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朝のカラス

小川が流れる散歩道をゆったり走っていた。

まだ夜の冷えが残る朝方で、人も少なく木漏れ日は やさしい。緑は朝露をたたえ 活力にみなぎっている。その中をゆっくりと走る。ありがとう、世界。

突然

ガササッバリバリバリバリッ

というけたたましい音と衝撃が後方で した。

驚いて 立ち止まり振り向く。

そこには 何かのかたまりが落ちていた。からまった針金?大きい。Lサイズのスイカくらい。ものすごくカラフル。

隣にはカラス。

かたまりを見つめている。なんだ、君にとって そのかたまりは何なのだ。

カラス、かたまりと交互に こっち 見てくる。

どういうことやねん と目で訴えかけてくる。

どう考えても私のせいじゃないし、そもそも そのかたまりは何。

わかった!カラスの巣だ!!

針金のかたまりの正体は絡まった沢山のハンガーだった。色とりどりのハンガーですべて形作られている。

私は理解した。このカラスは おこだわりでハンガーだけで巣を作ろうと考えたのだ。色とりどりで、丈夫そう。この素材は素晴らしい!と。

色にも素材にもこだわり 一流の巣を作ろうとしていたのだ。カラスのハンガー集めの試練が始まった。丈夫なだけではダメなのだ。色にもこだわらねば。近くへも遠くへも 朝に夕に 雨にも風にも負けず飛んでいき、とびきりのハンガーを集める日々。

そして 間もなく完成する…

瞬間

巣は落ちた。ハンガーが重すぎて。

皮肉にもカラスのおこだわりと熱意が原因となってしまったのだ。

そこまで理解が及ぶと私はカラスの方を見ることができなかった。

だってものすごくショック受けてる。落ちたハンガーの巣のこと見つめてる。こんなに呆然としている動物 初めて見た。

私は自分の無力さと重力で構成されている世界を呪いながら その場をあとにするしかなかった。



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