詩89 グラス
自分が持ち掛けたキスの予感で
いつのまにか雰囲気が暮れかけている
さりげなく扉を閉めて
グラスを隣に侍らせた
暗さを醸し出す減少の夕日は
ますます紫色にミルキー
時に波間が過ぎるから
返事の合間や言葉の合間に
時計の針がスコップの代わりを買って出た
「いつも思うけど」
「君のことが 好きだから」
「一緒にいるのが とっても楽しいのね」
出合えたのが嬉しい
こうして出合えたことに
すごく感謝する!
揺れたグラスに 手をかける
かたくなな見た目とは裏腹に
滑る味がとてもやわらか
ためらわないで
悩まないで
ちっとも迷わずに
ぼくは のせた
ぼくは あげた
ぼくは よせた
グラスは われた
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