますが、日本でもSaaSの利用が活性化しているため、数年後にはこういった状況になるのではと考えています。
実際某有名HR Tech企業でも200のSaaSが入っているといいますし、すでに国内のアーリーアダプターはUSと同等レベルでSaaSを活用しています。

私達もたくさんのSaaSを使っていて、非常に助かってますし、効果が出ています。(YouTubeで話しているのでリンクを貼っておきます)

今回はデータを元に数にフォーカスしましたが、忘れてはいけないのはSaaSはツール、手段だということです。

あくまで課題ドリブン、目的ドリブンで自分たちに最適なSaaSを選択し、活用していきましょう!!

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