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「肺」の旁(つくり)

先日の記事で、「杮(こけら)」と「柿(かき)」は別の字であることをお話ししました。

旁(つくり)が似ている字に「肺」があります。常用漢字では、「市場」の「市」(シ、Unicode:U+5E02)のように、「亠」を書いてから「巾」と書くことになっていますが、厳密に言えば誤りです。

実は、「肺」の旁も、「杮(こけら)」(U+676E)と同じく、中央の縦棒が突き抜けた「巿」(フツ、U+5DFF)なのです。その証拠に、漢和辞典を引いてみると、旧字体は肉部の4画で掲載されています。

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おそらく、「市」(シ)と「巿」(フツ)はそれぞれ別字として成立したものが、隷書、楷書へと書体が変化していくうちに混同されていったものと考えられます。『説文解字(せつもんかいじ)』(後漢期、紀元後100年頃)にある小篆を見ると、両者は明確に区別されていますが、後代の『康熙字典(こうきじてん)』(清代)などでは、一方を他方の俗字とするなどの記述が見られるようになりました。

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