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【歴史本の山を崩せ#007】『世界大恐慌』秋元英一

《未曾有の危機にアメリカはいかに対峙したか》

1929年10月24日。
ニューヨーク株式市場の突然の大暴落に単を発した世界規模の大恐慌。
株価は七分の一に下落し、倒産した銀行は六千件。
そして、一千万人の失業者が発生した未曾有の経済危機でした。
世界史の授業にも出てくるフランクリン・ルーズベルト政権のニューディール政策によって収束するのが1939年頃。
なんと、約十年もの間、影響を残し続けた大事件でした。

タイトルは世界大恐慌ですが、本書は専らアメリカの対応を中心に描かれています。
大恐慌の原因よりも、なぜここまで長引いたのか?
政府は何を考え、どのような対策を打ち、それがどのような影響を与えたのか。
当時の社会背景、経済状況、そして国際情勢など…絡み合った糸をほぐしていくような記述は歴史学の本領を表してくれています。
ガチガチの経済学の本のように難解な数式こそ出てきませんが、多少は経済の知識があったほうが読みやすいです。

「為替の安定」か「国内物価の安定」か。
「財政の均衡」か「景気対策のための積極財政」か。
いま、まさに日本でも議論されているようなことが約百年前のアメリカでも行われていた。
歴史の因果を感じます。
昨今、進む円安が海外からの輸入コストを高め、国内物価を押し上げている一因であることは間違いないでしょう。
ドルとの金利差が円安を進めているから、金利を上げればよいなどという短絡的・対症療法的な対策では、おそらく解決できないのが経済であるということがわかります。

現在の日本と当時のアメリカでは国内の産業構造、社会背景、経済状況も違えば、それを取り巻く国際情勢も違います。
そっくりそのままアメリカが採った世界大恐慌への効果的な対策を当て嵌める(または、失敗した政策をそのまま退ける)ことはできません。
しかし、教訓を得ることはできます。

『世界大恐慌』
著者:秋元英一
出版:講談社(講談社学術文庫)
初版:2009年(オリジナル版1999年)
定価:1230円+税

※【歴史本の山を崩せ】は毎週水曜日更新です

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