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新入社員「寸法公差って必要なんですか?」

初めまして。
現役機械設計者の竹の子です。
私は何度か転職をしているのですが、前の会社にいた時、新入社員の部下から「寸法公差って必要なんですか?文字がごちゃごちゃになって見辛くないですか?」と質問されたことがありました。
当たり前に必要と考えていたことに疑問を呈され、驚いたのを覚えています。

そこで、今回はタイトルの通り、なぜ寸法公差が必要なのかをお話しようと思います。
まず、前提として「寸法公差」という言葉を初めて聞いた人もいると思いますので、「寸法公差」とは何かを解説します。

寸法公差とは、物を作る時に必要な基準となる数値です。
図面と呼ばれる、物の設計図に記載するもので、物の大きさを表す寸法の後ろへ記述し、物を実際に作る製作者へ設計者が伝えるべき情報の一つです。
例を挙げると、太さΦ10.0mmの円柱を作ってもらいたい時に「Φ10.0mm」の後ろに「±0.5」などと記述します。
この「±0.5」が寸法公差です。意味は「寸法の10.0mmを基準として、-0.5mm、+0.5mmの間で円柱を作って下さい」という事です。

では、なぜこの寸法公差が必要なのか。
端的に言うと「寸法公差がないと、寸法通りに作ることが不可能」だからです。
寸法というのは、10.0mmと記述したら、10.00000......mmと無限にゼロが続きます。ピッタリ10.0mmというのは作ることが出来ません。
そもそも、ピッタリ完全な10.0mmというのを、測定して確認することが出来ないんです。現状存在しているどんな測定器も、0.0001μm以下を測ることが出来ません。0.0001μmというのは、0.000001mmの事です。
なので、測定して確認が出来ないので、作ることが不可能となります。確認せずに、多分寸法通りに出来てるとは言えないですからね。

下記に現状の測定機器の測定精度をまとめておきます。

(情報が古かったらすみません)
スケール-------------0.5mm
ノギス---------------0.1mm
デジタルノギス-----0.01mm
マイクロメータ-----0.0001mm(0.1μm)
接触式測定器--------0.00001mm(0.001μm)
光学式測定器--------0.000001mm(0.0001μm)

そこで、寸法公差が役に立ってきます。
10.0mmを基準とし、±0.5と寸法公差を記述すれば、9.5mm~10.5mmの間に入っていれば良いのです。
実際に物を作るときは、スケールやノギスがあれば、十分に製作可能です。
寸法公差は縛りを緩くする為に付けるのです。
よく、設計をし始めたばかりでは、寸法公差が小さければ良い物が出来ると思いがちで、寸法公差を意味なく小さく設定しがちです。
これでは、製作者への縛りをきつくしてしまい、製作物の調整や寸法確認作業が増え、結果、製作費が超高価になります。最悪な場合、製作不可能な物を設計してしまう事もあります。
寸法公差はよく考え、必要な部分にのみ小さく設定し、不要な部分には一般公差を充てるのが大切です。

ここで出てきた一般公差とは、JIS(日本産業規格)にて規格化されている寸法公差や設計会社や製作会社で、製作方法や材料等に合わせ、予め設定しておく寸法公差のことです。
この一般公差とは、無理なく製作可能な寸法公差が設定されています。
なので、特別な製品機能上必要な部分以外は、寸法公差を書かず一般公差で製作してもらいます。
これなら、製作者側も無理なく製作出来、設計者も余計な寸法公差を書かずに済みます。図面の設変の理由によくある寸法公差の修正も防ぐことが出来るので、一石三鳥ですね。

以上が寸法公差のお話しでした。
なかなか製造業や設計業をやられている方にしか伝わらない内容かもしれませんが、身の回りの物にも必ず寸法公差があり、設計者や製作者の方の苦労が詰まっています。
お話しした物作りの裏側を知ってもらえると、身近な物の見え方が変わってくるかも知れませんね。

では、拙く読み辛い文章だったと思いますが、お読みいただき有難う御座いました。

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