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全人代に何を期待できるのか

今朝の『日本経済新聞』朝刊の社説を見て驚いた。

『日経』論説委員は本気でこう考えているのだろうか。本当のことを知らないか、惰性で適当に書いたかのどちらかだろう。

日本では立法機関と紹介されることの多い中国の全国人民代表大会(全人代)だが、実態はラバースタンプである。ラバースタンプとはゴム印、つまり議案の中身を精査せず、形式的に次々と承認していく様子を揶揄する言葉である。

その証拠に、全人代の代表者は共産党の下部組織により間接的に選出されている。当然国民の意思が介入する余地はなく、直近の香港の事例を見てもわかる通り、共産党の指導路線から外れる者は立候補の段階で排除されるのが常である。必然的に、全人代のメンバーは共産党の政策に共鳴する者たちで占められることになる。

実際に物事を決めているのは、全人代の常設機関である常務委員会である。ここに共産党の指導部が入り、牛耳を執っている。常務委員会で決めたことを、年に一度、わずか10日ほどの全人代の会期で全部追認するという仕組みである。そのため、今までに議案や予算が否決された例はない。要するに、一党独裁を代表民主制という体裁で繕っているだけであり、それが社会主義国家共通のやり方なのだ。社説の冒頭に、全人代は「国会に相当」という註記があるが、実はこれは間違っている。与野党が衝突して、時に審議が紛糾する西側諸国の議会とは、およそ似ても似つかぬものなのである。

こういうわけだから、いつもしゃんしゃんで終わる全人代に、反省を促す定型句のような主張を繰り出しても何の意味もない。反省を促すならば、共産党指導部に言うべきだろう。

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