見出し画像

タイムマシンに乗るならこんな風に

昨年の3月は、リサーチのためにイギリスに滞在していました。

気付けば一年も経ってしまいそうなので、記憶を遡りながら、旅の目的や感じていたことをつらつらと書いてみようと思います。

共同創業者の @shota もこの旅についての記事を書いていましたが、既読の方はそのB面としてお楽しみください。

未読の方はこちらも併せてどうぞ

👨‍👦‍👦 私たちのチームについて

私たちは元々「フリル(現ラクマ)」という日本初のフリマアプリをつくっていました。  

新しいものをつくるために「実在する人々と対話する」チームで、事業の立ち上げ期〜成長期はターゲット層へのインタビューを頻繁に行っていました。

画像1

そして昨年、その創業メンバーの3名でまた新しい会社をつくり、新しいプロダクトを準備しています。

📱 私たちのプロダクトについて

直近では「個人のお金」に関する課題に着目して、デプスインタビューとプロダクト開発を進めています。それは当然「実在する人々の、未だ解決されていない課題」を解決するためのものです。

一方で、私たちが作ろうとしているプロダクトに「似たもの」が海外には既に存在しており「チャレンジャーバンク」(※1)というジャンルで呼ばれています。後から気づいたのですが、我々が着目している課題というのは、それらのプロダクト群が解いている、複数の課題のうちの一つだったのですね。

画像22

🔍 私たちが知りたかったこと

先進国で流行したサービスを日本に持ち込む「タイムマシン経営」という言葉があります。例えば「日本でチャレンジャーバンクを再現しよう」というのがまさにそれですが、なかなか難しいなと思っています。

他社がつくったサービスにふれるとき、私たちが視ているのは表層の機能です。それは氷山の一角であり、水面の下には言うまでもなく「ユーザーの課題」「その社会背景」が隠れています。

画像20

つまり「どんな機能があるか」はすぐわかるけど、「誰のどんな課題を解決しているのか」「なぜその課題があるのか」はパッと見ただけでは分からないということです。それを考慮せず、表面的な部分を模倣して消えていったサービスをこれまでたくさん見てきました。

だからこそ、私たちの構想に近い「機能」をもつプロダクト群が、どのような「課題」「社会背景」を持っているのかを知りたいと思い、はじめての海外リサーチに行くことにしました。

