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痛みの原因を探る(Joint-by-Joint Theoryについて)

75〜85%の人が経験している…

この数字は一生のうちに腰痛を経験するであろう人の割合です。
他にも肩こりや、首こり、膝の痛みなど多くの人が”痛み”を経験しながら生活していると思います。
ひどい人は痛み止めを服用していたり、注射を打ちながら生活している人もいるのではないでしょうか。
では、
なぜ腰が痛くなってしまうのでしょう?
なぜ膝が痛くなってしまうのでしょう?
これと向き合わない限りは、水漏れに対して水浸しになった床を拭いているだけのようなものです。
結果として出てきた痛みが、なぜ起きているのかというところに着目しない限りは根本的な解消にはたどり着けないのです。

関節には役割が(Joint-by-Joint Theory)

原因を探る一つの考え方として、Joint-by-Joint Theoryというものがあります。
これは、Gray Cook氏とMichael Boyle氏によって考案されたもので、関節には2種類の役割があるとされています。
それぞれStability(安定性)Mobility(可動性)と呼ばれ、
文字通り、
Stability関節は、安定させること
Mobility関節は、可動させることが役割になります。
以下、それぞれの関節の役割です。

このように、Stability関節とMobility関節、つまり安定させたいところと動かしたいところが交互に並んでいるのです。
そして、これらの関節は互いに作用しあって運動を獲得していきます。
ここで問題となるのは、どこかに機能不全が起こった場合です。
例えば、
股関節の可動性が低下してしまう
腰部の安定性が低下してしまう
足関節の可動性が低下してしまう、などなど。
そうなってしまった結果、その隣り合わせの関節に痛みが現れてしまうのです。
腰痛を例に見ていきましょう。
すぐ隣を考えると、股関節、胸椎があります。
股関節または胸椎の可動性が低下した結果、代わりに腰椎が動いてしまい腰痛が発生するのです。
ここだけにとどまらず、膝、足関節、と機能不全はどんどんと波及していきます。
痛みがある場所に影響しうる部位に機能不全はないかどうかをチェックしていく必要があるということです。
身体はつながっています。木を見て森を見ずにならないように気をつけていきましょう。

外傷・障害予防からパフォーマンスアップ

各関節の機能を高めることで、外傷や障害を予防することにつながります。
安定させたいところは安定させ、動かすべきところを動かすことができれば、怪我のリスクを下げることができるでしょう。
今日では、体幹トレーニングという言葉が広く知られており、安定性という言葉だけだと少し不十分かもしれません。
というのも、安定性を高める=プランクなどのガチっと固定することのように聞こえてしまうからです。
真の安定性とは、動きをコントロールし、動作中に(つまり刻々と変化する状況の中で)関節を安定させるために筋収縮のタイミングや張力を調節することです。
つまり、安定性を高めるためには、獲得したい動きに近づけた、より動的なエクササイズを、可能な限り質の高い動きで行い、
そこまでのレベルに到達できない場合において、姿勢をキープするような静的なエクササイズを行うようにする
、ということです。

Joint-by-Joint Theoryは一つの考え方です。
ヒトの身体はまだまだ分からないことも多いです。
偏った見方、凝り固まった考え方、方法論に飛びつくのは危険です。
多面的・批判的に捉えていくことが大事だと思います。

参照

Andersson GB. Epidemiology of low back pain. Acta Orthop Scand Sippl 1998; 281: 28-31.
Gray Cook. MOVEMENT. 有限会社ナップ. 2014


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