【小説】昭和、渋谷で、恋をしたり 1-10
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▼ 死ぬ前にやりたいこと 夏奈恵の部屋は、国立駅前から伸びるいちょう並木を15分ほど歩いたところにあった。
アパートの薄い扉を開けると玄関のすぐ右にキッチンがあり、3歩進んだ右には一体型のトイレと風呂場らしき扉が見え、その奥、ガラスの引き戸の向こうに六畳ほどの和室が見えた。
私の住んでいる寮に比べたら贅沢な暮らしに見えた。そのことを言うと「場所が場所でしょ。これくらい離れないと、今の家賃でこの間取りは無理なのよ」と夏奈恵は