【小説】昭和、渋谷で、恋をしたり 1-17
目次をみる
1-16へもどる 1-18へすすむ
消えたスポットライト 佐藤さんとは別れたのだ。舞台は整っていた。
帰りは新宿で夕食を取った。夏奈恵の部屋で抱きしめ切れなかった悔しさと、和美と別れたことで夏奈恵を抱くことを正当化していた私は、前の晩から食事の後は新宿のホテルに行こうと考えていたからだ。
陽が落ちきった靖国通りを渡り、新宿コマ劇場のそばにあったお好み焼き屋に入った。
煙にいぶされた畳の座敷で2人向かい合うと、夏奈恵は江ノ島の風景を細かく回想した。