🏙 旅の様子

三週間ほどのイギリス滞在でしたが、実際の様子はこんな感じでした。

拠点はテムズ川のほとり

画像5

拠点はAirBnBで見つけたフラット、歴史を感じる建物

画像5

最寄り駅はテムズ川に面した、London Bridge駅

画像15

画像6

賑わうマーケットの露天もすべてコンタクトレス(※2)決済対応

ひたすら知らない街と人を訪ねる

画像8

インタビュー相手に会うためにロンドン市内を東へ西へ

画像9

現代的なビルが立ち並ぶビル街や

画像10

不意に現れる歴史的建造物

画像13

インタビュー場所は大体カフェ

画像15

朝食やランチやコーヒーがてら話を聞くこと、総勢21人
職種も国籍も様々で、各々の文脈を生きていました

移動手段と決済

画像14

電波が届かないUnderGround(地下鉄)では
Google MapsよりもCityMapperが便利

画像11

Santander(銀行)のレンタサイクルはDocomoのやつに似ている
Mobikeも道にたくさん転がってました

画像12

電車もバスもレンタサイクルも、コンタクトレス機能付きのカードで乗れる

チャレンジャーバンクを体験

画像16

Monzoなどのチャレンジャーバンク口座を開設して、使い倒してみたり

画像17

中の人とランチに行ったり
オフィスに遊びに行ったりしました

画像18

銀行とは思えないオープンでカジュアルな文化

ブレグジットの足音

画像19

意図せず、ブレグジットの反対デモに遭遇して
生の空気を感じられたのもいい経験でした

画像20

他にもっと言うことあるんじゃないか?と思ったやつ

🇬🇧 地域性による差異

短い滞在ではあったけれど、ロンドンと東京であからさまに差異を感じる部分はいくつかありました。

今回のプロダクトに関係のあるところだけでも

1) カード決済の浸透度
もちろん数字の上では知っていたけど、実際体験すると見え方が変わる。交通機関はもとより、公園のトイレの入場料やストリートミュージシャンへの投げ銭までタッチ決済とか。電子マネーもPayもポイントもなく一本化されている利便性。みんな現金をあまり持っていないので、送金のアプリを使う必然性もある。
2) 人々の国際性
街ゆく人々を眺めても人種の多様性が明らかで、話を聞いているとユーロ圏内での行き来が多い。金銭/時間/言語的に日本の国内で移動するような感覚。複数の通貨を所持する必然性があるし、海外旅行時の決済/ATM手数料が気になる。
3) 既存銀行への不満
2とも関連しますが、ワーホリを含む広義の移民にとって口座開設が容易でない。できたとしても窓口のサービスが悪いなど、HSBCはじめメガバンクへの不満が大きい。口座を持てないUnbankedな層だけでなく、それに近い準Unbankedな人々がおり、チャレンジャーバンク以外の選択肢がほぼないシーンが存在する。

などなど、挙げていくとキリがないほどです。これもまた「視えているのは表層だけ」ってやつなんでしょうけど、国によって事業の前提条件が違うという当たり前のことを再確認するには充分でした。

これらは裏返すと「日本では成立しづらい理由」とも言えますが、これはこれでプロダクトの設計に活きています。 (お楽しみに)

🕐 ベンチマークとの時間差

もう一つ、インタビューを重ねるうちに気付いたことがあります。それは「最初に使いはじめた人」「最近使い始めた人」の使う理由は同じとは限らないということです。

例えば、フリマアプリも最初は読者モデルの方々が生活を支えるために使いはじめてくれたのですが、現在では農家の方々が野菜を売るのに使ってくれていたりします。

同様に、多くのチャレンジャーバンクが今では総合的なバンキングサービスを提供するようになりましたが、最初の機能はデビットカードに毛が生えた程度のシンプルなものでした。送金機能も今ほど魅力がなく、わりかん・定期預金・ローンなどの機能もありませんでしたが、それでも大きな支持を集めました。

月並みな話ですが、多くのプロダクトの成功はある特定のユーザー群のもつ小さな課題を解決するところから始まっています。あなたがタイムマシン経営の輸入元としてベンチマークにするサービスもその可能性が大いにあります。

サービスの「機能」は利用者数の増加に比例して拡張されがちです。それ自体の賛否はともかく、機能が増えるということは解決している「課題」も増えるということですし、それはより多くの「社会背景」を反映しているということになります。

別々の国に共通した「課題」や「社会背景」はありますが、まったく同じ社会というのはありませんから、ある社会で拡張されきったサービスをそのまま自国に持ち込んだときに受け入れられるかは、よく考える必要があるでしょう。

個人的には参考にするなら、初期のシンプルな「機能」と「課題」なんじゃないかなと思っています。

画像21

リサーチを経て

実は、このリサーチの二ヶ月後にドイツのベルリンでも同じような調査をしてきました。東京ともロンドンとも環境が違い、また異なる課題、多くの発見がありました。

その後は、両都市でのリサーチで得られた知見と洞察を元に、海外のチャレンジャーバンクも参考にしながら、日本人の「お金に関する課題」を解決するサービスの準備を続けています。

画像22

オフィス入居初日の様子

元FRILのメンバーを中心に少数精鋭のチームで動いていますが、お金に関わるサービスは、思った以上につくるのに時間も掛かり、仲間をもっと集める必要性を感じています。

課題解決中毒の方、新しいものを生み出す気概のある方、この記事を読んで共感してくれた方、ぜひお気軽にご連絡いただけると嬉しいです。

P.S
ロンドン・ベルリン滞在中にお世話になった皆様ありがとうございました。プロダクトが軌道に乗ったら、また改めてお礼に行かせてください 🇬🇧🇩🇪

次回予告

今回は長くなってしまったので割愛した、海外でインタビュイーを集める方法をサラッと書こうと思います。よかったらTwitterのフォローをお願いします。

※1 欧米を中心に勃興している支店を持たない、モバイルファーストな銀行
※2 国際ブランドのクレジット/デビット/プリペイドカードによる非接触決済

いいなと思ったら応援しよう!