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【歴史本の山を崩せ#001】『歴史をつかむ技法』山本博文

歴史と聞くと、年号や用語の暗記をイメージするかもしれません。
これらはたしかに歴史を読むためには必要な要素ではあります。
暗記だけが歴史ではありません。

大学の歴史学科などで「歴史とは何か」について論ずる講座を史学概論と呼びます。
史学概論の本には、「入門」と謳いながらも内容が高度なものが多いです。
専門家や歴史を専攻する大学生ならばともかく、歴史に興味を持った一般読者が読むには少々ハードルが高い。
歴史に限りませんが概論というものは、専門用語が踊り、理屈っぽくてなかなか難しいものです。

書き手側にも、同業の研究者から馬鹿にされないためにも、あまりカジュアルに書けないという事情もあるとか、ないとか。
読者が置いてけぼりになりがちなのも「入門」と銘打たれながらもハードな本ができる一因かもしれません。
折角興味を持った読者を挫折させてしまうのは実にもったいないと、私は思うのですがいかがでしょう。

そんななかで最もオススメするのが山本博文さんの『歴史をつかむ技法』です。
襟を正して「歴史とは何か」を問うのではなく、大河ドラマやゲームなどで興味を持って「歴史って何なの?」くらいのカジュアルな感じで読めます。

例えば昔は鎌倉幕府の成立といえば有名な語呂合わせ「イイクニ(1192)つくろう鎌倉幕府」が、最近は「イイハコ(1185 )」ともいわれるようになっています。
どうしてこんなことが起こるのか、という疑問もこの本を読めば納得できると思います。

日本史概説となっている第三章・第四章は割と本格的な内容で読み応えがあります。
もし、読み進めてキツければ、飛ばして序章・第一章・第ニ章・終章だけ読んでも、「歴史とは何か」というクエスチョンに対して十分答えてくれます。

新書なので値段も手頃。
サイズも小さくてお手軽。
内容も良い加減です。

著者の山本さんは2020年にガンのため63歳の若さで亡くなられてしまいました。
一般の読者を惹き付ける読み物を書ける稀有な書き手を失ってしまいました。
この本を読むたびに本当に惜しい方を亡くしてしまったことを痛感します。

『歴史をつかむ技法』
著者:山本博文(著)
出版:新潮社(新潮新書)
初版:2013年
定価:760円+税

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