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『憲法主義』

特技は日本国憲法の暗唱という異色のアイドル・内山奈月。
現在は卒業してしまっているがAKB48のメンバーである。
奇をてらった特技と思うなかれ。
この本を読めば彼女の利発さに裏打ちされたガチンコの特技だとわかるはずだ。
憲法学者・南野森が内山奈月とのダイアローグ形式で進められる5回の講義を収録した本である。

こういう「憲法」本といえば、著者が護憲か改憲かどちらかの立場からか憲法を論じ、読者を「啓蒙」しようという大きなお世話な本が多い。
言い方を変えれば上から目線で自分の正義を押し付けてくるようなお説教じみた本が少なくない。

その点、この本は「そもそも憲法とは何ぞ」というスタンスを出来るだけニュートラルな立場から話をしている。
ダイアローグ形式ということも相俟って、非常に読みやすい。
学術的・専門的な点からいえば正確ではない部分も多少あるが、一般読者の「そもそも憲法とは何ぞ」という疑問には十分答えてくれると思う。

今回、生徒の役割となっている内山奈月の質問がかなり鋭い。
彼女の芯を食うような質問は、憲法といえば「とにかく改憲」「何がなんでも護憲」しか論じない政治家よりもよほど憲法を大事にしている姿勢が表れている。

私権制限を必要とするロックダウン(都市封鎖)や、アフガニスタンへの自衛隊派遣など、いま日本人の眼前には、いかにして憲法と向き合うか迫られている。

【単行本】

【文庫本】

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