2021洋楽アルバムレビュー

エレクトロニカからロックを中心に、今年気に入ったアルバム8作品を簡単にレビュー。


1. Clark "Playground In A Lake"

おすすめのトラック:02,03,06

IDMジャンルの担い手の一人であるClarkの新作。今作のレーベルはWarpではなく、ドイツのGrammophonから。私のClarkのイメージは、バリバリの電子音の曲からピアノが基本のの美しい曲まで幅広い…というものであるが、今作は後者の色が非常に濃かった。トラック02、03は2001年の名作”Clarence Park”に散りばめられたピアノのみの小品を思い出させた。


2.μ-ziq "Scurlage"

おすすめのトラック:02,05

引き続き、IDMのアルバム。マイク・パラディナスのμ-ziq名義の新譜。トラック02は、彼の代表作ともいえるアルバム”Lunatic Harness”に近いテクノサウンドが心地よかった。他のトラック…特に05なんかは、何となくAutechreっぽい感じがしたが、気のせいだろうか?


3.Loyal Blood "Typhoons"

おすすめのトラック:03,08

英国のハード・ロックのデュオの新譜。今年の始めくらいに、"Sleep"や"Blood Hands"を聴いてハマった(余談)。前作、前々作のロック色強めの作風から、全体的にテンポのいい曲が増えたように感じた。ハード・ロック的なヘヴィなサウンドはそのままだが、オルタナティブ・ロックっぽさが増したようにも感じる。オルタナティブロックがどんなものかと言われると説明に困るが、強いて言えばtwenty one pilotsとかImagine Dragonsみたいな今風なロックに仕上がっている、という感じ。


4.A Day To Remember"You're Welcome"

おすすめのトラック:01,02,09,14

次は、ハード色がありながらも、パンク的でもあるオルタナティブ・ロックバンドのA Day to Rememberの新譜。"All I want"で有名なバンドだが、個人的にはそれを上回るクオリティの曲が普通にいくつも転がっているというものすごいアルバムだった。トラック01の"Brick Wall"は、イントロからの高まりからサビへの盛り上がりが今までの曲の比ではない。トラック02もキャッチ―で、Dlifeかなんかのアニメで流れてそうだ。そしてトラック14の"Everything We Need"は泣ける。非常に完成度の高いアルバムとなっていた。


5.Scale The Summit "Subjects"

おすすめのトラック:01,03,05

プログレッシブ・メタルバンドのScale the summitの新譜。近作はインストゥルメンタルのものが基本だったが、今回はボーカルあり。もちろん、Instバージョンもあるのでそちらも楽しむことができる。でも今回に関してはボーカルを引き立てるような曲構成になっているため、私はボーカルありの方をお勧めする。彼らの強みは、技巧的なギターサウンドと、ノスタルジックなメロディーにあると思っている。今作でもそれは発揮されているし、特にトラック03はボーカルのRoss jenningsの優しくも力強い歌声とマッチしている。


6.Poppy "Flux"

おすすめのトラック:01,04,09

"I disagree"や"I'm poppy"で有名なpoppyの新譜。これまではポップ・ロック、といっても可愛さを前面に出した楽曲の多かったpoppyだが、今作は全体的にメタル感が強めになってきて、かなり本格的というか、いい感じになってきている。トラック01はこれまでのような奇抜さはないかもしれないが、キャッチ―なメタルで歌声も映えている。個人的には、この方向性でどんどん曲を作っていってほしい。


7.Twenty One Pilots "Scaled And Icy"

おすすめのトラック:02,03,05

オルタナティブ・ロック/ヒップホップの最前線を行くtwenty one pilotsの新譜。正直、"Stressed Out"や"Ride"のインパクトを超える曲はなかったかもしれない。とはいえ、定期的に聞きたくなるような曲もある。なんというか切ないイントロで始まる曲が多い。トラック02の”Shy Away”は勇気づけられるような一品。


8.Sewerslvt "we had good times together, don't forget that"

おすすめのトラック:03,05,08,10,12,14

オーストラリアのディプレッシブ・ドラムンベースの作曲家、sewerslvtの新譜。どうやら活動終了するようで、非常に寂しい。
肝心の楽曲は、粒揃い。トラック03はあまりにも秀逸で、メロディーはどこかゲーム音楽のような機械っぽさがある。しかし、憂鬱な曲調はそのままで癖になる。トラック08はボーカロイド初音ミクの音声が使われた一曲。無機質感、鬱屈とした感じを醸し出すいいスパイスになっている。アルバムを締めくくるトラック14は17分の大作。三部のパートに分かれている。ラスト約4分間は、ビートのない混沌とした音楽が流れ、ボイスメッセージとともに終わる。Boards of Canadaの"One Very Important Thought"を思い出させるような、物語の終わりを知らせるエピローグのような仕上がりになっている。

アルバムのタイトルは「私たちは楽しい時間を一緒に過ごした。それを忘れないで」。最後のトラックのタイトルは、「さようなら」。
いつか帰ってきてくれることを願う。


以上、8枚のアルバムを簡単にレビューした。


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