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言葉の覚え書き

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2022年1月の記事一覧

右横書きについて

現在日本語を横書きで書くときは、左から右にかけて文字が並んでいく左横書きが主流ですが、戦前までは右から左にかけて文字が並ぶ右横書きもかなりありました。 この右横書きを一行1文字の縦書きであるとする見方があり、『ウィキペディア』にもその記述があります。 しかし本当に縦書きだと言い切れるでしょうか。戦前の右横書きにはこういうのもあります。 「レコード」の長音符が横向きになっています。もしこれが縦書きなら、縦向きになっていないといけないはずです。 私は、文字の並ぶ方向(書字

読めますか?──「月極」

ゲッキョクではありません。「つきぎめ」です。月単位で契約すること。 「極め」には、「約束の日。期限の日」(『日本国語大辞典』(精選版))という意味があります。

「一気通貫」

ビジネスにおいて、「始めから終わりまで」という意味で、俗に「一気通貫」という語が使われているのを時折見かけます。 もともとは、麻雀において、例えば「一萬・二萬・三萬」「四萬・五萬・六萬」「七萬・八萬・九萬」のように、同種の牌で連続した数字の組み合わせ(順子)が3つ揃った役のことをいいます。 本来の字義とは若干ずれるので、全工程を手がけるという意味を示すなら、「一貫」や「ワンストップ」などの方が望ましいでしょう。

「初めて輩出」?

「輩出」とは、「続々とつらなり出ること」(『広辞苑』第七版)なので、一人だけの場合には適しません。

「靫」と「靱」

矢を入れる用具の「うつぼ」は「靫」と書きます。 混同されて用いられる「靱」は本来別の字です。こちらは鞏固で柔らかい、しなやかの意です。「強靱」「靱帯」などの語によく見られます。

「文化シャッター」?

東京都文京区に本社を置く建材メーカーの商号は「文化シヤッター」。使われているのは小書きの「ャ」ではなく、大きい「ヤ」です。 会社の公式サイト等によると、大きい「ヤ」を用いているのは、小書きの「ャ」と小書きの「ッ」とが連続すると「字の据わりがよくない」、というのが理由だそうです。

「国敗れて山河あり」?

有名な杜甫の詩「春望」の出だし。「国敗れて」ではなく、「国破れて」。 都が破壊された後の情景を詠んだものです。

読めますか?──「同行二人」

「ドウコウふたり」ではありません。ドウギョウニニン。 四国遍路のときに、たとい巡礼者一人であっても、常に弘法大師(空海)がそばにいるという意味で、笠に書きつける言葉です。 ギョウは「行」の呉音です。ここにも、仏教用語の性格が表れています。

「画竜点晴を欠く」?

これぞまさに「画竜点睛を欠く」。「点睛」の「睛」の偏は日ではなく目、ひとみという意味です。 「画竜点睛」は最後の大仕上げの意。竜の絵に目を描き入れた途端、たちまち竜が天に昇っていったという故事に由来します。読みはガリョウテンセイ。 「画竜点睛を欠く」は、ほとんど仕上がっているのに肝心なところが抜けている、という意味です。

読めますか?──「可惜身命」

あたらシンミョウ。体や命を大切にすること。 「可惜」の「あたら」は熟字訓。もったいないことに、惜しいという意味です。感動詞的にも用いられます。 対義語は不惜身命です。

「セレブ」とは

「セレブ」は「セレブリティー(celebrity)」の略で、有名人、著名人という意味です。 日本では俗にお金持ちのイメージで使われることがありますが、本来は裕福さとは無関係です。

(ケイ)ムショ?

「ムショ」はご存じのとおり刑務所のことですが、これはケイムショの「ケイ」を省略した言葉なのでしょうか。 『広辞苑』(第七版)には「『刑務所』を略した俗語」とありますが、『日本国語大辞典』(精選版)には という註記があります。仮にムショが略語だとすると、使っている時点で略す前の語自体がないというのは矛盾しますから、この説は考えにくいといえます。 『日本国語大辞典』には「『むしよせば(虫寄場)』の略『むしよ』の変化した語」と記載されています。「むし」と「よせば」はともに牢屋

「フンガトンガフンガハーパイ」どう区切る?

先日大規模な噴火を起こしたトンガ沖の火山島は、もともとフンガ・トンガ島とフンガ・ハーパイ島という2つの島でした。2014年から2015年にかけての噴火のあとに陸地が繫がり、一つの島になりました。したがって、この島の名前は一種の合成地名で連称、つまり対等な結びつきということになります。 現地のトンガ語ではHunga Tonga–Hunga Haʻapaiと綴ります。間にある横棒はハイフン(Unicode:U+2010)ではなく、enダッシュ(U+2013)という別の約物です。

「予防線を『引く』」?

「引く」ではなく、「張る」。 「張る」には、たわみがないように引き伸ばす、また、構える、配置するという意味があります。 後で付け入られないための策を表す「予防線」は、もと警戒や監視のために構える区域のことです。