熊本アメちゃん騒動とこれからのイケてる上司

熊本市議会で質疑の際にのど飴を舐めていたとして議会が8時間空転した事件が話題になっている。市議はこの日、のど飴を舐めながら議場へ。しかし、他の市議からは「議場は神聖な場所で、品のない行為」との批判を受け、議会は「品位の尊重」に触れるとして出席停止の懲罰を下した。「議場は神聖な場所」と聞いた時に、どこかで同じようなセリフを聞いた気がした。大相撲巡業の土俵で市長が倒れた事件だ。その際、救命のために土俵に上がった女性に対し、土俵を下りるようアナウンスをした。なぜなら、土俵は神聖な場所で「女人禁制」という伝統があるからだ。

熊本市議会や相撲協会を批判したいのではない。ビジネスに引き付けて考えてみた。我々の日常にも、程度の差こそあれ、なぜそのルールがあるのか、何のためにそれをしているのか、わからずにやっていることがたくさんある。何のためにやっているのかわからない会議、昔からやっていると言うだけで続けている業務、お客さんのためにではなく自分たちのできることから発想する製品開発、などなど。何のためにやっているのか(目的)が腑に落ちていない仕事は、人を惹きつけない。なので、イケてる上司は、部下になぜその仕事・業務をしているのかを理解させている。この仕事は何のためにやっているのか、誰のためにやっているのか、仕事の目的・意味(Why)を伝えている。逆に、イケてない上司は、部下に何をするのか(What)、どうやってやるのか(How)しか伝えない。

この手の例えによく使われるイソップ寓話がある。「3人のレンガ職人」という話だ。3人の職人さんは皆レンガを積んでいる。自分がやっていることを「レンガ積み」と捉えている職人、「大きな壁を作っている」と捉えている職人、そして、自分のやっていることを「大聖堂を建てている」と捉えている職人。それぞれ自分の仕事を「作業レベル(How)」、「目標レベル(What)」、「目的レベル(Why)」で捉えている。どの職人さんがモチベートされ、生産性が高いかは一目瞭然だ。

何のためにやっているのか(目的・Why)が腑に落ちていない仕事は、人を惹きつけない。上司からすると若干面倒くさく感じるし、自分たちの若い頃には仕事の目的など言われてこなかったはずだ。しかし、何のためにやるのか伝えなくてもできる業務は、これからAIやロボットが正確かつ迅速に、しかもブーたれずやってくれる。自分がその仕事をやっている目的、自分の仕事が実現しようとする価値、ここを部下に腹落ちさせるのが、これからのイケてるリーダーがしなくてはいけないことの一つだ。品位だ、伝統だといって、喉が痛いと言っているのにのど飴をなめさせない、人が死ぬかもしれないのに救命させない。極端な事例から学べることは、何のためにやっているのか(目的・Why)をまず理解し、それからその仕事・業務(What・How)をすることの大切さだ。20世紀は「物質の時代」とも言われたが、21世紀は、「意味の時代」だと思う。

参考資料:サイモン・シネック『WHYから始めよ!』日本経済新聞社出版社,2012

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/kumamoto/article/453408/

http://rkk.jp/news/backno_page.php?id=NS003201809281934500111

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