2023/7/7-8『いや、おれらそんなんちゃうねんで。』

中学時代仲良くしてた陽太が、東京に遊びに来た。
彼との二日間は、そこらのカップルよりカップルをしていた自信がある。

夜行バスに乗ってきたので、早朝に集合しお互いの誕プレを物色。その後さらば青春の光のLIVEに行き、表参道のカフェで小休憩。今話題のループで渋谷まで運転し、山手線沿いの居酒屋を飲み歩いた。次の日には2人でディズニーに行き、朝から晩まで満喫した。

これだけ聴いても、かなり充実したデートの様に思えるが、1番「いや、もうこれはデートですやん。」と思った出来事がある。

1日目の飲み屋街の時だ。
トランクを新宿に預けていたので、渋谷から新宿まで山手線沿いに一軒ずつ飲み歩いていた。
最後の新宿では、お洒落なお店に行ってその日を締めようとなった。
お店を選定している時に、以前先輩が「ココ、グータンヌーボデモツカワレテタオシャレナオミセダヨ!」っと鼻のつく言い方で勧めてきたのを思い出した。

当時全く興味はなかったのだが、2人とも独り身でもあり勉強の為にも行っておくかとその店へ向かうことにした。

その店は地下にあり、各階段の下にはブルーライトが光っている。いかにも怪しい。
しかしここで怯んではいけない。グングンと前へ足を進める。
受付に着くと、高身長のウェイターや端麗なウェイトレスが出迎えていた。
田舎者だとバレたくない2人は、暗闇の中思っている倍歩くスピードを遅くし堂々と円卓まで歩いてみせた。
周りは気品ある老夫婦や大人な男女カップルしかいなかった。
目線を上にやると、辺り一面水槽。淡水魚がいっぱい泳いでいる。
円卓には3脚椅子があった。水槽側に1脚。手前に2脚。
手前の2脚はどう考えてもカップルの距離感の席だったので、
陽太が水槽を背に座ろうとすると、
ウェイトレスが「お魚が見えなくなりますがよろしいですか?」と聴いてきた。
おちょくっとるな?と思いながらも、まあ魚見にきたわけやないし大丈夫ですと断るのだろうと思っていたのだが、陽太は素直に従った。
完璧に周りのムードに押し負けているのだ。

男2人で水槽を見続けていたが、流石にカップルの距離感で見てるのも恥ずかしかったので、メニューに目をやる。
ジンジャーハイやレモンサワーもあったが、ここまで来たので一風変わった飲み物を頼みたい挑戦心が芽生えた。
おれはブルーハワイアンカクテル?で、陽太はピチピチビーチのカラフルカクテル?みたいなのを頼んだ。
注文後、直ぐに届けにきた。
思っていた通り、着色料多めないかにもイケイケな飲み物だった。まあこんな感じよなーと言いながら飲もうとすると、クルクルのストローが2本あることに気づいた。

焦って周りを見ると、全コップにストローが2本ブッ刺さっているのだ。

もうそういう店ですやん。男2人で来る店ちゃいますやん。
絶対陽太がこっちに座るからですやん。そう思われてますやん絶対。

流石にこれはできなかったので、各々1人で2本咥えて飲んだ。

周りに圧倒されながらも直ぐ飲み干し、『いや、おれらそんなんちゃうねんで。』と思わせんばかりの歩き方で出て行った。

東京にはいろんな店があるんやなと学んだ貴重な経験だった。

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