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引用文献の書き方──デジタル上での表示に関する付記

引用文献の表記、特に通し番号を付けて記述する方法について、既出の文献を再度引用する場合、従来は下記のように示すのが慣例でした。

1. ベネディクト・アンダーソン(白石隆、白石さや訳)『定本想像の共同体──ナショナリズムの起源と流行』、書籍工房早川、2007年、24頁。
2. 同上、350―351頁。
……
5. アンダーソン、前掲書、40頁。

しかし、近年普及している電子書籍などのデジタル環境では、このような方法では若干の不都合が生じます。

というのも、「同上」「前掲書」という記載は、一続きの同じ一覧にあって初めて成立するものだからです。印刷媒体では文献はリストにまとめて載せるので、特に支障は生じませんでした。

ところが、デジタル環境では、リストに載せる以外に、ポップアップなどで註釈を表示する機能が実装されていることがあります。そこに単独で「同上」などと書いても意味がありません。そもそも場所からして「同じ画面の上」ではありませんし、読者は前の行に戻って参照しなければなりませんから、能率的に読むことも難しくなります。

オックスフォード大学出版局は、デジタルでの出版を念頭に、従来の引用表記を採らない方針に転換しています。

Do not use terms such as ‘op.cit.’, ‘id.’ and ‘c.f.’. As with ‘see above’ and ‘see opposite’, such terminology is irrelevant in digital form, where the page may be formatted differently and artwork, tables, and references are linked rather than placed in the text. This is to ensure the manuscript is properly formatted for any future digital publication
(「op. cit.〔前掲書〕」「id.〔同上〕」「c.f.〔参照〕」などの用語は使用しないでください。このような用語は、「上記参照」や「前頁参照」と同様、ページのフォーマットが異なり、アートワーク、表、参考文献が本文中での配置ではなく、リンクとして紐付けられるデジタル形式では意味を持ちません。これは、将来的にデジタル出版する際に、原稿が適切にフォーマットされていることを確認するためです)

オックスフォード大学出版局のウェブサイトより

印刷媒体での記載であっても、将来デジタル化するときにスムーズな編輯ができるよう、既出の文献を省略して記述する機会は今後減っていくものと思われます。

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