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言葉の覚え書き

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2020年7月の記事一覧

「保証」と「保障」と「補償」

「保証」は、中身が確かであることを約束すること。 身元を保証する。 「保障」は、権利や利益を保護すること。 言論の自由を保障する。 「補償」は、損失を埋め合わせることです。 損害を補償する。

「肺」の旁(つくり)

先日の記事で、「杮(こけら)」と「柿(かき)」は別の字であることをお話ししました。 旁(つくり)が似ている字に「肺」があります。常用漢字では、「市場」の「市」(シ、Unicode:U+5E02)のように、「亠」を書いてから「巾」と書くことになっていますが、厳密に言えば誤りです。 実は、「肺」の旁も、「杮(こけら)」(U+676E)と同じく、中央の縦棒が突き抜けた「巿」(フツ、U+5DFF)なのです。その証拠に、漢和辞典を引いてみると、旧字体は肉部の4画で掲載されています。

「分」は十分の一? 百分の一?

日本を含む東洋の命数法では、一(いち)未満の小数には1桁毎に下記の呼称が付けられています。 分(ぶ):0.1(十分の一) 厘(りん):0.01(百分の一) 毛(もう):0.001(千分の一) 糸(し):0.0001(万分の一) 忽(こつ):0.00001(十万分の一) …… ところが、野球の打率で「.256」は「2割5分6厘」と言うのだから、割が十分の一であって、分は百分の一、厘は千分の一になるではないか、と勘違いしている人がいるようです。 また、以下のサイトでは、「割

「閑話休題」とは?

「閑話休題」を余談に入るときの定型句だと思っている人がいるそうですが、「閑話」は雑談、無駄話、「休題」はそれまでの話題を止めるという意味ですから、「閑話休題」とは「与太話はこれでおしまい」、つまり本筋に戻すときの表現です。 漢学者の阿辻哲次氏によると、かつての中国で演義などを披露していた講談師が、脱線した話を戻すときに「閑話休題、言帰正伝」と言っていたのがルーツとのことです。

「姑息」とは?

2010年度の「国語に関する世論調査」では、7割以上の人が「姑息」の意味を「『ひきょうな』という意味」だと答えました。 「姑」は、「しばらく」「ひとまず」を表す副詞。しばらくの休息ということで、「姑息」は、一時しのぎ、気休めという意味になります。 『礼記』の次の箇所に由来する語です。 君子之愛人也以德、細人之愛人也以姑息 君子の人を愛するや德を以てし、細人の人を愛するや姑息を以てす (君子は徳義にかなうように人を愛し、つまらない人間はその場しのぎのやりかたで人を愛する)

読めますか?──「杮落とし」

「かきおとし」ではありません。「こけらおとし」です。 「杮(こけら)」とは木材の削りくずのことで、建物の新築工事の最後に払い落としたことから、落成した劇場で催される最初の興行を指して、「杮(こけら)落とし」と呼ばれるようになりました。 「杮(こけら)」と「柿(かき)」は別の字です。 「杮(こけら)」(Unicode:U+676E)は、「𣏕」(U+233D5)が元の字です。漢音でハイと読み、「木」と「巿」(U+5DFF)からなる形声文字です。旁(つくり)の「巿」が音で、中

「壮絶ないじめ」?

国語辞典を引いてみると、 そうぜつ【壮絶】 〘名〙(形動)この上なく壮大なさまを呈すること。また、きわめて壮烈なさま。勇ましく意気さかんなさま。 (『日本国語大辞典』精選版) とあるように、「壮絶」には「勇ましい」という意味が含まれています。 程度が甚だしい意を表すには、「凄絶(せいぜつ)」などと言うべきです。

「弱冠31歳」?

「弱冠(じゃっかん)」とは、『礼記(らいき)』の次の箇所、 二十曰弱、冠。 二十を弱と曰(い)ひ、冠す。 (20歳を「弱」と言い、冠礼を行う) (『礼記』「典礼上」) に由来する言葉で、男子20歳を指します。周代、男子は20歳になると元服して冠をかぶり、成人と看做されたことに由来するものです。

すべからく

2010年度の「国語に関する世論調査」によると、「すべからく」の意味として、「全て、皆」を挙げた人と、「当然、是非とも」を挙げた人が、ともに4割前後でした。 正解は、後者の「当然、是非とも」です。サ変動詞「す」に推量の助動詞「べし」の補助活用「べかり」のついた「すべかり」が基になっており、これも昨日お話ししたク語法の一つです。 漢文で「須」を訓読する際に生まれた言い方です。訓読では再読文字として扱われたことから、多くの場合助動詞「べし」などを伴って用いられます。 行樂須

「願わくば」?

「願わくば」ではなく、「願わくは」。 「願わく」の文法の説明には諸説ありますが、ハ行四段活用動詞「願ふ」の未然形「願は」が、接尾辞「く」によって名詞化されたク語法とするのが一般的です。これに助詞「は」を続けたものが「願わくは」の由来です。漢文訓読から用いられた語法です。 ク語法由来の語には、他に「曰(いわ)く」(<「言ふ」)、「体(てい)たらく」(<「体たり」)などがあります。

「ポンペオ」? 「ポンペイオ」?

新聞やテレビを見る限りでは、現職の米国国務長官の名前は「ポンペオ」と「ポンペイオ」の2通りの表記に分かれるようです。 英語のニュース動画をいくつか見てみましたが、いずれも「Pompeo」は/pɒmˈpeɪoʊ/と発音されていたので、「ポンペイオ」とするのがよさそうです。

外国人が「凱旋来日」?

高名な映画賞を受賞した外国の映画監督や俳優が日本を訪れる際、「凱旋来日」という言い回しが使われるのを時折見かけます。 「凱旋」とは、「戦いに勝って帰ること」(『日本国語大辞典』精選版)。したがって、母国でもない日本への訪問に「凱旋」という語を使うことはできません。 「凱」は戦勝のときに奏でる楽曲、「旋」は帰ることです。

「コチジャン」? 「コチュジャン」? 「コウチジャン」?

朝鮮料理の甘辛い調味料の日本語表記には、「コチジャン」「コチュジャン」「コウチジャン」の3種類があるようです。 ハングルで書くと、「고추장」。分解してみると、 고(ko):ㄱ(k)+ㅗ(o) 추(chu):ㅊ(ch)+ㅜ(u) 장(jang):ㅈ(j)+ㅏ(a)+ㅇ(ng) なので、「コチュジャン」が原音に近い表記です。 고추[コチュ]は、「苦椒」の朝鮮語読みである고초[コチョ]が訛ったものといわれています。장[ジャン]は「醤」の朝鮮語読みです。

「俄然(がぜん)」とは?

「俄」は「にわか」と訓読みします。「にわか雨」の「にわか」です。つまり「俄然(がぜん)」とは、急に、突然、出し抜けに、という意味を表します。 「俄然やる気がでた」は、急にやる気がでた、という意味です。ますますやる気がでた、という意味ではありません。